有限要素法は, 誤差の評価が明瞭で汎用性に富むなどの特徴があって, 最も広く使用される数値解法の一つになっている. しかし, 解析結果のメッシュ依存性問題が依然として解決されていない. Poissonの方程式をGalerkin法により非構造三角形メッシュ上で離散化した場合, ソース項が要素形状に関係なく所有節点にほぼ均等的に分配されるため, メッシュのパターンによって、節点レベルでは保存則が満たされないこともある. また, メッシュ節点の不規則な配置により, 離散化方程式がもはや元の微分方程式の近似ではなくなり, 有限要素解が局所領域において微分方程式の解に収束しないことも指摘されている. 従来の改善策として, ソース項に重み関数 1 を掛けて節点領域(Nodal Domain) 上で積分するなどの方法が提案された. 節点領域とは, 対象節点, 対象節点を挟む両辺の中点と要素の外心で囲う四辺形領域である. しかし, 鈍角三角形要素の場合には, 積分範囲が要素外までに広がるため, ソース項が空間的に変化すると, 大きな数値誤差が発生する. 本稿では, 線形三角形要素を用いた従来のGalerkin有限要素法によるPoissonの方程式の離散化に対して, 節点領域の面積に比例したソース項を追加する方法を提案する. この際, 節点領域上でソース項を積分することではなく, 節点領域の面積と要素中心でのソース項との積の形をとることにより, 鈍角三角形要素の場合にも, 要素外のソース項を取り入れることが不要となり, ソース項が空間的に変化しても数値誤差は抑えられることが期待できる. 本手法では, 保存則が節点レベルで 2 次精度で満足される. また, 一要素に属する三節点の追加項の合計がゼロになるため, 要素レベルでも保存則が満たされている. また, 追加項の導入により, メッシュ節点の不規則な配置に起因した微分方程式に収束しない問題も解消できた. 本手法によりソース項に導入した追加項は, 誤差解析手法というまったくべつな理論観点から導出された非定常移流拡散方程式の補正係数と一致していることが認められた. この事実は, 本手法のもう一つの理論根拠ともいえる. 本手法の有効性を確認するため, 幾つかのメッシュ・パターンを用いて, 基本境界条件と, 基本・自然境界条件での熱伝導問題の数値解析を行った. その結果, 本手法の解析精度が従来の有限要素法に比べ大幅に改善され, 正方形要素と同等になっていることが確認できた. また, 本手法では, メッシュ・パターンに関係なく厳密解を高い精度で予測することが可能であることも示された.
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