抄録
本論文では粒子法シミュレーションの近傍粒子探索に有効なスライスデータ構造を提案する.この手法では粒子配置を考慮して動的に格子を生成する.全てのボクセルが粒子を格納する完全な格子を作成するのではなく,ある程度粒子を格納しないボクセルが存在する格子を作成する.これによってこのデータ構築の計算コストが下がる.粒子番号を格子に格納する前にキーとなるいくつかの値を計算する.この値を用いてそれぞれのボクセルの番号が計算される.このデータ構造はGPUを用いて構築することが可能であり,かつGPUを用いてそのデータにアクセスすることが可能であるため,GPUを用いた粒子法シミュレーションに導入することが可能である.固定格子を用いた場合は計算領域に制限が存在したが,本手法では動的に領域を計算するため,この制約にとらわれなくなり,広い領域の計算も行なうことができる.さらに本手法の計算コストは低いため,リアルタイムアプリケーションに組み込むことも可能である.本論文ではまずこのスライスデータ構造について述べ,GPUを用いた実装方法について説明する.そして粒子法シミュレーションに適用し定量的評価を行ない,本手法の有用性を示す.