2022 年 78 巻 5 号 p. II_66-II_80
既存構造物の性能評価は主として材料劣化の観点で判断され,一般に安全側の評価を与えるものの合理化の余地が残されている.即ち,構造性能に着目して劣化の影響を定量化することが必要不可欠である.一方で,近年膨大に得られる点検データは構造物の「症状」を表すものから性能評価モデルの「入力」となるものまで幅広く,また,要求性能の満足度を間接的に表すとするものが大多数である.性能評価の信頼性はそれらを用いて判断する技術力に左右されている.本稿は,構造物の定量的な性能評価を今後進展させるために,点検・解析と性能評価の関係について,現状を確認して今後の課題を示し,ブラインド部材性能評価の実施で得られた知見に基づいて,根拠に基づいた体系への今後の方向を提案するものである.