土木学会論文集F6(安全問題)
Online ISSN : 2185-6621
ISSN-L : 2185-6621
73 巻 , 2 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
特集号(招待論文)
特集号(和文論文)
  • 岩原 廣彦, 白木 渡, 長谷川 修一, 井面 仁志, 高橋 亨輔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_7-I_15
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     近年,地震・水害・土砂災害などの自然災害が多発している.2016年4月14日,16日に発生した熊本地震では最大震度7を記録するとともに,2016年10月21日に発生した鳥取県中部地震では,最大震度6弱を記録し甚大な被害を及ぼした.これら繰り返し起こる自然災害においては,これまでの被災経験を活かすことができず,基礎自治体の災害対応も十分機能しない場合も多い.このため,行政に依存しない住民自らの自助・共助による地域防災力の向上があらためて求められている.本稿では,地域防災力の担い手となる防災士の養成と活動実態を検証し,そこから見えた課題と課題解決の具体的な対応策及び,東日本大震災以降の大学生の防災への備えや,防災意識の醸成と実践対応能力育成の取り組み事例について述べる.
  • 橋本 淳也, 小林 幸人, 上久保 祐志, 川口 彩希, 勝野 幸司
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_17-I_25
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     防災行動において自助・共助・公助の概念が生まれて久しい.熊本高専八代キャンパス学生寮は,昨年の熊本地震で,寮生は数週間にわたる避難生活を強いられ,自助・共助の重要性を痛感することとなった.地震以前より,タイムライン防災の導入ならびに地域防災拠点を目指した計画策定に着手していたことから,熊本地震を機に,タイムラインに基づく防災行動計画の策定を取り急ぐこととなった.
     本稿は,学生寮における防災計画の策定と防災組織の運用について,地震以後の学生の取り組みをまとめたものである.特筆すべき点は,防災計画策定,研修,訓練を学生自らが主体となり実施したことにある.さらにPDCAサイクルを援用し改良・改善を継続的に進めている.本校の事例に示される学生主体の防災体制は,集団生活における自助・共助体制の構築の基礎となる.
  • 井上 惣介, 中野 晋
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_27-I_34
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     2016年熊本地震における地元建設企業の災害対応について,熊本県建設業協会と協会幹部企業を対象にインタビュー調査を行った.その結果,組織間の連携構築に関して問題はなかったが,新年度初頭で自治体職員の事務引継ぎが終わっていなかったなどの理由で,自治体からの出動要請が遅れたことや広域的な通信網の途絶により,災害時情報共有システムが機能しなかったなどの問題が生じた.
     本研究では,特に災害情報の伝達・共有,指揮命令のあり方,災害復旧時の労務災害に着目し,災害復旧の際の自治体と地元建設企業との効果的な協力体制を構築するための課題の抽出を行った.
  • 山田 貴久
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_35-I_42
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     労働安全衛生規則第40条第3項は,十分な知識及び技能を有していると認められる者については,当該事項に関する教育を省略することができるとされているが実際に十分な知識及び技能を有しているのだろうか.特に三大災害の一つである墜落転落に関する職長及び足場組立て等作業主任者の事例を基に検討した.その結果,職長業務のうち増加傾向にある職務内容はa)自主検査b)実際の作業c)作業の指揮・監督であった.規則第40条第3項による職長の任命割合及び能力向上教育受講割合は,毎年10%を超え上記規則第3項により選任された職長はRA(リスクアセスメント)に関する十分な知識及び技法を持ち合わせていないことがわかった.また,能力向上教育受講割合は,職長の場合皆無に等しく足場組立て等作業主任者の場合は昨年度から受講済者を発見できるようになったという程度であるから能力向上教育を受講させるための施策を推進する必要があると考えられる.したがって,さらにリスク低減対策を実施していくためには労働安全衛生法第14条,60条及び規則第40条第3項を改正し,作業実態に合わせた足場の組立て等作業主任者技能講習規程に改正する必要があると考えられる.
  • 伊藤 和也, 高橋 弘樹, 堀 智仁
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_43-I_51
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,津波による被害が広範囲に及び復旧・復興工事量は多く,労働者不足や資材価格の高騰などの問題が顕在化している.このような中,建設業の経験が無い新規参入者が建設業に従事して被災する事例も報告されており,平成23年~25年に発生した建設業での死傷者数819人のうち約1/4の193人が新規参入者による被災であった.そのため,新規参入者等への安全衛生教育の充実等を図る必要がある.本報では,新規参入者等への安全衛生教育ツールとして労働災害事例を「漫画化」した教育ツールの有効性に関して,建設業の労働安全衛生教育を実施している現役講師へのアンケート調査を実施した.その結果,災害事例の漫画化に対して分かりやすいと評価が高かった.一方で,安全衛生教育のツールとしては教育目的としての災害事例を選定が必要があることが示された.
  • 森川 貴史, 原 毅, 多田 博光
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_53-I_59
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     シンガポール地下鉄工事でのi-Constructionの活用4事例を紹介する.1) 生体顔認証とRFIDカードを複合し現場通門管理を実施している.2) RFIDカードによる現場入坑管理を行っている.3) 現場要所にIPカメラを設置しリアルタイム映像をWebおよび専用スマートフォンアプリに配信している.別途契約である計測業者からの 4) 計測データをリアルタイムにWeb配信している.請負者,発注者,コンサルが常に監視できる体制であり,管理値に達した場合は関係者に即座にSMS通知される仕組みとなっている.また,これらの活用が現場安全意識の更なる向上に伴って,シンガポール建設現場の事故・災害防止にどう貢献しているか,労働災害統計の経年比較による考察を行った.
  • 田口 一主, 番場 昌勝, 西川 克己
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_61-I_68
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     廃棄物等不法投棄事案の恒久対策工事において,高濃度汚染箇所を16mの深さまで廃棄物を撤去するが,作業構台,中間杭及び土留支保工に囲まれた狭隘な場所で機械掘削を実施する.撤去工は作業構台上に油圧クラムシェル掘削機と路下部にミニバックホウを配置して行うが,作業員は有害ガス対策の防毒マスク,防護服を着用し「合図が聞こえづらい,視野が狭い,動きづらい」等の悪条件下での作業となり,重機と接触する重大災害発生リスクが高くなる.今回紹介する活動は,そのリスクを排除するため,重機接触防止対策を検討する段階で,3種類の重機接近警報装置を候補に挙げ,現場で検知距離や範囲を実証実験により測定し,より信頼性の高いものを選定,運用することで,特殊施工条件での「重機と作業員との接触災害ゼロ達成」を目的とした活動である.
  • 矢田 一也, 浜田 和則, 新井 博之, 原山 之克, 加瀬 太郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_69-I_74
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     椛川ダムのコンクリート用骨材はすべて購入骨材であり,工事に伴いピーク時には往復約440台/日のダンプトラックが一般国道及び地元生活道路を走行する.このため,交通安全対策として効率的な車両運行管理及び運転手のヒューマンエラーによる交通事故の防止が課題となっていた.
     椛川ダムではダンプトラックの運行管理システムとして「VasMap」を採用し,骨材運搬ダンプトラック全車両にGPS機能付きタブレット端末を搭載した.これによりGPSから各車両の位置・速度の情報を取得して,運行状況をJV事務所でリアルタイムに管理することができるようになった.また,現地調査と地元へのヒアリングにより作成したハザードマップに基づいて抽出した通行要所での自動音声アナウンス機能により運転手への注意喚起を行い,交通安全対策に活用することができた.
  • 加藤 研二
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_75-I_82
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     日本各地で地区住民が主体となり避難訓練などが実施され災害への意識を高めている.しかしながら,「自分には関係がない」等の意識を持つなど全ての住民意識が高まっているとは言い難い.このような「災害に関心がない人」についても,個別コミュニケーションを用いたモビリティ・マネジメント(以下:MM)手法を適用することで行動変容が期待される.また,従来利用しているテレビ,スマートフォンを含めた放送と通信の融合技術を利活用することで,より効果的に行動変容を促すことも期待できる.
     本研究では東京都豊島区で実施した実証実験の結果を用い,放送通信融合技術および個別コミュニケーションを利活用した災害時情報配信の効果を検証した結果,男性は「何も持たずに避難する意識」,女性は「必要なものを持って避難する意識」を高める効果があるなど,放送通信融合技術と個別コミュニケーションの有効性が確認できた.
  • 小池 則満, 中村 栄治, 服部 亜由未, 森田 匡俊, 正木 和明
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_83-I_90
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     海水浴場など,他地域から多くの人が訪れる観光地では,来訪者が周辺の地理情報に疎く,避難場所,避難経路などの情報の周知も難しいと考えられる.そのため,沿岸部の観光地には,観光客を守るための適切な避難誘導を行える力も持つことが求められる.そこで本研究では地元住民によって企画される避難訓練が,どのように実施され改善が重ねられたか,観察と参加者へのアンケート調査の結果から検証した.当初,考えられていた避難場所が経路,受入容量に問題があること,距離があって来訪者から不満がでると思われた避難場所でも大きな問題なく避難出来ることなどが確認され,実践を通じた問題発見と解決策を見い出すことができた.
  • 吉田 成宏, 下田 滉貴, 池本 敏和, 山口 裕通, 高田 良宏, 宮島 昌克
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     災害発生直後の避難では,火災,道路の閉塞など不確定要素が多く,事前作成の避難経路の提示だけでは対応が不十分である.さらに,近年,土地勘のない観光客などの外部者の避難支援が問題となっている.そのような背景のもと,我々は,従来の避難援助システムのように避難経路を提示するだけでなく,住民同士さらには住民と外部者が情報を共有して避難支援を行う避難共助支援システム(Emergency Mutual Support System: EMSS)を提案する.本稿では.EMSSの仕組みを解説し,実証用に開発したアプリケーションを用いた小規模範囲に準備された空間におけるペアリング実装実験,既存の友人検索アプリケーションを利用した模擬避難実験の結果と位置情報共有の有効性,EMSSの将来展望について述べる.
  • 磯打 千雅子, 寒川 卓治, 白木 渡, 金田 義行, 藤澤 一仁, 高橋 亨輔, 井面 仁志, 岩原 廣彦
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_97-I_105
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,香川県内企業の防災対策と事業継続計画の取り組み状況,2016年4月に発生した熊本地震による影響をアンケート調査により明らかにした.結果,事業継続対策の取り組みに進展が見られるものの計画策定内容は未だ十分なものでなく,あらためて事業継続計画の基本的な考え方等についての啓発の必要性が明らかとなった.
     調査は,2008年9月,2012年2月の継続調査であり,経年変化とともに全国的なトレンドとの比較を行った.加えて,2011年3月に発生した東日本大震災と熊本地震の影響を比較することにより,狭域被害となる直下型地震と広域被害の海溝型地震による災害形態の影響と産業別事前復興の必要性について考察した.
  • 鈴木 聡一, 小池 則満, 森田 匡俊
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_107-I_116
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     近年,救急医療の現場ではヘリコプターによる搬送が普及している.ヘリコプターは,震災時における津波浸水や土砂崩れによる陸路搬送ネットワークの寸断下における有効な搬送手段となる.そこで本研究では,愛知県知多半島を対象に,震災時の災害医療搬送においてヘリコプターの活用に不可欠な場外離着陸場の配置状況をアクセス性および勢力圏人口を用いて分析し,救急搬送体制の拡充に効果的な既存空地を有効活用した場外離着陸場の配置検討を行った.また,勢力圏人口の算出過程において道路ネットワークボロノイ分割を用いた按分手法の適用を試み,一般的な手法である平面ボロノイ分割を用いた面積按分による算出結果との比較を行った.その結果,知多半島では実ネットワークを考慮できる道路ネットワーク按分の適用が適切であると指摘できた.
  • 中川 拓朗, 金子 雄一郎, 鈴木 康平
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_117-I_125
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     2011年3月の東日本大震災では東北新幹線の運休に伴い首都圏と東北圏間の移動性が大きく低下したが,航空や高速バスの増発等により一定の輸送量を確保した.このように震災時には交通ネットワーク全体としての機能が喪失しないように代替性を確保しておくことが重要である.本研究ではまず,今後発生が想定されている南海トラフ巨大地震によって基幹交通機関である東海道新幹線が途絶した場合の利用者への影響を,総合交通分析システムNITASを用いて分析した.次に,東海道新幹線を利用した出張者を対象に意識調査を実施し,訪問地や訪問目的,震災で新幹線が長期間運休した場合の想定行動を把握した.その結果,支店等の従業員の安否確認や物資供給,取引先の見舞いや業務支援を目的とした訪問意向が半数以上見られ,その多くが代替交通手段として航空の利用を想定していることが明らかになった.
  • 保田 敬一, 白木 渡, 井面 仁志
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_127-I_138
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     インフラ長寿命化修繕計画では主に安全面に重点が置かれ,安全性低下に直結する損傷の進展を防止することに着目してその対策と実施予定時期などを定めた補修計画が立案されている.しかし,修繕計画を長期間運用していくためには様々な側面を考慮しなければならないと考えられる.本研究では,インフラ長寿命化修繕計画の継続的な運用に関して2つの側面から評価することを試みる.一つは脆弱性であり,これはリスクにさらされている度合いで定義する.もう一つは,レジリエンスであり,対処する能力を回復する力と抵抗する力で評価する.地方公共団体の具体的な事例で試算を試みるとともに,脆弱性とレジリエンスの両面から2つの異なる軸により評価することで弱点が把握し易くなることを示す.
  • 金井 純子, 三好 学, 安藝 浩資, 中野 晋
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_139-I_146
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,高齢者施設における洪水時の「避難開始の判断」の重要性と判断の目安の設定方法を示すことにより,避難確保計画や避難訓練の実効性を高めることを目的とする.過去の水害で入所者を迅速に避難させた3つの高齢者施設の共通点として,市町村が発令する避難情報等に加えて,施設近くの水位情報やダムの放流量など独自の判断目安を持つことが分かった.一方,四国4県の高齢者施設を対象にした洪水時の避難判断に関するアンケート調査では,独自の避難行動開始基準をもっている施設は少なかった.そこで,水位情報を活用した判断目安の設定方法の一例を示すため,2015年関東・東北豪雨で被災した特別養護老人ホームD苑を事例に,現地調査や氾濫解析等を行った結果,施設上流側の複数地点の浸水情報が「避難開始の判断」の目安になり得たことが分かった.
  • 佐藤 英治, 井面 仁志, 白木 渡, 磯打 千雅子, 岩原 廣彦, 澤田 俊明, 高橋 亨輔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_147-I_157
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     水災害分野では,従来,ハード整備や水防活動による防災の考え方を中心として災害に備えてきたが,近年,気候変動に起因する大規模水災害が全国各地で発生しており,従来の対応では限界がある.このような大規模水災害に対応するため,発災後の対応に重点をおいた広域的な地域連携による危機管理の対応が求められる.
     本研究では,災害レジリエンス(縮災)の考え方を導入し,地域における危機管理対策の実効性を高めるための地域継続計画(DCP)策定手法について提案した.具体的には,香川県の土器川流域を対象として「香川型DCP検討方式」による危機管理対策検討を実施した事例をもとに,広域的な地域連携を図るための包括的な組織・枠組みの構築や,地域住民と地域行政が主体となった実効性のあるボトムアップ型のDCP検討プロセスを提案した.
  • 佐藤 英治, 井面 仁志, 白木 渡, 磯打 千雅子, 岩原 廣彦, 澤田 俊明, 高橋 亨輔
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_159-I_169
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     近年,全国各地で大規模水災害が頻発している中で,地域行政の災害対応の不手際や防災行動・避難行動の遅れが指摘されている.国土交通省は,大規模水災害が発生することを前提とした防災・減災対策を進めるため,「タイムライン」の全国展開を進めている.このタイムラインは,防災関係機関を主体としたタイムラインが多く,また事前の防災行動が中心となっている.
     本研究では,地域住民が「早めの安全な避難」や「早期の生活再建・応急復旧」を意識して主体的に連携して行動するための住民タイムラインの作成を研究対象とした.住民タイムラインの作成にあたり,土器川の堤防決壊を伴う大規模な河川氾濫を想定し,河川氾濫発生の事前・事後の場面で,防災・減災・縮災行動を検討する地域住民と地域行政の協働によるワークショップを企画・実施した.
  • 保田 敬一, 白木 渡, 井面 仁志
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_171-I_180
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     インフラ長寿命化修繕計画はその運用が数十年と長期間にわたるが,継続的な実施が保証されているわけではなく,様々な要因により修繕計画の中断,一時停止,延期などが発生する可能性がある.修繕計画は継続的な運用を前提にしてLCC最小化シナリオを設定しており,補修・改築の延期や中断が長期にわたるとLCCが増加する恐れがある.そこで,本研究ではインフラ長寿命化修繕計画の継続的な運用に影響を与える要因に着目し,脆弱性とレジリエンスの両面から評価することを試みる.評価に際しては性能マトリクス形式で表示することにより現在の状況が理解し易く,また改善後の評価も対話形式で進めることができるなどの利点がある.地方自治体が公開している修繕計画を対象にして,2軸のマトリクス評価の実例を示す.
  • 池本 敏和, 宮島 昌克, 橋本 隆雄, 中島 進, 藤原 寅士良, 池本 宏文
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_181-I_187
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     日本には,膨大な数の石積擁壁が存在し,過去の地震において沈下,滑動,はらみ出しなどの被害が生じている.鉄道や宅地などに存在する石積擁壁は,専門職の技能と経験によって伝統的に構築されたものであり,今日も供用されている.しかしながら,その耐震性能については未解明な部分が多いのが現状である.各機関では石積擁壁の安定性を向上させるために種々の対策を講じており,その一例として,地山補強材を用いて補強を行う場合がある.本研究では,地山補強材を用いた場合の模型振動台実験を対象に,不連続変形法による挙動解析を行い,破壊メカニズム,及び補強効果を解析的に再現し,解析手法の有用性を確認した.
  • 野村 泰稔, 村尾 彩希, 阪口 幸広, 古田 均
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_189-I_198
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     近年,老朽化に伴う安全性の低下が懸念される社会基盤に対して,その構造健全性を如何に効率的かつ的確に評価するかが,維持管理計画を策定する上で益々重要となってきている.構造の健全性を評価する上で,ひび割れを検出することは,構造物の劣化や破壊を引き起こす大きな要因の一つであるため,特に重要である.本研究では,現在,各所で開発が進められている高所等,人が立ち入ることが困難な箇所の点検ロボットに実装するシステムを構築することを目的として,各種ひび割れの画像を深層畳み込みニューラルネットワークにより学習し,UAVやWebカメラ等により撮影される構造全体系の多数の画像に対して,リアルタイムにひび割れの有無・領域をスクリーニング可能なシステムの開発を試みる.
  • 根来 慎太郎, 湯浅 恭史, 中野 晋, 朝野 佳伸
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_199-I_206
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     東日本大震災時にBCPが十分機能しなかった点を踏まえ,BCPの全社員への浸透を図るために,GISを活用したBCPの「見える化」を図った取組の有効性について提示する.
     まずBCPの策定体制をトップダウンからボトムアップに変更し,机上演習を通して意識の共有を図った.その上で顧客や社員の情報,社屋,関連会社等の情報,津波等のハザード情報など平時と災害時の両方で必要な情報をGIS上で「見える化」を行った.平時には顧客への情報提供に活用でき,災害時には顧客の被災状況点検に活用できる体制を整えた.外出先で利用できるように携帯タブレットでもGISが活用できるための専用アプリを開発し,これを用いた訓練等も行った.これらの結果は各部署の緊急対応マニュアルの改定に活かされた他,平時の点検作業の効率の改善,災害時の対応手順の理解が進んでいる.
  • 湯浅 恭史, 中野 晋, 小山 昌宏
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_207-I_212
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     大規模災害発生時には,医療機関では通常の入院診療等に加えて,災害医療への対応も求められることとなる.災害時の限られた資源でも事業を継続する必要があることから,事業継続計画(BCP)への取り組みが求められてきている.本研究では,平成28年熊本地震の被災事例から医療機関BCPに必要な要素と課題を抽出する.平成28年熊本地震では前震,本震の2度の大きな揺れと断続的に続く余震により,多くの病院で深刻な被害が生じ,入院患者を他の病院に転院させざるを得ない医療機関もあった.被災した医療機関に対し,初動対応から事業継続への取り組みについてヒアリング調査を実施し,BCPを検討する上で必要となる被災事例の情報収集を行い,医療機関のBCPを検討する上で必要な考え方や要素について考察を行った.その結果,医療機関のBCPには,トリアージ等の初動対応の検討だけでなく,ハード,ソフト,スキルの事前対策,事後対応として病院避難を含めた代替戦略や受援体制を検討しておく重要性を示した.そして,それらを補い、機能させるための平常時からの地域連携の必要性を指摘した.
  • 湯浅 恭史, 中野 晋, 島田 敬祐, 田中 勇気
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_213-I_218
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/08
    ジャーナル フリー
     「市町村のための業務継続計画作成ガイド」の公表を受け,市町村のBCP策定率は確実に向上しているが,BCPに基づく訓練やBCPの見直しは十分でない.著者らは,自治体のBCP担当者が自らのBCPを点検して課題抽出を行い,見直しを容易にできるためのBCPチェックシートを作成した.これは上記ガイドを参考に,業務継続に必須である6要素と,BCPの策定・運用体制とBCPの継続的改善の2つを加えた8要素について短時間で点検できるように工夫している.平成27年度から徳島県内市町村のBCP担当者を対象に,地域別のBCP研修会を実施している.チェックシートを活用して自らのBCPの点検を行った上で,BCPの概要と点検結果について他の自治体担当者に説明し,地域内の自治体間で相互にBCPの内容に意見交換した.熊本地震の反省からBCPに応援・受援体制を明記する必要性が指摘されており,自治体間でBCPを相互理解することは応援・受援体制構築の基本である.そこで,応援・受援体制を考慮した新たなチェックシートの枠組みについても提示する.
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