2020 年 76 巻 2 号 p. I_97-I_105
今後30年間で70~80%の発生確率といわれる南海トラフ地震において,甚大な被害が想定される四国地方では,地域特性に応じた的確な防災・減災対策が必要となっている.地域防災力向上に向けそれぞれの地域では,地区防災計画の策定が行われている.重要なことは地区防災計画を策定し,その内容について訓練や勉強会を通して,適宜改善していくプロセスが継続できる地域コミュニティであることである.
地域コミュニティの防災ネットワークに関しては,自主防災組織,女性防火クラブ,災害ボランティア,介護事業者など様々な組織から構成されている.近年,この地域コミュニティの崩壊による地域防災力の低下が社会問題となっている.筆者らは地域コミュニティの崩壊要因として自治会加入率の低下,地域住民の高齢化等単身世帯の増加,自主防災組織と自治会の状況及び,小学校の統廃合による地域コミュニティの変容に着目し,これらが地域防災力に及ぼす影響について調査・分析を行った.本稿はその結果と地域住民同士を繋ぐネットワークの中心に,小学校を位置付けた地域コミュニティの地域防災力向上を図っている事例について述べる.