抄録
我が国では地域主権改革の名の下,地方出先機関原則廃止の流れや,「コンクリートから人へ」のスローガンにより,公共事業は最近まで著しい縮小傾向が続き,それに伴い地方建設業もまた縮小傾向にさらされた.しかし東日本大震災で復旧活動を主導したのは,まさに廃止が論じられている地方整備局であり,その活動の先頭にいたのは地元建設業者である.本研究では関係資料や関係者の証言に基づき,特に国土交通省の地方支分部局の1つである地方整備局に着目し,発災直後の対応として全国の地方整備局が被災地へ派遣したTEC-FORCEやリエゾンの活動を物語描写し,それに基づき地方整備局を中心とした地方建設業界の防災対応力に関する基礎的な知見,並びに今後の防災対応を踏まえた行政制度設計に資する基礎的な知見を得ることを目的とする.