2022 年 78 巻 5 号 p. II_19-II_28
複合構造物の合成部材やその接合部は使用時に一体性を確保している必要があるため,一般にずれ止めが配置される.複合構造標準示方書では,使用時にこのずれ止めに顕著な残留変位が生じないことを照査するものとしており,その照査のための限界値として,残留変位に対応する除荷前のずれ変位あるいはせん断力を規定している.しかし,スタッドおよびコンクリートが任意の材料特性を持つ場合,同示方書で規定するスタッドのせん断力-ずれ変位関係式上で,せん断力の限界値のときに同時にずれ変位の限界値となるのかは必ずしも明確になっていない.そこで本稿では,種々のスタッド諸元およびコンクリート圧縮強度を持つ場合について,同示方書で規定されるせん断力-ずれ変位関係式上におけるせん断力およびずれ変位の使用性の限界値を具体的に確認した.