2020 年 76 巻 2 号 p. I_165-I_174
本研究の目的は,神社空間を核とした防災コミュニティを形成するためのひとつの実践モデルを提示することである.そのために本研究では,和歌山市・伊達(いたて)神社において社会実験を展開した.伊達神社の位置する有功地区は,地震,津波,河川氾濫,土石流,斜面崩壊など多様な災害リスクにさらされている地域である.地域防災上の課題としては,地域住民が種々の災害リスクのポテンシャルを認識していない,地域内で実効性のある避難計画が周知されていない,古くからの集落と新興住宅街の住民が交流できていない,といった点があげられる.これらの課題を解決するために,伊達神社において,氏子やその他の地域住民と神職,絵地図アーティスト,学識経験者がワークショップとフィールドワークを繰り返し,地域内の史跡名所を巡ることでハザードエリアが把握できる「無病息災マップ」を作成するプロジェクトを展開した.