日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
CIP有限体積定式化に対するImmersed Boundary法の適用
松本 圭太若島 幸司肖 鋒
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2010 年 2010 巻 p. 20100014

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抄録

本論文では、流体中の固体を取り扱うために,面積分平均値と体積分平均値を基本変数として用いた最も簡単なマルチモーメント有限体積法であるVSIAM3(Volume/Surface Integrated Average based Multi Moment Method)の定式化に対してImmersed Boundary法(IBM)の適用し,そしてその有用性について述べる.IBMとは,固体が与える影響を非圧縮性流体の運動方程式に物体力(momentum forcing),連続の式に発散修正項(mass source/sink)を考慮した定式化をおこなった手法である.物体力は物体境界において境界条件を満たすように与えられる力であり、発散修正項は物体上で保存則を満たすように与えられる.数値計算において複雑形状を取り扱う場合,一般的に非構造格子では,格子生成が非常に複雑であるといわれている.それに対し,IBMではCartesin格子を用いているため,PCのメモリーやCPUを節約することができ格子生成は非常に簡単でき,格子生成が容易である.また,物体力のみを考慮して得た解では,境界を含むセルで保存則は満たさない.発散修正項は,そのセルに対しても保存則を満たさすように連続の式に与えられる.これは,物体を含むセルにおいて流体のみの連続の式となるように与えられる.物体境界の取り扱いにはlevel-set関数を用いる.この方法は格子形状に依存しない方法なので,さまざまな任意形状の物体を取り扱うことができ,多数の物体を扱うことも容易である.また,移動境界問題に対しても,格子の再構築なしで移動する複雑境界を取り扱うことができる.このIBMの有用性を確かめるため,2次元円柱周りの流れ,3次元球周りの流れ,より複雑な形状を用いた流れについて計算を行う.さらに,移動境界問題に対してIBMの拡張を行い,さまざまな数値テストを行った.物体力,保存項それぞれに物体の速度を考慮することで,移動境界の取り扱いを可能にする.数値テストとして,移動する物体によって生じる流れ(円柱のin-lineあるいはcross-flow振動),流体と物体が相互に作用する流れ(Vortex-Induce Vibration)について計算を行った.最後に,熱対流問題に対してもIBMの適用を行い,2次元あるいは3次元に対する有用性について検証する.さまざまな数値テストによって提案した手法が非常に有効であることを確認することができた.今度本手法が多くの工学的分野において流体/固体の相互流れの解析などに対して効果的なツールであることを期待する.

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© 2010 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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