2016 年 2016 巻 p. 20160023
計算機技術の進展に伴い, 超大規模なシミュレーションが可能となってきた. 近年では超大規模シミュレーションから得られる結果データの可視化がシミュレーションプロセス全体の大きなボトルネックとなっている. これは超大規模シミュレーションが「京」等のスーパーコンピュータ (計算サーバー環境) で実行されるのに対して、可視化はクライアント端末でインタラクティブに行われ、その処理能力に大きなギャップが生まれているためである. この大規模なデータ転送を回避するため, 本研究ではサーバーサイドで結果のスクリーニングを行い, ROI (Region of Interest) を特定する技術を提案する. 具体的には, サーバーサイドにおいて実行される大規模シミュレーションにより得られる計算結果データから, 複雑構造物を構成する各部品の変形・応力等の構造健全性評価に係わる物理量の特徴を抽出し, その時空間データの類似性や独立性に係わる分析とROIの特定をクライアント環境において実行するための検討を行った. 提案手法の有効性を示すため, 沸騰水型原子力発電施設の燃料集合体を模した角柱群の地震応答シミュレーションを行い, 個々の角柱の揺れの不均一性を小規模なデータ転送によって俯瞰的に把握可能であることを示した.