日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
2011 巻
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 張 子賢, サブチェンコ マリヤ, Yixiong Feng, 福久 龍哉, 篠田 淳一, 萩原 一郎
    2011 年 2011 巻 p. 20110001
    発行日: 2011/02/10
    公開日: 2011/02/10
    ジャーナル フリー
    リバースエンジニアリングや計測データからの3Dモデルの再構成(対象となる物理モデルから得られる高密度な点群データを3Dのポリゴンメッシュに変換して表現すること)は,コンピュータグラフィックス,ラピッドプロトタイピングなどの広範な領域で応用されるようになってきている.これらにより,最近の3DレーザスキャナやX線計測技術における効率性と信頼性が大きく向上している.リバースエンジニアリングには2種類の手順がよく使われている.その一つが点群を基にしたモデルの再構成であり,もう一つがポリゴンメッシュを基にしたものである.これら2つの手順に対して,メッシュのセグメンテーションは非常に重要なものとなっている.それぞれが個々の曲面に近似されるように,計測データを意味のある独立したセグメントに分割することにより,後工程である,形状認識,特徴や構造の抽出そして曲面のパラメータ化のために必要となるデータを提供することができる.YaoらおよびYamauchiらは,解析的曲面に焦点を当て,セグメントの同定のための効率的な判定基準を提案している.しかしながら,3つの曲面型にしか対応しておらず十分なものとはいえなかった.また,Vancoらによる手法では,依然としてアルゴリズムの安定性に改良が必要とされる.本研究では,平面;円柱面;円錐曲面;球面;円環面;押し出し曲面;線織面;フィレットといった曲面の分類に従って,表面メッシュセグメントの曲面型を同定する自動セグメンテーション技術を提案する.この技術は,シャープエッジの評価と領域成長法を基にしている.Vieiraらは,領域成長法を基に,ノイズの多い3D曲面メッシュに対するセグメンテーション法を提案している.そのアプローチと比較して,本手法では,前処理としてセグメントの境界(シャープエッジ),これは結果として滑らかな境界となるものであるが,の抽出を行い,そしてさらにセグメントの表面の同定に特に焦点を当てている.提案手法では,対象となるメッシュのノイズレベルが正確な結果を得るための重要な鍵となる.そして本アルゴリズムでは,ノイズレベルの評価がその出発点となる.Vieiraらは,計測点群と局所的近似された曲面との距離を計算することによる,3Dメッシュに対するノイズレベルの評価法を提案している.本手法では,ノイズレベルの評価法にこの手法を採用している.これにより,対象となるメッシュは,ノイズの多いメッシュと滑らかなメッシュに分類される.滑らかなメッシュに対しては,本提案アルゴリズムが直接適用される.一方,ノイズの多いメッシュに対しては,計測点群が持つノイズの影響を軽減するためにラプラシアンスムージング法が適用される.一般にラプラシアンスムージング法を用いることによって,対象となるモデルのシャープエッジが平滑化されてしまうが,これを防ぐために,Jiらによる特徴保持アルゴリズムを適用している.そして,各節点の近傍の法線ベクトルと主曲率がシャープエッジを同定するために計算される.シャープエッジはメッシュセグメントを正確に抽出するための基本的な分割を可能にしてくれる.各セグメントのガウス写像の次元と曲面をお互いに区別するための判定条件によって,セグメントが抽出される順序が決定され,セグメンテーションの自動化が実現される.本手法のメリットは,滑らかな境界曲線を用いて,正確にセグメントの表面を同定できることにある.提案アルゴリズムの検証には,2.7GHZのCPUを持つコンピュータを固定して用いている.許容可能な計算時間と良好な結果が本手法の信頼性を証明している.
  • 大地 雅俊, 山田 祥徳, 越塚 誠一, 酒井 幹夫
    2011 年 2011 巻 p. 20110002
    発行日: 2011/02/21
    公開日: 2011/02/21
    ジャーナル フリー
    An explicit MPS algorithm is much faster to analyze free surface flow than the traditional semi-implicit algorithm. However, validation of the algorithm has not been studied enough. This paper shows comparisons about numerical stability and accuracy of pressure the between explicit and semi-implicit MPS in a hydrostatic pressure problem and a dam break problem. Pressure oscillations by the explicit MPS is as the same lebel as those of the semi-implicit MPS. In the hydrostatic pressure problem, the time average of pressure is equal to its theoretical value. With Mach number 0.2, compressibility is about 1.0 percent from the initial state. It is shown by both of the calculation and theory. The explicit MPS is as accurate as the semi-implicit MPS with less calculation costs.
  • 澤田 有弘, 長濱 俊, 佐々木 信也, 手塚 明
    2011 年 2011 巻 p. 20110003
    発行日: 2011/03/18
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    本稿では,CAE(Computer-aided engineering)やSBD(Simulation-based design)に適した計算手法の開発という視点から,CAEに従事する人々がより自由に使え,詳細解析志向よりも,設計改善インスピレーションや設計の大まかな方向性・指針を得ることに注力したCAEソフトウェアの基盤技術に関する研究を報告する.そして,その構成要素の一つとして,X-FEMに基づく流体解析手法と流体構造連成解析手法の形状モデリングにおける幾何学的利点を活用した設計応用型の流体解析フレームワークを提案する. 本解析フレームワークは現段階では未完成の部分を多く含むが,物体の三次元形状測定やCADとの連結を図った解析例を示し,将来展望を含めた複数の活用例を示す.
  • (第1報: 一般形の定式化と理論誤差解析)
    柴沼 一樹, 宇都宮 智昭, 粟飯原 周二
    2011 年 2011 巻 p. 20110004
    発行日: 2011/04/05
    公開日: 2011/04/05
    ジャーナル フリー
    XFEMはFEMの枠組みにおいて局所的にエンリッチメントという高度な近似を構成する手法である.しかし,XFEM近似において不可避的に発生するエンリッチメントを部分的に含む要素 (BE) に起因する解析精度の低下が指摘された.このBEの問題に対して,重み付きXFEMを用いた場合,数値解析精度には標準のXFEMと比較して効果的な改善がみられるが,数値解析結果を詳細に確認すると,BEの問題の影響がまだ完全には解消していないことがわかる.本研究ではまず,この重み付きXFEMの近似法における不完全性を理論的に証明した.さらに,著者らの研究成果の修正として,あらためてPUFEMの厳密な適用例としてXFEMの再定式化 (PU-XFEM) を行い,その一般形を示した.理論的な誤差解析の結果,PU-XFEMに基づく近似法はBEの問題を解決し,XFEMの本質的な特徴を有する定式化であることが示された.
  • 山口 誉夫, 笹島 学, 渡辺 実良, 平野 雄大, 永井 健一, 丸山 真一
    2011 年 2011 巻 p. 20110005
    発行日: 2011/04/18
    公開日: 2011/04/18
    ジャーナル フリー
    本論では,複素ばね定数を有する非線形ばねで多点支持したフレーム構造の共振応答をモード歪みエネルギー法を援用した有限要素法(以降,FEM)により解析する方法を提案する.この時,非線形離散化方程式を,線形固有振動形を基準座標とする運動方程式に変換し,大規模自由度問題の応答を自由度縮小し高速に解析する式を導出した.また,フレーム構造物と集中ばねで異なる履歴減衰を持つ条件を取り扱えるようにした.この場合,それぞれの変形の割合に応じて共振ごとに異なるモード減衰を持つことを考慮できる.これはFEMの運動方程式の複素固有値問題にモード歪みエネルギー法を援用し,各モードで弾性フレームと集中ばねが分担する歪みエネルギーと材料減衰からモード減衰を近似計算し,線形固有振動形を基準座標とする非線形運動方程式に組み込み定式化した.この提案解析法を検証し,さらに数値解析例として,弾性フレームの剛性の相違により生じる非線形共振応答振動挙動を考察した.
  • 東 慶幸, 藤野 清次, 尾上 勇介
    2011 年 2011 巻 p. 20110006
    発行日: 2011/05/12
    公開日: 2011/05/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, 優れた前処理として定評のある Eisenstat前処理を取り上げる. さらに, Eisenstat前処理に著者たちが提案した定常型前処理を組み合わし, 一層の収束性の向上を目指す. また, 共役勾配法ではなくMRTR法を研究対象とし, その収束性改善の度合いを評価した. その理由は, MRTR法が実際のアプリケーション分野で利用され始めたことに起因する. 数値実験では, 染原らの提案によるEisenstat版DIC分解型前処理付きMRTR法, 定常型前処理の一つであるGS(Gauss-Seidel)型前処理付きMRTR法と比較し, Eisenstat版GS型前処理付きMRTR法の収束性の優位性を示す.
  • (第2報:破壊力学問題への適用)
    柴沼 一樹, 宇都宮 智昭, 粟飯原 周二
    2011 年 2011 巻 p. 20110007
    発行日: 2011/05/16
    公開日: 2011/05/16
    ジャーナル フリー
    XFEMを破壊力学へ適用した場合, 煩雑なリメッシュ処理を回避することが可能となる. しかし, Blending elementsの問題と呼ばれるXFEM近似の不完全性に起因する解析精度の低下が指摘された. この問題を解決するために, 著者らは前報において, PUFEM近似の厳密な適用例としてXFEM近似を再定義することで, PU-XFEMの一般形の定式化を行った. 本論文では, このPU-XFEMを 2 次元の線形破壊力学問題に適用し, 変位場の近似式を定義した. 無限板中のき裂先端近傍を模擬した基本的な数値解析モデルを用いて数値解析精度の評価を行った結果, PUXFEMを用いることで, き裂解析におけるXFEMの不完全性を解決可能であることが明らかとなった.
  • (三角形要素の場合)
    邵 長城, 飯沼 敏也
    2011 年 2011 巻 p. 20110008
    発行日: 2011/06/27
    公開日: 2011/06/27
    ジャーナル フリー
    有限要素法は, 誤差の評価が明瞭で汎用性に富むなどの特徴があって, 最も広く使用される数値解法の一つになっている. しかし, 解析結果のメッシュ依存性問題が依然として解決されていない. Poissonの方程式をGalerkin法により非構造三角形メッシュ上で離散化した場合, ソース項が要素形状に関係なく所有節点にほぼ均等的に分配されるため, メッシュのパターンによって、節点レベルでは保存則が満たされないこともある. また, メッシュ節点の不規則な配置により, 離散化方程式がもはや元の微分方程式の近似ではなくなり, 有限要素解が局所領域において微分方程式の解に収束しないことも指摘されている. 従来の改善策として, ソース項に重み関数 1 を掛けて節点領域(Nodal Domain) 上で積分するなどの方法が提案された. 節点領域とは, 対象節点, 対象節点を挟む両辺の中点と要素の外心で囲う四辺形領域である. しかし, 鈍角三角形要素の場合には, 積分範囲が要素外までに広がるため, ソース項が空間的に変化すると, 大きな数値誤差が発生する. 本稿では, 線形三角形要素を用いた従来のGalerkin有限要素法によるPoissonの方程式の離散化に対して, 節点領域の面積に比例したソース項を追加する方法を提案する. この際, 節点領域上でソース項を積分することではなく, 節点領域の面積と要素中心でのソース項との積の形をとることにより, 鈍角三角形要素の場合にも, 要素外のソース項を取り入れることが不要となり, ソース項が空間的に変化しても数値誤差は抑えられることが期待できる. 本手法では, 保存則が節点レベルで 2 次精度で満足される. また, 一要素に属する三節点の追加項の合計がゼロになるため, 要素レベルでも保存則が満たされている. また, 追加項の導入により, メッシュ節点の不規則な配置に起因した微分方程式に収束しない問題も解消できた. 本手法によりソース項に導入した追加項は, 誤差解析手法というまったくべつな理論観点から導出された非定常移流拡散方程式の補正係数と一致していることが認められた. この事実は, 本手法のもう一つの理論根拠ともいえる. 本手法の有効性を確認するため, 幾つかのメッシュ・パターンを用いて, 基本境界条件と, 基本・自然境界条件での熱伝導問題の数値解析を行った. その結果, 本手法の解析精度が従来の有限要素法に比べ大幅に改善され, 正方形要素と同等になっていることが確認できた. また, 本手法では, メッシュ・パターンに関係なく厳密解を高い精度で予測することが可能であることも示された.
  • 藤川 正毅, 田中 真人, 儀間 麻衣
    2011 年 2011 巻 p. 20110009
    発行日: 2011/08/12
    公開日: 2011/08/12
    ジャーナル フリー
    有限要素法(FEM)による超弾性モデルの利用は,近年では様々な分野への応用例が報告されており,応用性が非常に高い.しかし汎用FEMソフトウェアに組み込まれている超弾性モデルの種類は当然限られているため,独自の構成則を汎用FEMで使用するためには,ユーザサブルーチン機能を利用する必要がある.このユーザサブルーチンは,ひずみエネルギ関数から応力と接線剛性の解析解を算出して実装するのが一般的であるが,ひずみエネルギ関数の数式モデルが複雑になるほど,解析解の導出は煩雑となる.そこで,本論文では超弾性構成則と対象として,ひずみエネルギ関数から応力値と接線剛性の両方を数値近似する計算方法を提案した.ここでは,陰的解法の代表的な汎用FEMソフトウェアであるAbaqus/Standardを例にとり,詳細な実装方法について記した.そして等方性および異方性超弾性モデルに適用し,計算結果の精度や収束性能について詳細に検証した. その結果,以下の知見を得た. ・前方オイラー法(Forward Euler Method, FE法)により,ひずみエネルギ関数からKirchhoff応力を算出する近似式を提案した.また既報の計算法を基にして,ひずみエネルギ関数から接線剛性を算出する近似式を示した.さらに,複素数階微分近似(Complex-Step Derivative Approximation, CSDA)法を利用して,より計算精度の高い近似式に拡張した. ・従来の計算方法では,応力の解析解をあらかじめ導出する必要があった.しかし,本手法は,ひずみエネルギ関数から応力と接線剛性の両方の近似値をただちに算出できる. ・CSDA法による近似計算式では,応力の算出に丸め誤差の影響を受けない.すなわち,十分に小さな変動量を与えてさえすれば,解析結果の精度は解析解のものとほぼ同等となる. ・本計算方法では複素演算が必要となるが,FEMソフトウェアのユーザサブルーチンの多くが採用しているFortran言語は,複素演算を標準装備しており,その実装は容易である. 本手法は,ひずみエネルギ関数を計算するサブルーチンを作成しさえすれば,本論文の例題以外の超弾性モデルへも容易に拡張可能であり,実用性が高いといえる.さらにCSDA法による近似計算では,計算精度も保証されるため,実用面で有用なツールとなりえると考えられる.
  • 石丸 和宏, 中筋 真紀
    2011 年 2011 巻 p. 20110010
    発行日: 2011/11/28
    公開日: 2011/11/28
    ジャーナル フリー
    円筒シェルは工学的用途に種々用いられており,そのため内外周に衝撃荷重を受ける場合の動的挙動に関する研究が行われている.有限要素法 (FEM) は最も一般的な数値解析法であり,動的解析においても DYNA3D に代表されるいくつかのソフトが利用されており,平板構造だけでなく,様々な構造においても解析が行われている.しかしながら,有限要素法は近似解法であるため,その精度を前もって評価することは困難である.特に応力波の伝播問題は波頭の追跡が重要であり,波の進行方向によほど細かい要素分割を用いないと精度よい解を求めることは難しい.そのため,近似解法のベンチマークとして動弾性論に基づく厳密解を求めることは非常に重要であると考える.これまで,動弾性論による有限弾性体内の応力波伝播特性は小林,著者らが動弾性論に基づく固有関数展開法によりその手法の妥当性と衝撃応答解析を行ってきた.これらのデータは衝撃発生点からの応力波が上下面で反射を繰り返しながら,次第に物体内に応力波が充満し曲げ状態に至る動特性が明らかにされており,これらの数値計算結果は衝撃を受ける構造物の動的挙動に関する基礎データとして貴重であると考える. 円筒シェルを対象にした解析は古典的な薄シェル理論とせん断力を考慮した修正シェル理論等があるが,いずれも厚さ方向の応力が考慮されておらず,衝撃問題で重要な厚さ方向の応力が表されていない.Weingarten-Reismann は Fluggeの古典シェル理論,Mirsky-Herrmann のせん断変形を考慮した円筒シェル理論による解析結果を比較しているが,厚さ方向の応力は示されていない. 本研究では 3 次元動弾性論に基づく固有関数展開法を等方性の軸対称円筒シェルに適応し,応力波伝播解析を行っている.応力波伝播解析の定式化は動的解を自由振動解析で得られる固有関数と静的解の和とし,まず級数解である固有関数を求め,次に静的解を求める.数値計算ではすべて無次元化して計算を行い,時間に関してはステップ状,空間に関しては軸対称な等分布荷重を受ける場合とし,衝撃問題で重要な厚さ方向の応力を中心に応力波の伝播状況を詳細に調べた.その結果,応答は応力波の到達とともに大きく変動することがわかった.
  • 山東 篤
    2011 年 2011 巻 p. 20110011
    発行日: 2011/12/06
    公開日: 2011/12/06
    ジャーナル フリー
    不連続な被積分関数を持つ重合メッシュ法の連成項は2次元問題であれば高精度に数値積分する方法が提案されている.それは積分範囲を不連続関数の境界線に沿って連続関数のみを含む三角形に分割する方法である.本研究の目的はその提案手法を2次元,3次元重合メッシュ法に拡張するために,スワッピングを用いなくとも適切な三角形または四面体分割がなされる前処理を提案することである.全ての頂点をグローバル要素ごとに定義されたグループに分類する.グローバル要素の境界に沿って定義されたグループごとに領域分割すれば,分割領域に不連続な関数が含まれることはない.本論文で提案するグルーピングによる部分領域の作成方法を2次元問題および3次元問題に適用し,手法の妥当性と計算効率を調査した.その結果,本手法は積分範囲を連続な関数を含む領域に適切に分割し,少ない計算時間で高精度な解を導出した.
  • 乙守 正樹, 山田 崇恭, 泉井 一浩, 西脇 眞二, Jacob ANDKJÆR, Ole SIGMUND
    2011 年 2011 巻 p. 20110012
    発行日: 2012/01/06
    公開日: 2012/01/06
    ジャーナル フリー
    メタマテリアルは自然界に存在する媒質が通常持たないような電磁的性質を示すように設計された人工媒質であり, 分割リング共鳴器と金属ワイヤで構成される周期構造が, ある特定の周波数に対して負の屈折率を示すことが実験により示されて以来, 短波長化や実用化などに関する多くの研究が行われている. さらに近年では, 金属材料を用いず, 誘電体材料のみで負の特性を実現する誘電体メタマテリアルが提案されており, 製造の容易性や等方性, 広帯域などの特長をもつことにより, その実現が期待されている. メタマテリアルの性能は, ユニットセルの形状や大きさに大きく左右され, そのユニットセルの形状設計は多くの場合, 設計者の勘や経験による試行錯誤に基づいており, 数学的および力学的な根拠に基づいた統一的な設計手法は確立されていないのが現状である.
    そこで本研究では, レベルセット法を用いて, 明確な形状表現が可能な誘電体メタマテリアルのトポロジー最適設計手法の構築を行った. まず, レベルセット法による形状表現と, S行列の係数に基づく有効透磁率の算出方法を用いて, 有効透磁率最小化問題, また有効透磁率を所望の値に設計する最適設計問題の定式化を行った. 次に, 最適化問題の定式化に基づき, 有限要素法により電磁場の解析とレベルセット関数の更新を行う誘電体メタマテリアル最適設計問題の最適化アルゴリズムを提案した. さらに, 数値例により, 有効透磁率を最小化させる最適構造, さらに, 所望の有効透磁率を持つ最適構造が求められることを確認した. いずれの最適構造もグレースケールを含まない形状が得られており, 本提案手法により, 工学的に有効で, 明確な最適構造が得られることを示した.
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