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山田 崇恭, 山崎 慎太郎, 西脇 眞二, 泉井 一浩, 吉村 允孝
2008 年 2008 巻 p.
20080001
発行日: 2008年
公開日: 2008/01/18
ジャーナル
フリー
本研究では,トポロジカルデリバティブを用いて,空洞領域を生じさせる形態変化を可能にしたレベルセット法に基づく新しいコンプライアントメカニズムの最適設計法を構築した.始めに,レベルセット法に基づく形状最適化の考え方について簡単に述べた後,コンプライアントメカニズムの設計要件を明確化するとともに,それを満足するための目的関数を相互平均コンプライアンスの考え方に基づいて導出した.さらに,その目的関数と,ばね要素の設置に基づいて最適化問題を定式化した.次に,最適化問題の定式化に基づき,変位場の解析とレベルセット関数の更新に有限要素法を用いた最適化アルゴリズムを構築した.ここでは著者らが開発した幾何学的情報に基づく新しいレベルセット関数の再初期化法を適用することにより,安定的なレベルセット関数の更新を実現した.最後に,数値例により本研究で提唱する方法の有効性を検証した.その結果,全ての領域において連続な連結構造をもつ物理的に妥当で明確な最適構造が得られることがわかった.さらに,最適化問題の設定に導入したばね要素の設定値により,コンプライアントメカニズムの荷重入力位置の変位と出力位置の変位の比を定性的に設定可能な最適構造が得られることがわかった.
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車谷 麻緒, 寺田 賢二郎
2008 年 2008 巻 p.
20080002
発行日: 2008/01/29
公開日: 2008/01/29
ジャーナル
フリー
本論文は,非均質脆性材料の準静的な破壊現象を解析するための,簡便かつロバストなFEMベースのひび割れ進展解析手法を提案するものである.本手法の主な特徴は,節点積分FEMの考え方をひび割れ発生·ひび割れ進展の評価に応用し,またFEMにおおける離散ひび割れモデルに簡易的なメッシュ再構築法(修正法)を組み合わせることにより,簡便かつロバストなひび割れ進展を実現するものである.はじめに,対象とする問題設定を述べた後,節点積分FEMにおける応力評価法を応用したひび割れ形成の判定法,およびメッシュ再構築法を組み合わせた離散ひび割れの進展アルゴリズムの詳細について説明する.そして,いくつかのベンチマーク問題および複合構造の数値解析例を題材に,提案するFEMベースのひび割れ進展解析手法の妥当性·有効性を議論する.
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シール・ タルン・クマー, 横田 理央, 泰岡 顕治, 小尾 晋之介
2008 年 2008 巻 p.
20080003
発行日: 2008/02/04
公開日: 2008/02/04
ジャーナル
フリー
渦法はメッシュフリーの流体解析法として近年急速な発展を遂げているが、計算コストの面で多くの問題を抱えている。本研究では、高速多重極展開法(FMM)と分子動力学専用計算機(MDGRAPE-3)を併用した渦法計算の高速化手法を提案する。本手法の有効性を検証するために行った衝突渦輪の計算では、汎用計算機上の直接計算と比較して約2000倍の加速を得た。また、衝突後に起こる渦輪の繋ぎ換えも良好に再現され、特に1000万粒子を用いた計算では離散化誤差がごく僅かであることが示された。
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染原 一仁, 藤野 清次
2008 年 2008 巻 p.
20080004
発行日: 2008/02/28
公開日: 2008/02/28
ジャーナル
フリー
本論文では,元のEisenstat技法が式変形による計算量削減技法であるため,その収束性が前処理の近似の度合いに大きく依存し,Eisenstat版DICCG法の収束性がDICCG法と同等の性能にすぎないことに着目した.そして,DIC分解に加速係数つきIC分解を適用し,Eisenstat版DICCG法の収束性向上を目指す.
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澤田 有弘, 手塚 明, 久田 俊明
2008 年 2008 巻 p.
20080005
発行日: 2008/02/21
公開日: 2008/02/21
ジャーナル
フリー
筆者らが提案した大変形流体·シェル連成解析用の重合メッシュ法[Transactions of JSCES, vol. 2007, no. 20070029, 2007]は,ローカルメッシュ解析に連成面追跡型ALE有限要素法による強連成解析手法を,グローバルメッシュ解析には連成面捕捉型の連成解析手法の一つであるImmersed boundary (IB)法やImmersed finite element(IFE)法による弱連成解析を適用し,両手法の長所(前者は解析精度と安定性,後者は大変形への適用性)のみを組み合わせて開発された手法である.本論文はその続報研究に相当し,提案した重合メッシュ法を後者のIB法とIFE法の改良版という立場から記述した.そして大変形を伴う二次元検証解析で提案手法と標準的なIB法の性能を比較し,提案手法の有効性を示した.同時に,IB法とIFE法は動解析の時間増分が非常に厳しく制限されることか課題となっていることに注目し,その本質的原因が弾性境界をまたいで一階微分の不連続性が保証されない内挿関数による弾性体速度の算出と,それによる解析誤差の積み重なりにあることを示した.
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原田 隆宏, 越塚 誠一, 島崎 克教
2008 年 2008 巻 p.
20080006
発行日: 2008/03/28
公開日: 2008/03/28
ジャーナル
フリー
本論文ではMPS法の壁境界の改良された計算モデルを提案する.粒子法は自由表面流れの計算に適しているが,問題点が存在する.その1つとして壁境界の計算方法である.一般的に粒子法では壁境界を壁粒子として変換して計算される.しかし,壁粒子は離散化された壁境界の表現方法であり,スムーズな境界が表現できない.例えばスムーズなスロープの上での流体の挙動の計算でも,境界はスムーズに計算されず,凹凸のある境界として計算される.また壁粒子は総粒子数を増加させるため,流体粒子だけの計算と比べると計算コストも高くなる.本論文で提案する手法は壁粒子を用いずに,壁ポリゴンを用いて壁境界の計算を行なう.それぞれの項を壁ポリゴンを用いて計算するために流体粒子の寄与と壁の寄与を分解して考える.そしてそれぞれの式を導出し,計算結果を示す.最後に本手法を用いた計算結果を壁粒子を用いた結果と定量的に比較する.
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山田 崇恭, 山崎 慎太郎, 西脇 眞二, 泉井 一浩, 吉村 允孝
2008 年 2008 巻 p.
20080007
発行日: 2008/04/01
公開日: 2008/04/01
ジャーナル
フリー
コンプライント熱アクチュエータとは弾性体の熱膨張を利用して,必要な弾性変形を生じさせ,それにより必要な機構的機能を実現するアクチュエータである.これらはその形状的特徴により,小型化などの多くの利点を持ち,特にMEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)における応用が期待されている.このような機能構造物の形状設計については,設計者の勘や経験に基づいた多くの試行錯誤によって行われており,数学的および力学的根拠に基づいた統一的な設計法は未だ確立しておらず,必ずしも高性能な形状の設計に至っていないのが現状である.そこで,本研究では,新しい形状最適化の方法である,レベルセット法に基づく構造最適化を用いたコンプライント熱アクチュエータの最適形状創成設計法を構築した.始めに,それぞれの最適設計問題の設計要件を明確化し,穴の創出に必要なトポロジカルデリバティブを導出可能な目的関数を設定し,定式化を行った.さらに,その定式化に基づき,変位場と温度場の解析と,レベルセット関数の更新に有限要素法を用いた最適化アルゴリズムを開発した.最後に,2次元モデルでの数値解析を行い,本研究で提唱する方法論の有効性を検証した.その結果,本研究で提案する方法により,ヒンジ構造のない物理的に妥当で,明確なコンプライアント熱アクチュエータの最適構造が得られることがわかった.さらに,コンプライアント熱アクチュエータの変位の大きさを定性的に設定可能な最適構造が得られることがわかった.
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新井 淳, 越塚 誠一
2008 年 2008 巻 p.
20080008
発行日: 2008年
公開日: 2008/04/11
ジャーナル
フリー
本研究では圧縮性流れと非圧縮性流れを統一的に解析可能な粒子法アルゴリズムを開発した.流体の分裂や,合体などの複雑現象を解析する手法の一つとして,MPS (Moving Particle Semi-implicit)法がある.MPS法は粒子法の一種であり,計算点を移動させながらラグランジュ的な解析を行う.このため,有限差分法や有限体積法など,オイラー法を基礎とした解析手法でしばしば問題となる界面のぼやけや,計算メッシュの破綻が生じず,シャープな界面を捉えることが可能である.このため,砕波や液滴の分裂,波浪中の船舶への海水打ち込み問題などの解析が行われてきた.また,計算格子が不要のため流体構造連成への適用も容易に行え,弾性体のタンクにおけるスロッシングの解析例も見られる.ところで,MPS法は非圧縮性流れのための粒子法である.一方で,圧縮性流れのための粒子法としてSPH (Smoothed Particle Hydrodynamics)法がある.近年ではSPH法をもとに非圧縮性流れ解析へと応用した例も見られる.圧縮性流れと非圧縮性流れを同じアルゴリズムで解析しようというアプローチは,これまでにも行われている.例えば,限られた圧縮性を考慮するHirt-Nicholsの方法や,CIP (Cubic Interpolated Pseudo particle)法に基づく矢部らのC-CUP (CIP Combined Unified Procedure)法がある。前者の場合,基本的には非圧縮性流れの支配方程式に基づき,音速を指定することで比較的弱い圧縮性を考慮している.また,MPS法にも同様な手法が導入されている.しかしながら,衝撃波などを含むような流れの解析は原理的に行えない.後者のC-CUP法では,圧縮性流れの支配方程式に基づき,圧力の時間発展方程式を導いて圧力方程式を立てている.このため,非圧縮性流れから衝撃波を含むような流れまでを統一的に解析が可能である.しかしながら,これまでに粒子法に基づく圧縮性·非圧縮性流れを同時に解析する手法は見られない.本研究では非圧縮性流れ解析の手法であるMPS法をC-CUP法と同様なアプローチにより拡張し,非圧縮性流れと圧縮性流れを統一的に解析できる粒子法アルゴリズムを開発した.このようなアルゴリズムをMPS-AS (MPS for All Speed)法と呼ぶことにする.さらに,提案した手法を衝撃波管問題,ダム崩壊問題へと適用し,MPS-AS法が圧縮性流れと非圧縮性流れとを統一的に解析しうることを確認した.
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中尾 昌広, 廣安 知之, 三木 光範
2008 年 2008 巻 p.
20080009
発行日: 2008/04/21
公開日: 2008/04/21
ジャーナル
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本論文ではクラスタリングシステムのセットアップツールであるDCASTを提案する.DCASTの特徴は,ディスクレスノードとディスクフルノードが混在するクラスタシステム環境をセットアップ可能な点である.ディスクレスノードは,ディスクフルノードのルートファイルシステムを利用することで起動する.そのため,DCASTはディスクフルノードとディスクレスノードのネットワークマウントの関係を自動的に最適化することで,ディスクフルノードに負荷が集中しないように工夫している.この機能の有用性を検証するために,ディスクレスノードにおけるファイルのread性能の測定と耐故障性について検証した.その結果,ディスクフルノードに負荷が集中させない方がそうでない場合と比較して,ファイルのread性能は約30%の向上し,またシステムの不具合回数も減少することを示した.以上の結果より,DCASTは大規模クラスタに有用であることを示した.
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長原 里華, 阿部 邦美, 石渡 恵美子, 藤野 清次
2008 年 2008 巻 p.
20080010
発行日: 2008/04/17
公開日: 2008/04/17
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正則なn次行列Aを係数に持ち,n次元ベクトルx,右辺項に解ベクトルbを各々持つ線形方程式Ax=bを近似的に解くKrylov部分空間法は,前処理とともに利用されることが多い.この前処理とは,数学的同値性が保たれるような変換を行い,Krylov部分空間法の収束性が好ましいように係数行列の固有値分布を改善する方法である.一般の非対称行列に対する前処理付きKrylov部分空間法のアルゴリズムでは,まず係数行列Aに近似的に等しい前処理行列を構築する.この前処理行列については,これまでに多くの構築方法が提案されてきたが,代表的な方法として,不完全LU分解(Incomplete LU factorization, ILU分解)が知られている.また,近年では,従来の前処理とは異なる概念,すなわち反復毎に前処理を変化させる手法(以下,可変的前処理と呼ぶ)が提案されており,Generalized Minimal RESidual method(一般化最小残差法,GMRES法)の変形としてFGMRES法,GMRESR法が開発されている.これらの解法の前処理では,従来のように前処理行列を生成する代わりに,一般の前処理付きGMRES法のアルゴリズムで現れる基底ベクトルvについて,A z=vの近似解をKrylov部分空間法によって求める.具体的には,A z=vの近似を求める際に,主にGMRES法やILU前処理付きGMRES法などが適用され,一定回数の反復によって近似解が求められる.さらに,Successive Over-Relaxation method(逐次緩和法,SOR法)を用いる可変的前処理付きGeneralized Conjugate Residual method(一般化共役残差法,GCR法)も提案されている.この解法では,一般の前処理付きGCR法で現われる残差ベクトルrについて,方程式A z=rの近似解をSOR法で求めることにより可変的前処理が実行される.これらFGMRES法,GMRESR法,SOR法を用いる可変的前処理付きGCR法は,一般のILU前処理付きGMRES法,GCR法よりも有効な場合があることが報告されている.さらに,FGMRES法,GMRESR 法で実装されているようにAz=vを解く可変的前処理を実行する際にGMRES法などのKrylov部分空間法を用いるよりも,SOR法を用いる方が前処理の効果が大きいことも報告されている.したがって,収束性の観点から,SOR法を用いる可変的前処理の利用が望まれるが,係数行列の対角項に零を持つ場合,Az=rやAz=vを近似的に解くためにSOR法を適用することはできない.また,従来から使用されているILU分解によって前処理行列を生成することもできない.ところが既に,対角要素の絶対値の積が最大になるように変換する手法(以下,対角優位化並替え手法と呼ぶ)が提案されている.この手法は係数行列の対角項を非零に変換することができるため,従来のILU分解の利用を可能にする.このことから,近年,対角優位化並替え手法とILU分解などの前処理付きKrylov部分空間法を組み合わせた場合の有効性が報告されている.これに対し,対角優位化並替え手法を用いて,係数行列の対角項が非零になるように変換されれば,前処理でSOR法も適用が可能になる.さらに,対角優位化を図るという性質により,SOR法の収束性も向上すると考えられる.そこで,我々はAbe and Zhang (2005)で提案された可変的前処理の概念をGMRES(m)法に適用し,その前処理には,対角優位化並替え手法を用いて係数行列の対角項が非零になるようにAz=vを同値変換し,SOR法を適用することを試みる.数値実験では,対角項に零をもつ正則な係数行列を取り上げ,対角優位化並替え手法を適用した係数行列に対するILU(0)前処理付きGMRES(m)法,Az=vにGMRES法を用いる可変的前処理付きGMRES(m)法,および Az=vを対角優位化並替え手法で変換した方程式に対して,GMRES法やSOR法を用いる可変的前処理付きGMRES(m)法,さらに,前処理行列やAz=vだけでなく,Ax=bにも対角優位化並替え手法を適用する場合を取り上げ,対角優位化並替え手法を利用した際のSOR法を用いる可変的前処理付きGMRES(m)法の有効性について検証する.
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斎藤 隆泰, 石田 貴之, 福井 卓雄, 廣瀬 壮一
2008 年 2008 巻 p.
20080011
発行日: 2008/05/09
公開日: 2008/05/09
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本論文では粘弾性面外波動問題における演算子積分時間領域境界要素法とその高速多重極法の適用について検討する. 線形粘弾性体の波動問題を時間領域で境界要素解析する際の最大の問題点は, 境界要素解析で必要な時間領域の基本解を解析的に求めることができないという点にある. そのため, 通常の手順で時間領域境界要素法を構成することが難しく, 時間領域境界要素法の影響マトリックスを周波数領域境界要素法の影響マトリックスから積分変換により直接数値的に求める方法や, 時間領域境界要素法の影響関数を周波数領域問題の基本特異解の積分変換により数値的に求める方法が用いられてきた. しかしながら, これらの解析手順は複雑であり, より扱いやすい線形粘弾性波動問題における境界要素法の定式化が望まれる. 近年, 著者らは, 時間に関する繰り込み積分を, ある重み関数を用いた離散化繰り込み積で置き換える手法であるLubichが提案した演算子積分(Operational Quadrature Method)を境界要素法に適用した演算子積分時間領域境界要素法や, 高速多重極法を用いた高速化に関する研究を行ってきた. 演算子積分法を用いた時間領域境界要素法は, 数値繰り込み積分を精度よく安定に計算できること, 定式化が従来の時間領域境界要素法に比べ簡易になるという利点を持つ. さらにこの方法では, 時間領域基本解を直接に必要としない. そのため, 時間領域基本解を数値的に求める必要があった粘弾性波動問題に対しては特に有効であると思われる.本論文では, 線形粘弾性面外波動問題に対して演算子積分時間領域境界要素法の定式化及び適用例を示す.さらに, 計算時間·記憶容量を改善するために高速多重極法を構成する方法についても述べ, 数値解析結果と共に, 本手法の有効性を確認する.
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轟 章, 川上 祐喜
2008 年 2008 巻 p.
20080012
発行日: 2008/05/09
公開日: 2008/05/09
ジャーナル
フリー
次世代の風力発電用翼にはCF/GFハイブリッド構造が期待されている.このハイブリッド構造は炭素繊維複合材とガラス繊維複合材からなり,重量削減と素材コスト削減のトレードオフ関係にある.この論文では,複数目標GA(MOGA)を用いてこの最適化問題をといている.拘束条件としては静的強度,疲労強度,座屈強度,翼端たわみの4種類をあつかっている.これらの計算には実構造のFEM解析が不可欠である.MOGAにおいて実機FEMを拘束条件の評価に用いると計算コストが莫大になるため,ここではKriging応答曲面で拘束条件を近似計算で評価している.Kriging応答曲面は近似計算であり,必ずしも正解ではないので,MOGAで得られたパレート最適化をFEM解析で再評価し,Kriging応答値と誤差が大きい場合にはKrigingを修正する.この修正に必要なデータの判定基準を提案し,この手法を適用してハイブリッド風車翼の複数目標最適化を実施した.その結果,この手法で低計算コストで最適化が可能となった
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赤穂 良輔, 伊井 仁志, 肖 鋒
2008 年 2008 巻 p.
20080013
発行日: 2008/05/28
公開日: 2008/05/28
ジャーナル
フリー
近年,我々は高精度かつRobustな保存保障型の離散化手法であるCIP/Multi-Moment有限体積法の開発を行ってきており,現在までに構造格子および非構造格子への拡張,また時間積分方法としてSemi-Lagrange解法およびEuler解法を用いた定式化の構築に成功している.更に,様々な流体方程式への適用も行われており,良好な結果が得られている.浅水波方程式に対しても,特性に基づいたSemi-Lagrange解法を用いたCIP/Multi-Moment有限体積法による定式化が提案をしている.本論文では,新たな三角形非構造格子を用いた二次元浅水波方程式の解法として,Euler解法に基づくCIP/Multi-Moment有限体積法を用いた定式化を提案する.本手法では,セル内における物理量の積分平均値(VIA:Volume Integrated Average)に加え,三角形の各頂点および各辺の中点における物理量の値(PV:Point Value)をMomentとして定義し,これら計7個のMomentをそれぞれ独立変数として取り扱う.このように複数のMomentを一つのセル内に定義することで、これらを用いて局所的に高次補間関数を構築することが可能となる.本論文では,二次元二次補間関数を構築するが,補間関数の係数を決定する際に用いるマトリックスを解析的に求めるため,補間関数に面積座標を用いる.二次元二次補間関数を構築するのに必要な6つの拘束条件として,セル内のVIA,各頂点のPV,また独立変数としてではなく,セルに配置されたMomentより陰的に評価されたセル中心のx,y方向の勾配を用いている.Multi-Momentの概念に基づく手法では種類の異なるMomentに対しそれぞれ異なる定式化の元で時間発展させることができる.VIAに対しては保存則に則したFlux-Formの定式化を行うことで,保存を保障させた時間発展を行い,PVに対しては離散点において微係数を高精度かつ適合する様に評価する.具体的には微分値に対する局所的なRiemann問題を考慮することで支配方程式に則した定式化を行う.更に,海底勾配項をSource項として用いる際にC-Propertyと呼ばれる運動方程式の流束の空間微分項とSource項の間に成り立つ平衡状態を保持した定式化方法について提案する.具体的には水深と海底の起伏を加算した値である全水深を定義し,全水深に対して離散化手法を適用することで,C-Propertyを保持した定式化を行っている.本手法の検証を行うため,次に示す3種類のベンチマークテストを行った.まず三角形非構造格子への拡張の妥当性を示すため円柱ダム崩壊問題を行い,方向依存性が小さくまた衝撃波を正確な位置でシャープに捉えた結果を得た.次に障害物を含む場合のベンチマークテストとして開口部があるダム崩壊問題を行い,水深の等高線図および開口部付近の水深から評価して定性的に妥当な結果を得ることに成功した.最後に二次元におけるSource項の定式化に対する妥当性を示すために広く用いられる隆起を越す微小擾乱問題を行ったところ,非物理的な振動が見られない結果を得ることに成功し,先に述べたC-Propertyを保持した定式化であることを示した.本論文で提案したEuler解法に基づくCIP/Multi-Moment有限体積法は高精度かつRobustな計算手法であり,浅水波方程式に対する本定式化を用いることで河川や海岸における水面の挙動を高精度かつ高解像度に捉えることのできるシミュレーターを構築する事が可能になるだろう.
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診療支援システムへ向けて
山川 優樹, 田村 崇, 重光 竜二, 依田 信裕, 末永 華子, 川田 哲男, 佐々木 啓一, 池田 清宏
2008 年 2008 巻 p.
20080014
発行日: 2008/06/05
公開日: 2008/06/05
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本論文では,歯科診断·診療支援ツールとしてのインプラント周辺骨の応力解析システムを構築した.個々の要素技術の高度化よりも,システム全体としての補綴歯科臨床ニーズへの適応性に重点を置いた.CAE/CADソフトウェアの活用により,簡便な手続きによりCT画像に基づいて患者個々の特性を反映した顎骨·インプラントFEM解析モデルを作成し,応力解析を実施した.生体内実測された咬合機能時の荷重データを用いることにより,患者の個体差を反映した全体解析を行うことに成功した.また,応力解析の結果を評価するための簡便な評価指標を提案し,インプラント本数·埋入方向·直径の影響など,インプラント臨床で問題となる幾つかの代表的な因子について力学的観点から定量的な影響評価を試み,歯科診療支援ツールとしての適用性を検証した.
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近藤 雅裕, 越塚 誠一
2008 年 2008 巻 p.
20080015
発行日: 2008/06/05
公開日: 2008/06/05
ジャーナル
フリー
MPS法は粒子法の一つで, 自由表面を含む非圧縮性流体の解析手法として研究が行われてきている. しかし, 計算される圧力が不自然な数値振動を含んだものとなる問題がある. 本研究では, 圧力計算のためのポアソン方程式のソース項の定式化を新たに提案した. 従来のソース項を3つに分解し, それぞれの項の役割を解明し, 適切に緩和することによって数値振動を抑制した. 本手法を用いて, 静水圧問題およびダム崩壊問題において滑らかな圧力が得られた.
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原田 隆宏, 政家 一誠, 越塚 誠一, 河口 洋一郎
2008 年 2008 巻 p.
20080016
発行日: 2008年
公開日: 2008/06/06
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フリー
本研究ではGraphics Processing Unit (GPU)上での粒子法シミュレーションをさらに高速化する手法を提案する.スライスグリッドは粒子法の計算のボトルネックである近傍粒子探索を効率化するだけでなく,計算効率も向上させるデータ構造であるが,既存研究はグラフィックスAPIを用いた実装を行なっており,一般的なストリームプロセッサ上でも有用であるかは不明確であった.そこで本研究ではまずスライスグリッドをCompute Unified Device Architecture (CUDA)を用いた実装方法を開発し,より一般的なストリームプロセッサ上での実装を示す.また本論文ではデータの時間軸上でのコヒレンシを利用したGPU上でのブロックトランジションソートを提案し,これを用いて粒子法シミュレーションのデータの空間局所性を高めて更なる高速化をはかる.そしてDistinct Element Method (DEM)を本手法を用いて実装し,近傍粒子探索を約3倍高速化し,計算全体では約1.5倍高速化した.
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丸岡 晃, 小保内 啓太, 奥村 弘
2008 年 2008 巻 p.
20080017
発行日: 2008/07/01
公開日: 2008/07/01
ジャーナル
フリー
流れ問題の支配方程式には,移流項と拡散項が含まれ,そのどちらかが卓越するかによって流れの特性が変化する.流れ問題の数値計算では,その特性に応じて適切な手法を選択する必要がある.特に移流が卓越する場合,移流項に対して中心差分的近似を行うと解が不安定になりやすく,これを解決するためにさまざまな手法が提案されている.これらの手法を大きく分類すると,風上法と特性法にわけられる.本論文では,近年さまざまな高精度な手法が開発されている特性法に着目する.特性法に基づく代表的な手法には,風上側の物理量の分布を局所Hermite補間によって近似し,semi-Lagrange法によって移流計算を行うCIP(cubic-interpolated pseudoparticle/propagation)法がある.また,有限要素法では,時間微分項と移流項をLagrange微分の形で表し,その項を差分近似し,Galerkin法によって離散化する特性有限要素法(characteristic/Lagrange Galerkin method)がある.著者らは,この二つの手法に着目し,移流計算と非移流計算を分離し,移流計算を事前に行うsemi-Lagrange法を特性有限要素法に組み込んだSLG(semi-Lagrange Galerkin)法を提案した.SLG法では,物理量の導関数値を自由度に含むHermite型要素を用いることによって,移流·非移流計算ともに高精度化が図られている.一方,本論文では,semi-Lagrange法を用いず,直接的にHermite型要素を用いた特性有限要素法(以下,HCG(Hermitian characteristic Galerkin)法と略す)を提案する.特性有限要素法では,ある仮想流体粒子の軌跡(特性曲線)がその起点の関数となり,特性曲線上の上流点の位置での物理量が合成関数として表されるため,定式化に必要な積分に合成関数が含まれる.ただし,要素ごとの合成関数が複数の要素にまたがるため,その積分に対して数値積分を行うなどの何らかの近似が必要になる.一方,SLG法では,semi-Lagrange法によって移流計算を分離し,事前に上流点の位置での物理量を起点に投影していることから,Galerkin法によって非移流計算を行う段階で,合成関数の含まれる積分項が現れない.そこで,本論文では,HCG法においても合成関数の扱いをSLG法と同様に簡略化するために,上流点の位置においてもHermite型要素を構築することによって,要素ごとの合成関数を1つの多項式として近似する.また,合成関数の項を含めた定式化に必要な全ての積分計算に対して,フリーの数式処理システムMaximaを利用し,解析的に積分を行う.以上により,HCG法においても,同様のHermite型要素を用いたSLG法と同程度の精度·計算効率が期待できるものと考えられる.本論文では,2次元移流拡散方程式に対して,Rui,Tabataによる時間2次精度の特性有限要素法に,各頂点での関数値と1階導関数値および要素の重心での関数値を自由度とする10自由度のHermite型三角形3次要素を用いたHCG法を開発する.また,せん断流れ場と回転流れ場の数値実験を行い,計算精度を評価することによって,HCG法の有効性を明らかにする.
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—有限要素法を用いた耐震解析への適用—
木野 千晶, 鈴木 喜雄, 西田 明美, 櫛田 慶幸, 林 幸子, 中島 憲宏
2008 年 2008 巻 p.
20080018
発行日: 2008/07/21
公開日: 2008/07/21
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計算科学技術の進歩·計算機性能の大幅な向上により大規模かつ様々な物理現象を考慮した複雑な数値シミュレーションが可能となっている.数値シミュレーションは実条件·実環境下で実験することはコスト面·安全面から不可能な事象の解明にも有効であることから,その必要性·重要性は年々増している.例えば,日本原子力研究開発機構システム計算科学センターでは,実振動台では取り扱えない原子力施設全体規模の3次元振動シミュレーションを用いた耐震性評価に関する研究開発(3次元仮想振動台)に取り組んでいる.このような大規模かつ複雑な数値シミュレーションの場合,人間の認識能力の限界から,解析条件の設定ミスや解析手法の誤用,耐震評価における危険部位の誤認など,多数のミスや見落としが発生する可能性を持っている.このような数値シミュレーションが対象とする事象は実験では検証不可能なものが多く,解析結果の検証においてわずかなミスや見落としも許されない.よって,大規模·複雑数値シミュレーションから得られる結果の妥当性·信頼性を向上させ,工学的に有意味な情報を見落とすことなく確実に抽出することを可能とするデータ解析手法の確立は,近年の数値シミュレーション工学の大きな課題と言える.本研究では,データ解析プロセスにおいて研究者の見落としを低減し,データ全体を隅々まで検証することを可能とするために,人間の認識能力の一部を情報科学技術により代用した“認識能力を備えたデータ解析システム”Cognitive methodology based Data Analysis System (CDAS)の概念設計を行った.CDASを実現するためには,情報科学技術によって研究者の認識能力を代行できる手法の考案が課題となる.よって,本論文ではまず数値シミュレーションにおけるデータ解析プロセスを体系的に検討し,妥当性評価のためのVV機能,有意味性評価のためのDD機能,加えてVV機能·DD機能から得られた情報を統合·解釈するためのSynthesis機能を備える必要があること,データ解析に用いる工学情報として設計情報·解析条件·結果データに対応する必要があること,評価·判断のための階層構造に対応する必要があることを見出した.次にCDAS概念を満たす基本機能を具体的に実装するため,VV機能およびDD機能は分散処理システムとし,Synthesis機能と併せたシステム構成図を設計し,評価·判断機能として必要な情報を「観点」概念により構築する妥当性·有意味性の判断システム,および解釈機能として科学的知見を数値化し解釈ルールを構築する手法を提案した.さらに,CDASを有限要素法による構造解析の結果データに適用することでその実現可能性を確認した.
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—局所開放系を仮定したモデルの導出とその数値シミュレーション—
往岸 達也, 梅村 章
2008 年 2008 巻 p.
20080019
発行日: 2008/07/24
公開日: 2008/07/24
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埋蔵量が多く安価な石炭は,現在もなお有用な1次エネルギー源であり,世界の採炭地では,今も操業が続いている.ガスを多く含有する炭層では,しばしばガス突出が発生し,大きな災害をもたらす.ガス突出は,地圧またはガス圧によって1次破壊が生じた炭層中の微小空間に,メタン等の石炭吸着ガスが遊離し,高圧ガス帯の力学的平衡が破れ,2次破壊として石炭塊とガスとの混相媒体が一挙に突出する力学現象である.保安技術の確立を図るためには,この現象の力学的メカニズムを把握し,災害の予知,防止技術の向上を果たすことが望まれる.しかしガス突出現象では,炭層内のパラメータが多岐にわたり,また混相媒体の運動に対し,ガス脱着等の特異な物理現象が関与するため,例えば連続体近似による計算工学的解析は困難であった.先に筆者らは,栓列流モデルと称する力学モデルを提案し,ガス突出現象の動力学的特性について論じた.このモデルは,1次破壊が進行した炭層の部分系を,固体部分と気体部分に集中化させ,2次破壊である石炭塊とガスとの突出現象を,ラグランジェ的に追跡するモデルである.現象の特性として一次元運動として記述できる場合,このモデルは,あたかも管中に固体栓と気体栓を交互に並べた栓列で構成される.筆者らは前報において,部分系を孤立系と仮定し解析を行った.しかし孤立系の仮定が通用しないタイプのガス突出現象も存在する.この要因は2つあり,1つは現象進行中の石炭からのガスの脱着であり,他の1つは部分系間でのガス流の存在である.本報では,これらのタイプのガス突出現象を記述するため,栓列流モデルの部分系を開放系に拡張し,ガス脱着およびガス流を考慮するモデルに改め,新たに加わったパラメータによる,ガス突出現象の動力学的特性について論じた.本報では,先ずガス脱着,およびガス透過という概念で導入されるガス流の影響を記述する,支配方程式の導出を行った.次に計算に必要な幾つかの条件を提示し,具体的な計算方法について紹介した.この後このモデルによるガス突出現象のシミュレーションを実行し,系を支配する開放系パラメータの作用を中心に,最大運動固体栓数および最大突出固体栓数等の特性,さらに破壊面進行速度および突出持続時間等の特性の把握を行った.この結果ガス突出現象に対する,ガス脱着,ガス透過の果たす基本的な作用を理解した.最後に他者が行ったガス突出の室内実験に対し,栓列流モデル解析結果との比較検討を行い,概ね実現象を記述することを確認した.
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入部 綱清, 藤澤 智光, 越塚 誠一
2008 年 2008 巻 p.
20080020
発行日: 2008/07/29
公開日: 2008/07/29
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本研究では新しい粒子法の並列手法として,ノード間のデータの通信量削減のため,バケットを用いた粒子番号のリナンバリング方法と通信リストの作成方法が提案された.バケットを用いた粒子番号のリナンバリングでは,粒子番号をバケットの一軸方向から並べ替えることで,ノード間で通信量を削減できることが示された.また,リナンバリングに費やす時間は,1タイムステップに対して0.2%程度であり,2,000,000粒子を用いた例では計算時間の割合が少ないことが定量的に示された.通信リストについては通信回数削減の観点から,通信を行う粒子番号の最大値と最小値を求め,その間の粒子番号をすべて通信するような通信リストの作成方法が提案された.並列性能評価として,並列加速率は2ノードで1.90倍,4ノードで3.37倍であり,既往の研究と比較し定量的に良好な結果が得られた.数値解析例として,6,300,000粒子を用いて臨海地域の津波解析を行い,大規模解析が可能であることが示された.
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斎藤 隆泰, 福井 卓雄, 廣瀬 壮一, 石田 貴之
2008 年 2008 巻 p.
20080021
発行日: 2008/08/25
公開日: 2008/08/25
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本論文では粘弾性面内波動問題における演算子積分時間領域境界要素法とその高速多重極法の適用について検討する.線形粘弾性体の波動問題を時間領域で境界要素解析する際の最大の問題点は,境界要素解析で必要な時間領域の基本解を解析的に求めることができないという点にある.そのため,通常の手順で時間領域境界要素法を構成することが難しく,時間領域境界要素法の影響マトリックスを周波数領域境界要素法の影響マトリックスから積分変換により直接数値的に求める方法や,時間領域境界要素法の影響関数を周波数領域問題の基本特異解の積分変換により数値的に求める方法が用いられてきた.しかしながら,これらの解析手順は複雑であり,より扱いやすい線形粘弾性波動問題における境界要素法の定式化が望まれる.このような中,近年,著者らはLubichが提案した演算子積分法(Operational Quadrature Method)を時間領域境界要素法に適用した演算子積分時間領域境界要素法と高速多重極法を用いたその高速化に関する研究を行ってきた.この型の時間領域境界要素法では,直接に時間領域基本解を用いないため,線形粘弾性波動問題のような閉じた形で時間領域基本解を求めることができない問題に対しては,特に有効であると思われる.本論文では,前論文での面外波動問題の報告をもとに,粘弾性面内波動問題における演算子積分時間領域境界要素について解説する.さらに,高速多重極法の適用法についても述べ,数値解析例と共に本手法の有効性を確認する.
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野々村 拓, 村中 洋子, 藤井 孝藏
2008 年 2008 巻 p.
20080022
発行日: 2008/08/26
公開日: 2008/08/26
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エッジトーン現象を高次精度コンパクト差分法とルンゲクッタを用いて解析した.得られた流れ場の特徴は、実験で得られたものと良い一致を示した.エッジトーンの周波数はプロファイルによって大きく変化することがわかった.また圧縮性効果によって、高マッハ数のエッジトーンの周波数は線形に予想した周波数に比べて低くなることがわかった.この結果はエッジトーンがフィードバックループメカニズムで説明できることを示している.また詳細な擾乱速度の解析をおこなった.擾乱速度は非線形をもっており、出口付近で速く、エッジ付近で遅くなることがわかった.この結果からPowellが線形な擾乱速度を仮定したモデルの中の位相誤差0.25はこの非線形性の効果を含んでいたものであり、非線形性を考慮に入れた場合の真の位相誤差は-0.2であることがわかった.これらの解析結果はエッジトーン現象を制御する際などに非常に有効なデータとなることが期待される.
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尾上 勇介, 藤野 清次, 中嶋 徳正
2008 年 2008 巻 p.
20080023
発行日: 2008/09/23
公開日: 2008/09/23
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本研究では,IDR(s)法のタイプの異なる2種類の前処理について研究を行った.すなわち,導出が簡単で算法もシンプルな前処理(以下,簡便な前処理と呼ぶ)と中間ベクトルの変換も含めて導出が比較的難しい前処理(以下,重厚な前処理と呼ぶ)の2種類を研究対象とした.簡便な前処理では,収束判定で使う残差の式の中に前処理行列が含まれ,その結果収束したときの近似解の精度が十分でない危険性があることを指摘する.重厚な前処理では,前進·後退代入の演算量を理論的に関数の形で見積もる.そして,重厚な前処理において,右前処理の演算量が,両側,左前処理の演算量に比べて少ないことを明らかにする.
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寺田 賢二郎, 犬飼 壮典, 濱名 康彰, 見寄 明男, 平山 紀夫
2008 年 2008 巻 p.
20080024
発行日: 2008/10/02
公開日: 2008/10/02
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本論文は,周期的なミクロ構造(ユニットセル)を有する繊維強化複合材料について,そのマクロ材料モデルとして異方性超弾性構成則を仮定し,均質化法に基づく数値材料実験の適用により,そのミクロ構造の解析を通して仮定したマクロ構成則の材料パラメータを同定する手法を提案したものである.提案手法では,数値材料実験により数値データとして得られる応力とひずみテンソルのすべての成分を用いて最小二乗法を適用することから,本研究ではこれをテンソルベースのパラメータ同定手法と呼んでいる.本研究ではまず,均質化法に基づく数値材料試験の考え方と方法の概要を述べている.特に,外部節点を制御することでユニットセルの任意のマクロ変形·応力パターンに対応したミクロ構造解析の方法を概説している.次に,異方性超弾性体の構成則のパラメータ同定に際して行うべき数値材料試験ケース,すなわちミクロ解析の境界条件として与える独立なマクロ変形·応力の制御パターンを提示している.そして,各試験ケース,各ミクロ解析の荷重増分ステップで算出されるマクロ応力とマクロ変形を表すテンソル場の全成分の二乗誤差を最小にする材料パラメータ同定法を提案している.具体的には,ユニットセルの6つの独立な変形パターンに対応するマクロ変形·応力を負荷ケースとする数値材料試験を行い,各試験(すなわち,ミクロ解析)のケース,およびミクロ解析の各荷重増分ステップで算出されるマクロ第2PK応力テンソルとマクロ右Cauchy-Greeen変形テンソルの全成分の二乗誤差を最小にする材料パラメータ同定法を提案している.最後に,3種類の具体的なユニットセルモデルに対する数値計算例を通して,提案手法によればある程度の精度で既存の異方性超弾性構成則のパラメータを同定できることを例証する.この数値計算例では,ユニットセルモデルの種類によって数値材料試験と,採用したマクロ異方性超弾性構成則の応答との誤差の程度が異なる結果となっているが,提案手法は概ね良好な近似を与えるパラメータを同定しうることが示されている.また,このときの誤差の原因は,採用した構成則の関数形によると考えられ,より精度のよい異方性超弾性体の材料挙動を得るにはより適切な構成則の採用が必須であると結論付けている.この点については,より詳細に検証する必要があるが,現存する構成モデルをCAEの実務に適用する,あるいは更に一歩進んでマルチスケールCAEの枠組みへの展開を図る場合には,本研究で提案した手法は有用なツールと成りうるものと考察している.
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田中 正幸, 益永 孝幸
2008 年 2008 巻 p.
20080025
発行日: 2008/10/08
公開日: 2008/10/08
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粒子法の1つであるMPS(Moving Particle Semi-implicit)法では時間的にも空間的にも圧力の振動が激しいという問題があった.本研究では2通りの非圧縮条件を組み合わせることにより時間的にも空間的にも滑らかな圧力が得られる手法を提案する.また,疑似圧縮性効果と非圧縮条件におけるパラメータを導入することにより,非圧縮条件を満たしたまま安定にかつ効率良く計算できることを示す.
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稲垣 健太, 酒井 幹夫, 越塚 誠一
2008 年 2008 巻 p.
20080026
発行日: 2008/10/09
公開日: 2008/10/09
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日本では,大規模な地震が多く発生しており,これにより構造物の倒壊などの災害が起こる.そのため,構造物の設計において,地震を考慮した評価が必要になる.これまで,地震応答解析手法がいくつか開発されており,有限要素法を用いた解析や有限要素法/境界要素法の連成解析,個別要素法を用いた解析がなされている.これらの手法では,地震時において,通常の建築物や構造物のように,異なる物性の材料で構成される部品間の衝突を効率よく計算できなかった.現在,剛性が著しく異なる材料からなる構造物について,衝突を含む地震応答解析を効率的に行う手法の開発が望まれている.近年,越塚により,Moving Particle Semi-implicit(以下,MPSと記す)法が提案された.MPS法は,これまで困難であった構造物の大変形を取り扱うことができるばかりでなく,構造物同士の接触もメッシュを用いる手法に比べて容易に取り扱うことができる.そこで,我々は,剛性が著しく異なる材料からなる構造物について,衝突を含む地震応答解析を効率的に行う手法として,剛体—弾性体連成手法を開発する.本手法では,ヤング率の高い物体を剛体で近似することにより,計算の高速化を図ることができる.本研究では,原子力発電所の使用済燃料を中間的に貯蔵するコンクリートキャスクを対象とする.これは,コンクリートキャスクは,地震応答に係わる多くの実験と解析がなされており,データが豊富なためである.コンクリートキャスクは,主に鉄筋コンクリート製貯蔵容器および金属製キャニスタから構成される.コンクリートキャスクにおいて,除熱性能を確保するためにキャニスタと貯蔵容器の間に空隙が設けられる.また,キャニスタ内部には,熱膨張を考慮するため,構造物間に空隙が設けられている.地震応答のような大きな揺れや変位を含む挙動はこれらの空隙,いわゆるガタの有無に大きく影響されると考えられる.我々はMPS法を用いた弾性体-剛体連成手法を2次元でモデル化したコンクリートキャスクに適用し,従来の解析や実験結果と比較して,その妥当性を検証する.入力する地震波には,起こりうる最大規模の地震を想定して,1995年兵庫県南部地震の神戸海洋気象台における観測地震波を用いる.神戸波の地震応答解析結果を既存の数値解析結果と比較し,本手法の妥当性を検証する.これらの解析において,構造物が拘束されていない場合とコンクリートキャスク内部の構造物を拘束して相対位置が変化しない場合の解析を実行し,ガタの影響を評価する.
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中尾 昌広, 折戸 俊彦, 山崎 弘貴, 廣安 知之, 三木 光範
2008 年 2008 巻 p.
20080027
発行日: 2008/10/10
公開日: 2008/10/10
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Distributed Network Application System(DNAS)は,グリッド上の計算資源情報の取得を行い,かつアプリケーション間のデータ交換を行うためのP2P指向ミドルウェアである.DNASはフォールトトレランスのための動的な通信トポロジを形成し,グリッド上の計算資源情報をユーザに提供することができる.ユーザはDNASを用いることで,計算資源の動的な変化に対応したアプリケーションを作成することが可能になる.本稿ではDNASの設計および実装を行った.また,DNAS上で動作するアプリケーションとして最大数値を探索するアプリケーションを実装し,DNASの基本性能の性能評価を行った.
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橋本 学, 小野 謙二, 野口 裕久
2008 年 2008 巻 p.
20080028
発行日: 2008/10/27
公開日: 2008/10/27
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薄い弾性構造が高速流によって変形するエアバッグ展開のような大変形FSI (Fluid-Structure Interaction) 問題を解くことは,重要な研究課題の一つである.本研究では,大変形FSI問題を解析するために,固定メッシュに基づく流体構造連成解析手法に着目し,大変形する界面を零等値面として固定メッシュ上で表現することができるレベルセット関数を利用する.レベルセット関数を利用した固定メッシュに基づくpartitioned solution method (iterative staggered scheme) を構築し,既存する高度な流体ソルバーと構造ソルバーを組み合わせる.流体にはCIP有限要素法を用い,構造には有限変位増分および有限回転増分を考慮した構造要素を用いる.本研究では,界面の変形に応じて,レベルセット関数を更新し,界面での運動学的条件を扱うことが重要となる.そこで,レベルセット仮想粒子による界面処理法を提案する.この仮想粒子は,界面の法線方向に配置される.提案した連成解析手法は大変形FSI問題に対して十分な精度と安定性を有することを検証する.
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車谷 麻緒, 寺田 賢二郎, 奥村 弘
2008 年 2008 巻 p.
20080029
発行日: 2008/12/01
公開日: 2008/12/01
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多孔質体では,孔の体積率が同じであっても,孔の寸法·数量が異なれば単位体積当たりの表面積の割合が異なるので,例えば,熱の拡散とその変形問題では,多孔性の大小に伴って応答が異なるといった,一種の「寸法効果」が発現することが知られている.そこで本研究では,多孔質体ミクロスケールでの寸法と熱伝達を考慮した,均質化法に基づく熱·固体変形のマルチスケール·マルチフィジックス解析手法を開発し,単一スケールの直接解析との比較を通じて,多孔性の異なる多孔質体に対する解析精度や計算効率を検証する.まず,対象とする問題設定を述べた後,多孔質体ミクロスケールでの寸法と熱伝達を考慮した,均質化法に基づく熱·固体変形のマルチスケール·マルチフィジックス問題の定式化を示す.そして,微視的寸法(多孔性)の異なる多孔質体の非定常熱拡散·固体変形問題を対象に,単一スケールの直接解析との比較を通じて,均質化法に基づく本解析手法の解析精度や計算効率を検証し,妥当性·有効性について考察する.
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野々村 拓, 村中 洋子, 藤井 孝藏
2008 年 2008 巻 p.
20080030
発行日: 2008/12/02
公開日: 2008/12/02
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エッジトーンの数値解析に対する、境界条件の影響を調べた.数値解析には6次精度コンパクトスキームとルンゲクッタスキームを用いた.ジェット出口のノズルリップ厚さを厚くすることで、エッジトーン現象が強められることがわかった.これはノズルリップで反射される音波の量を増加させ、フィードバックループを強めるためと考えられる.このことから数値解析においてはノズルリップ周辺の幾何学形状を正しく再現することが重要であることが明らかとなった.次にジェットのプロファイルを変えた場合の解析を行った.最大速度を一定にして境界層を厚くすることで、ステージが下がる、周波数が低くなるなど、速度を小さくした場合と同様の効果が得られた.境界層の厚いプロファイルは平均速度が小さくなっているため、エッジトーン現象に対して平均速度の効果が大きいと考えられる. 逆に平均速度を一定にして境界層を厚くすることで、ステージの変化は見られなかったが、周波数が高くなった.すなわち、平均速度だけでなくプロファイルも周波数に影響していることがわかった.これらのことからジェットのプロファイルもエッジトーンの周波数、ステージに大きく影響しており、適切な数値解析をする際にはプロファイルを正しく再現することが重要であることがわかった.さらに上述の知見からエッジトーンの平均速度によってステージが決まることが示唆された.また周波数に関しては平均速度およびプロファイルの2つが影響していることがわかった.
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稲垣 健太, 酒井 幹夫, 越塚 誠一
2008 年 2008 巻 p.
20080031
発行日: 2008/12/09
公開日: 2008/12/09
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近年,Moving Particle Semi-implicit(MPS)法やSmoothed Particle Hydrodynamics(SPH)法に代表される粒子法が開発され,有限要素法で困難であった様々な解析が可能となりつつある。越塚により開発されたMPS法は,大変形の解析ばかりでなく,接触や破壊まで容易に取り扱うことができる.MPS法は物体を粒子の集合として表現し近傍との接続関係が粒子間の距離によってのみ決定されるため,モデルの作成が容易であるというメリットもある。構造物の事故解析などにおいては材料の大変形を取り扱うため塑性領域での振る舞いを解析する必要がある.MPS法においてはこれまでに近澤らが弾塑性解析手法を開発している。近澤らの手法は支配方程式をマトリクスで記述して静的な釣り合いを反復計算で解くものであるが,物性値の条件によっては収束性が不安定になるという問題があった。本研究ではこれらの問題を解決するために反復計算を行わない,MPS法による弾塑性解析手法を開発する。本手法ではまず粒子間の相対変位からひずみテンソルを計算する。相対変位を計算する際に剛体成分をあらかじめ除去することでひずみを精度よく計算することができる。応力とひずみの関係式として,Von-misesの降伏関数を仮定した基礎式を用い,elastic predictor-radial corrector法によってこれを解き応力を計算する。得られた応力を偏差応力成分と圧力成分に分け、それぞれの粒子の加速度を計算する。圧力成分による加速度を計算する際に粒子間に反発力のみが働くようにモデル化することでTensile instabilityを回避した。本手法は完全陽解法であり反復計算などを行う必要がない。本手法を,内圧を受ける円管の弾塑性解析に適用し,理論解と比較してその妥当性を検証した。計算には2種類の異なる初期粒子配置を用いてその違いの影響を調査した。さらに,本手法を圧縮荷重問題のそれぞれに対して適用し,正しい結果が得られることを確認した。
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野津 裕史
2008 年 2008 巻 p.
20080032
発行日: 2008/12/26
公開日: 2008/12/26
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We apply a newly developed characteristic-curve finite element scheme to cavity flow problems. The scheme is useful for large scale computation, because P1/P1 element is employed and the matrix of resulting linear system is symmetric. Numerical results of two- and three-dimensional cavity flow problems are presented. Three types of the Dirichlet boundary condition, discontinuous,
C0 and
C1 continuous ones, are treated, and the difference of the solutions is discussed.
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