2021 年 77 巻 1 号 p. 75-87
従来の都市空間における人の行動特性を明らかにする実験では,データ計測のための調査員,膨大なデータの解析といったコストがかかるだけでなく,実験環境の再現性に乏しい.これらの課題を解決するために,都市空間をVR空間内に構築し,身体動作をともなう移動手法を用いたシステムを提案する.ただし,このようなシステムを用いた際に,どのような認知地図が人の脳内に形成されるかは明らかでない.本研究は現実空間とVR空間で人が探索行動をおこなった際に形成される認知地図の歪みを量的に評価・比較することを目的とする.実験の結果,実験をおこなう空間の違いによらず,認知地図の歪みの傾向に違いは見られなかったことから,形成される認知地図に違いがないことを示した.