数値シミュレーションによる浸水地下街での群集避難過程予測では,激しい水面変動を伴う水流と避難者との相互作用力の評価が重要であるが,この種の評価を考慮したモデルの計算負荷は非常に高い.計算負荷を逓減しつつ,相互作用力を精度良く考慮し得るシミュレーションを実施するため,本研究では浸水域の避難者に作用する流体力を評価するための流体力関数をDEM-MPS法による数値シミュレーション結果に基づいて提案する.
道路トンネル内で火災が発生した場合,安全な避難環境確保が重要であり,そのためには確実な早期火災検知が必要である.発火前の火災初期段階での煙の検知を可能にするため,検出方法の異なる煙センサ,レーザガスセンサ,フォトダイオードセンサを選定し,予備実験で煙濃度と各センサ出力の定性的な相関について確認し,実大トンネルで発煙筒および火皿火災実験により,各センサの検知特性について調査した.その結果,本実験の範囲では各センサともに発火前のくすぶり段階での火災早期検知の可能性を有することが分かった.特にフォトダイオードセンサは煙がセンサ設置箇所に到達する前でも俯瞰している範囲に煙が進入することで,煙色にかかわらず,早期火災検知の可能性が示唆された.
トンネル排煙方式は,日本は縦流換気が主流,欧州は集中排煙が主流と大きな違いがある.火災安全評価でも,日本は安全な避難環境の維持,欧州は死亡者を無くす,という考え方で両者は大きく異なっている.本論文は,これらの違いに注目し,同一のトンネルに対し縦流換気(風速0化)および集中排煙とした場合に,日本の考え方に基づく煙に暴露された避難者数で評価する方法,欧州の考え方に基づく避難者の負傷の程度を評価する方法によって火災安全性評価を行い比較検討した.その結果,縦流換気(風速0化)は,「勾配が小さい場合は安全な避難環境の維持は可能であるが,勾配の増加さらに避難が遅れると負傷に至る可能性がある」,集中排煙は,「0%以外は多くの避難者が煙に暴露されるが,負傷者になるほどではない」となった.
従来の都市空間における人の行動特性を明らかにする実験では,データ計測のための調査員,膨大なデータの解析といったコストがかかるだけでなく,実験環境の再現性に乏しい.これらの課題を解決するために,都市空間をVR空間内に構築し,身体動作をともなう移動手法を用いたシステムを提案する.ただし,このようなシステムを用いた際に,どのような認知地図が人の脳内に形成されるかは明らかでない.本研究は現実空間とVR空間で人が探索行動をおこなった際に形成される認知地図の歪みを量的に評価・比較することを目的とする.実験の結果,実験をおこなう空間の違いによらず,認知地図の歪みの傾向に違いは見られなかったことから,形成される認知地図に違いがないことを示した.
高速道路トンネルの覆工表面は煤や油,汚濁水およびエフロレッセンス等により汚れている場合が多い.この汚れは覆工の表面に存在する変状の把握を困難にしている.さらに,矢板工法で施工されたトンネルは,漏水が生じている場合が多く,漏水の発生箇所には,導水樋を設置する対策が施されている.したがって,導水樋によって覆われた部位の変状の確認は難しくなる.これらの要因は,走行型の画像撮影点検はもとより,近接目視による点検においても,変状把握の正確性に影響する.本論文は覆工表面に生じる変状把握の精度向上を目的として,覆工表面の洗浄手法を検討し,洗浄が変状把握に与える影響を明らかにするとともに,導水樋により覆われた箇所の変状の可視化を目的とした透明型導水樋の設置箇所における変状把握手法について検証したものである.
放射性廃棄物処分施設の長期的な機能確認手段として,センサなどによるモニタリング技術が望まれている.分布型光ファイバセンサは,小型軽量で長寿命,センサ部に電源が不要などの特長とともに,一本のケーブルで多点計測が可能なため,モニタリング用機器設置に伴う人工バリアの弱部形成を最小化出来ることから,当該施設における有力なモニタリング手段として期待されている.筆者らは,わが国における施設の機能確認に必要なモニタリング項目を抽出したうえで,分布型光ファイバセンサの実用性を実験的に検証した.具体的には,室内実験によって長期耐久性の確認と圧力計測の基礎的検討を行い,実規模模擬施設を用いた原位置実験によって温度計測,ひずみ計測の実用性を確認するとともに,人為的にひび割れを生じさせてひび割れ検知性能を確認した.
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