抄録
粒子法は,トポロジカルな変形や物体同士の衝突を容易に扱えると期待され研究が行われている.粒子の運動をハミルトン系で記述し,シンプレクティックスキームを適用することによって,エネルギー保存精度のよい粒子法弾性体解析手法が開発されている.しかし,応力を粒子位置で計算した場合には粒子の局所的振動が生じ計算精度が悪くなる.このため,精度のよい計算のためにはこの振動を抑制することが必要である.本研究では,シンプレクティックスキームを適用した粒子法弾性解析手法における粒子の局所的振動を抑制する人工的な力を提案する.その際,人工的な力を導入してもエネルギー保存性は保たれることおよび影響半径内で変形を線形近似できる場合には人工的な力がほとんど影響しないことに注意して定式化を行う.また,人工的な力を導入する場合としない場合を比較し,片持ち梁の釣り合い解析において粒子間隔を小さくした場合に理論解に収束すること,縦波および横波の伝播速度が理論速度と一致すること,複雑な振動モードを含む梁の振動解析においてエネルギーを保存することおよび人工的な力が粒子の局所的振動を抑制する効果があることを示す.