土木学会論文集F6(安全問題)
Online ISSN : 2185-6621
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特集号(和文論文)
南海トラフ地震時に孤立する瀬戸内海島嶼部における島民相互の支え合いコミュニティの形成に向けた取り組み事例
岩原 廣彦白木 渡井面 仁志高橋 亨輔
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2021 年 77 巻 2 号 p. I_99-I_107

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抄録

 今後30年間での発生確率が70~80%といわれる南海トラフ地震が発生した場合,四国地方では甚大な被害が想定されている.瀬戸内海には大小合わせて約3000島があり,これら島嶼部の共通の課題は,人口減少と高齢化が著しいことである.島内では緩傾斜部に石垣を築いて人家や田畑を整備し,道路は狭隘で急こう配である.これら島嶼部の多くは,南海トラフ地震のような広域大規模災害が発生した場合,港湾施設の被災や津波漂流物によるフエリー等の運航停止により孤立し,基礎自治体など島外からの支援を受けられない可能性がある.

 また,この瀬戸内海の島々は,2010から3年毎に開催される現代美術の瀬戸内国際芸術祭の舞台でもある.高松市の男木島では,島民の防災意識の啓発と観光目的来島者用の観光場所と避難場所を併記した避難マップを作成した.避難マップ作成プロセスのワークショップ(以下,WS)で島民同士の親密度が高まり,島の高齢者を対象とした平常時からの相互支援体制構築の機運が高まった.この相互に支え合う体制をマップに落とし仕込み,災害発生時にも活用しようという活動が行われている.さらにこの発展形として,IoTを活用した将来に向けた島の在り方についての実証実験も動きだした.本稿はこれらの取り組み事例について考察する.

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