2022 年 78 巻 2 号 p. I_93-I_103
わが国では,近年,豪雨災害が多くなり,都市域が冠水する事象が多発している.浸水地域に工場などの危険物質を取り扱う施設があれば,その流出が懸念され,浸水地域に長期間の悪影響を及ぼすものと考えられる.すなわち,洪水による危険物質の流出に対する対策の検討をすることは,洪水災害からの復旧・復興だけでなく,減災対策を立てる上で役に立つ.本研究では,まず過去の国内外で発生した豪雨災害に伴う危険物質の流出事例をレビューした.そして,わが国における水害発生時の危険物質の流出リスクについて,その可能性がある事業所(工場),農家,一般家屋に分類して調査を行った.さらに,危険物質が流出した場合の拡散の様子について,平面2次元拡散方程式の解析解を用いて簡易推算した.これらを踏まえて,水害による危険物質の流出対策について考察を行い,二,三の提案を行った.