抄録
本研究では,機械分野の「安全学」を建設業にも適用するため,リスク,安全等の定義を概説する.機械分野では,リスクアセスメントのうち,リスク低減措置として「本質的安全設計」を最優先で考える.一方,建設業では,自然を対象としていること,プロジェクト毎に条件が異なること,充分な資金と工期が得られない場合があること,発注,設計,施工の担当が組織を異にしていること等もあり,本質的安全設計が採用され難いという現状がある.そこで,実際の事故事例から建設業においても本質的安全設計が重要であることを示す.さらに,建設業の安全の成績が良い英国の取り組みを調査し,日本の建設業においても発注者,設計者,施工者が一体となって,施工中の安全を含めた本質的安全設計が優先的に実施されるような社会的なシステムが必要である.