抄録
2011年3月の東日本大震災では東北新幹線の運休に伴い首都圏と東北圏間の移動性が大きく低下したが,航空や高速バスの増発等により一定の輸送量を確保した.このように震災時には交通ネットワーク全体としての機能が喪失しないように代替性を確保しておくことが重要である.本研究ではまず,今後発生が想定されている南海トラフ巨大地震によって基幹交通機関である東海道新幹線が途絶した場合の利用者への影響を,総合交通分析システムNITASを用いて分析した.次に,東海道新幹線を利用した出張者を対象に意識調査を実施し,訪問地や訪問目的,震災で新幹線が長期間運休した場合の想定行動を把握した.その結果,支店等の従業員の安否確認や物資供給,取引先の見舞いや業務支援を目的とした訪問意向が半数以上見られ,その多くが代替交通手段として航空の利用を想定していることが明らかになった.