日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
レベルセット法に基づく誘電体メタマテリアルのトポロジー最適化
乙守 正樹山田 崇恭泉井 一浩西脇 眞二Jacob ANDKJÆROle SIGMUND
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2011 年 2011 巻 p. 20110012

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抄録

メタマテリアルは自然界に存在する媒質が通常持たないような電磁的性質を示すように設計された人工媒質であり, 分割リング共鳴器と金属ワイヤで構成される周期構造が, ある特定の周波数に対して負の屈折率を示すことが実験により示されて以来, 短波長化や実用化などに関する多くの研究が行われている. さらに近年では, 金属材料を用いず, 誘電体材料のみで負の特性を実現する誘電体メタマテリアルが提案されており, 製造の容易性や等方性, 広帯域などの特長をもつことにより, その実現が期待されている. メタマテリアルの性能は, ユニットセルの形状や大きさに大きく左右され, そのユニットセルの形状設計は多くの場合, 設計者の勘や経験による試行錯誤に基づいており, 数学的および力学的な根拠に基づいた統一的な設計手法は確立されていないのが現状である.
そこで本研究では, レベルセット法を用いて, 明確な形状表現が可能な誘電体メタマテリアルのトポロジー最適設計手法の構築を行った. まず, レベルセット法による形状表現と, S行列の係数に基づく有効透磁率の算出方法を用いて, 有効透磁率最小化問題, また有効透磁率を所望の値に設計する最適設計問題の定式化を行った. 次に, 最適化問題の定式化に基づき, 有限要素法により電磁場の解析とレベルセット関数の更新を行う誘電体メタマテリアル最適設計問題の最適化アルゴリズムを提案した. さらに, 数値例により, 有効透磁率を最小化させる最適構造, さらに, 所望の有効透磁率を持つ最適構造が求められることを確認した. いずれの最適構造もグレースケールを含まない形状が得られており, 本提案手法により, 工学的に有効で, 明確な最適構造が得られることを示した.

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© 2011 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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