2022 年 78 巻 1 号 p. 47-60
本研究では,線形振動理論を活用した列車通過時の加速度波形から変位波形を復元する手法を提案した.提案手法は,橋りょうのひび割れなどの非線形,列車/橋りょうの相互作用の影響などが大きく表れる固有振動数付近は実測データを生かし,ノイズの影響を受けやすい低周波領域のみを線形理論解に置き換えるもので,同定するパラメータは単一軸重とモード剛性の比のみである.数値実験により,ノイズの標準偏差が0.005m/s2以下,列車速度が150km/h以上の場合,提案手法による最大変位の推定誤差は概ね5%以下であること,橋りょうの動特性を未知として概算値として与えた場合でも推定精度の低下は限定的であることを示した.さらに,実橋の加速度の常時モニタリングデータに提案手法を適用し,加速度波形から変位波形を復元可能であることを示した.