抄録
近年,Moving Particle Semi-implicit(MPS)法やSmoothed Particle Hydrodynamics(SPH)法に代表される粒子法が開発され,有限要素法で困難であった様々な解析が可能となりつつある。越塚により開発されたMPS法は,大変形の解析ばかりでなく,接触や破壊まで容易に取り扱うことができる.MPS法は物体を粒子の集合として表現し近傍との接続関係が粒子間の距離によってのみ決定されるため,モデルの作成が容易であるというメリットもある。構造物の事故解析などにおいては材料の大変形を取り扱うため塑性領域での振る舞いを解析する必要がある.MPS法においてはこれまでに近澤らが弾塑性解析手法を開発している。近澤らの手法は支配方程式をマトリクスで記述して静的な釣り合いを反復計算で解くものであるが,物性値の条件によっては収束性が不安定になるという問題があった。本研究ではこれらの問題を解決するために反復計算を行わない,MPS法による弾塑性解析手法を開発する。本手法ではまず粒子間の相対変位からひずみテンソルを計算する。相対変位を計算する際に剛体成分をあらかじめ除去することでひずみを精度よく計算することができる。応力とひずみの関係式として,Von-misesの降伏関数を仮定した基礎式を用い,elastic predictor-radial corrector法によってこれを解き応力を計算する。得られた応力を偏差応力成分と圧力成分に分け、それぞれの粒子の加速度を計算する。圧力成分による加速度を計算する際に粒子間に反発力のみが働くようにモデル化することでTensile instabilityを回避した。本手法は完全陽解法であり反復計算などを行う必要がない。本手法を,内圧を受ける円管の弾塑性解析に適用し,理論解と比較してその妥当性を検証した。計算には2種類の異なる初期粒子配置を用いてその違いの影響を調査した。さらに,本手法を圧縮荷重問題のそれぞれに対して適用し,正しい結果が得られることを確認した。