抄録
GPUの様な共有メモリ型超並列計算機を用いて個別要素法 (DEM) を高速化するためには,並列プロセスによるメモリへの書き込み競合を防ぐアルゴリズムが必要である.本研究では,接触候補ペアリストの作成および接触力の総和計算を並列実行する際に生じるメモリへの書き込み競合を防止する手法として,1) 粒子番号をセル番号でソートしてペアリストを作成する方法と,2) 接触力参照表を用いて力の総和計算を行う方法を提案した.その結果,粒子回転や表面摩擦,転がり摩擦など,高粒子濃度でのDEMに必要な接触ロジックを持ち合わせることで必然的に計算負荷が大きくなる3次元DEMであっても,CPU計算と比べて最大で50倍程度計算速度が加速された.さらに,倍精度計算の速度が単精度計算と比べて著しく低いGT200ベースのGPUであっても,粒子間距離の計算部分のみを倍精度計算に変更することで,計算時間を単精度計算と比べて1.3倍程度の増加に抑えながら倍精度同等の計算精度が得られるようになった.