日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
積分ドット重心追跡法による測定分解能
(第1報, 静的引張試験におけるひずみ計測)
豊吉 巧也和田 義孝古川 知成
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2015 年 2015 巻 p. 20150010

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抄録
本論文は, 全視野ひずみ計測における分解能について議論したものである. ひずみ測定において, ひずみゲージが現在でも一般的に工学の分野で使用されている. その理由は, 局所的な測定に適している点と, 高い精度ならびに分解能で測定が可能であるからである. しかしながらひずみゲージによる測定は, 広範囲に及ぶ測定や大変形問題では, 多大な労力を要する. このような場合には, 非接触でありかつ広範囲での測定が可能である全視野測定手法が有効である. 近年では, DIC法をはじめとする画像を使用した全視野測定手法が多くの測定で使用されている. それに加えて, 価格の低下と計算機の処理性能の向上により, 今後さらに用途の幅を広げ, 多くの測定に使用される技術であることが予想される. そのため, 測定における安定性と高い精度での測定の再現性は, 測定技術の向上には必要不可欠である. また, 数値計算におけるV&V (verification and validation) の観点から, 測定における不確かさの議論も欠かすことはできない. 全視野ひずみ測定における誤差の要因は, シャッター構造や機械的振動, 照明によるフリッカーノイズなどであり, これらを解決する必要があり, 金属材料などのひずみ測定において, 約0.1%のひずみ場の測定を満足する必要がある. 高い信頼性や高精度な測定のためには, サブピクセル単位での測定, 分解能, 測定の誤差範囲に関する知見が要求される.
本論文では, ひずみ測定における測定分解能の定義と高精度化を可能とした Integrated Dot Centroid Tracking Method を提案する. 提案手法は, 全視野ひずみ測定における要求を満足する可能性と, ドットを貼り付けるのみでよいという簡便性と高い再現性, 単純な画像処理によって構成されているという3つの利点を有する. 単純な画像処理のみとすることで, 短時間で複数枚の画像の処理を可能とし, 統計的な処理を可能となる. 特に統計的な処理が可能となることは, 撮影によって得られたドットの重心位置の分布から, 測定の不確かさならびに測定の分解能を議論することが可能となる. ひずみ測定の分解能はこの評価により決定され, 測定結果とシミュレーションによる計算結果との定量的評価と誤差要因の特定が期待できる. 本論文において, 撮影枚数, ドットサイズ, ドット間距離が測定分解能の決定要因であると仮定し, 提案手法のひずみ測定における測定の分解能について検討した. テストパターンの撮影により得られた, 大きさの異なるドットの重心位置の標準偏差から関係性を見いだし, 補間によって得られた標準偏差から, ひずみ測定の分解能を推測する手法を開発した. 推定された重心の標準偏差とひずみ測定の分解能について, 単純な引張試験によって, 提案手法を用いて検討した. 最後に, 提案手法により測定されたひずみ場について, ひずみゲージによる測定値, ひずみエネルギーによる評価, 有限要素法による解析結果との比較により, 測定精度について検証した. その結果, ドットの重心位置の標準偏差は, 提案した手法により予測を可能とし, 全視野ひずみ測定における誤差要因について特定することを可能とした. これらの結果から, 数値計算におけるV&Vで重要とされる測定の不確かさについての議論ならびに, 実験値のシミュレーション結果の比較を, 提案手法と分解能の定義により示した.
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© 2015 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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