日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
2016 巻
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
  • 加藤 準治, 谷地 大舜, 西澤 峻祐, 高瀬 慎介, 寺田 賢二郎, 京谷 孝史
    2015 年 2016 巻 p. 20160001
    発行日: 2016/01/18
    公開日: 2016/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は, 超惰性体二相複合材料を対象に, 分離型マルチスケール解析法を活用してミクロとマクロ構造の両方のトポロジーを同時に最適化する「マルチスケールトポロジー最適化手法」の提案を行うものである. ここでは, 使用材料体積量一定のもとマクロ構造のエンドコンプライアンス最小化を目的関数として定義した.
    マルチスケールトポロジー最適化は, 材料挙動が複雑な先端材料の設計に有用であるとして, 現在様々な分野で着目されている手法である.
    しかし, このようなマルチスケール解析を活用したトポロジー最適化は, 実際に生じる非線形の力学挙動を考慮すると, 計算コストが大きくなり, さらに目的関数の設計変数に対する感度の導出が複雑なることから, ほとんどの研究では線形弾性体を仮定した単純な問題のみを扱ってきた.
    そこで, 本研究ではこの現状を打破すべく, 二相複合材料の超弾性体を対象としたマルチスケールトポロジー最適化手法の確立に挑戦するものである.
    この問題を解くために, 当該研究では二変数境界値問題の局所化解析を活用した新しい感度解析法を構築した. これにより, ミクロ‐マクロ構造ともに最適な「理想的な構造物」の設計が可能となる. 最後にいくつかの数値シミュレーションによって本手法の妥当性を検証した.
  • 松永 拓也, 柴田 和也, 室谷 浩平, 越塚 誠一
    2016 年 2016 巻 p. 20160002
    発行日: 2016/01/29
    公開日: 2016/01/29
    ジャーナル フリー
    本研究では, MPS法による2次元流体シミュレーションのためのミラー粒子境界表現の開発および検証を行った. 本提案手法は, 固体壁境界を取り扱うための手法である. 境界形状は線分の集合として表される. 従って, ポリゴンモデルを用いる固体壁境界表現同様に境界要素自身は厚みをもたない. 従来のミラー粒子境界表現と比較して, ミラー粒子のミラー粒子を考慮すること, 視線判定を導入することが主な特徴として挙げられる.
    本手法におけるミラー粒子は, 従来手法同様に, 境界を軸とした流体粒子の鏡映を作成するという考え方に基づいている. 複数の接続された線分で表される境界形状を線要素と点要素に分割し, 点要素に関しては凹形状と凸形状を区別する. また, 視線の概念を導入し, 境界要素, 流体粒子, ミラー粒子の間の視線が通る条件を定義した. 境界要素から流体粒子への視線が通るとき, ミラー粒子を生成する. 更に, 生成したミラー粒子への視線が通る線要素がある場合, そのミラー粒子に対する新たなミラー粒子を生成する.
    以上のミラー粒子生成アルゴリズムを適用することで, 境界近傍の外部領域に抜け目なくミラー粒子を配置することができるが, ミラー粒子が過剰に存在する領域が発生してしまう. そこで, 近傍粒子計算に視線判定を導入する. 具体的には, 影響半径未満の距離に存在し, かつ, 着目流体粒子からの視線が通る流体粒子およびミラー粒子のみを近傍粒子として採用する. 視線判定は近傍流体粒子を吟味するためにも利用されており, 境界を跨ぐ流体粒子間の接続を切断できるため, 影響半径未満の厚みをもつ固体相を含む問題の計算が可能となる.
    基礎検証として3つの問題の計算を行った. 単純形状における静水圧問題を本ミラー粒子境界表現を用いたMPS法によって計算し, 壁粒子を用いた固体壁境界表現に用いた場合と比較を行った. 定常状態における圧力分布を比較したところ, およそ定量的な一致が見られ, 単純形状における固体壁境界条件が妥当に評価されていることを確認した. 続いて, 凹形状を有する固体壁面に対する水柱衝突の計算を実施した. 粒子の境界貫通が起こりやすい問題であったが, そのような現象は確認されず安定に計算が実行できた. 定常状態における静水圧分布を計算したところ, 鋭角な凹面内部には少数の流体粒子しか存在しないにもかかわらず, 圧力分布を妥当に評価することができたことから, ミラー粒子のミラー粒子を使用することの有効性が示された. 更に, バッフル付き円筒回転体内の流れの計算を行った. 円筒形状は離散的な線分によって表現を行ったが,線分の接続部の影響による目立った不自然な数値挙動は見られず, 安定に計算を実施することができた. このことから, 本研究にて採用している視野の定義および視線判定に基づく近傍粒子選択が妥当であることが確認できた.
  • 中居 寛明, 宮本 九里矢, 三澤 慧, 今井 康仁, 粟飯原 周二
    2016 年 2016 巻 p. 20160003
    発行日: 2016/02/10
    公開日: 2016/02/10
    ジャーナル フリー
    パイプラインにおける高速延性き裂伝播は大規模な破壊事故に繋がるために, その防止設計は非常に重要である. パイプラインにおける高速延性き裂の駆動力は, 内部ガス圧であるが, 軸方向のき裂伝播に伴いパイプが変形しながら開口するために, その開口からガスが漏出することで内部ガス圧の減圧がパイプ内で進行する. つまり, き裂伝播とその駆動力である内部ガス圧の減圧進行が同時に起きており, 減圧の進行速度がき裂伝播速度に対して速い場合は, き裂先端で内部ガス圧が低下し駆動力を失いき裂が停止し, 逆に, き裂伝播速度が減圧進行速度に対して速い場合は, き裂先端で内部ガス圧が保持され続けるために駆動力が提供され続けてき裂は停止することなく伝播し続ける. また, ガスの漏出量はパイプ開口の大小, つまりパイプ変形の度合いによって変化し, 結果的に内部ガス圧の減圧に影響を及ぼす. このように, パイプラインにおける高速延性き裂伝播は, 内部ガス圧の減圧, パイプ変形及びき裂伝播が互いに影響しあう複雑な現象であり, 流体構造破壊連成現象であると言える.
    パイプラインにおける高速延性き裂の既存の評価手法として広く採用されているものがバテル2曲線法である. この手法では, き裂伝播抵抗曲線(き裂先端位置の圧力とき裂伝播速度の関係)と減圧曲線(圧力と減圧の進行速度の関係)の比較によって高速延性き裂伝播発生の有無を判定する. バテル2曲線法は, その簡便さによって広く用いられるに至ったが, パイプの変形及び各現象間の相互影響は考慮されてない. さらに, き裂伝播抵抗曲線は実験的に定式化されており, 実験式を得るためには非常に高額な実大パイプラインバースト試験を複数回実施する必要があり, 実験式の適用性を広げるのは経済的に困難となる場合が想定される. また, 有限要素法に基いた詳細な三次元の解析手法も提案されてきたが, それらはパイプラインの設計ツールとしては用いられていないのが現状である. その理由としては下記の二点が挙げられる. まず, 非常に複雑な流体構造破壊連成現象を精度よく記述することが困難であることが挙げられる. 特に, き裂伝播条件については未だ不明な点が多く残っているため, 連成現象を考慮し, かつ, ガスの減圧及びパイプの変形を精緻に記述できているものの, き裂伝播条件の記述における精度不足が全体の精度のボトルネックとなっている. 次に, 三次元有限要素解析の特質上, , 計算に莫大な時間を要するために, 複数回の計算を要する高速延性破壊防止設計に不向きであることが挙げられる.
    以上の背景より本研究では, 連成現象を考慮しつつ可能な限り簡潔な流体構造破壊連成一次元モデルを構築した. 本モデルの特徴を次に示す.
    (1) き裂開口からのガス漏出を考慮してパイプ内のガス減圧を定式化し, 一次元のガス減圧モデルを構築した.
    (2) パイプ断面の変形形状を小径アルミバーストテストの計測結果より一つの変数で定式化し, それに基づいて一次元のパイプ変形モデルを構築した. また, パイプが地中にある場合の変形抑制効果を付加質量を用いて定式化した.
    (3) き裂が微小伝播する際に定常伝播すると仮定し, き裂の伝播条件を動的エネルギー平衡条件より定式化した.
    (4) 一次元で定式化されたガス減圧モデル及びパイプ変形モデルは有限差分法に基いており, き裂伝播条件と合わせて時間ステップを刻みながら順に解くことで各現象間の連成現象が考慮された解を得ることができる.
    (5) 内部ガスとして天然ガスや炭酸ガス等の混合気体及び単相気体を幅広く扱うことが可能であることに加えて, いかなる鋼管の機械特性及び形状も扱える適用範囲の広い数値モデルである. また, 本モデルは, フルスケールバーストテストの解析時間が2~3時間と非常に短いために, 多くの計算数を要するパイプラインデザインのための数値ツールとして使用されることが今後期待される.
    本報では, 本モデルの詳細な定式化及び計算例を記述している. 次報において, 本モデルの妥当性検証及びパイプラインにおける高速延性き裂伝播の影響因子解析を実施する.
  • 車谷 麻緒, 根本 優輝, 相馬 悠人, 寺田 賢二郎
    2016 年 2016 巻 p. 20160004
    発行日: 2016/02/12
    公開日: 2016/02/12
    ジャーナル フリー
    鉄筋コンクリート (RC) 部材の破壊挙動を3次元で詳細に再現するには, 鉄筋とコンクリートそれぞれの材料挙動をモデル化し, 鉄筋の塑性変形とコンクリートのひび割れ進展挙動を解析する必要がある. 鉄筋の塑性変形を精度よくモデル化する方法はあるものの, コンクリートのひび割れ進展挙動を定量的に再現できる解析手法は研究途上にある. そのため, 鉄筋とコンクリートのそれぞれの力学挙動をモデル化し, RC部材の詳細な破壊挙動を3次元で定量的に再現した例は見当たらない.
    本論文では, 鉄筋の塑性変形とコンクリートのひび割れ進展挙動をモデル化し, 鉄筋の幾何形状を考慮することにより, RC部材の複雑な3次元破壊挙動を精度よく再現できることを示す. 材料のモデル化には, 鉄筋にvon-Mises塑性モデル, コンクリートに修正von-Mises損傷モデルを用い, 非線形有限要素法による陰的な解法を採用する. 数値実験により, 材料モデルの妥当性を検証したのち, RCはりの4点曲げ試験を対象に, 実験結果の再現性を検証する.
    第2節では, 鉄筋に適用するvon-Mises塑性モデルと, コンクリートに適用する修正von-Mises損傷モデルの定式化を示し, 破壊力学を考慮した損傷モデルを用いて, コンクリートのひび割れ進展挙動を解析する方法について説明する. 第3節では, 鉄筋とコンクリートの材料挙動に関する検証例題を示す. 圧縮に強く引張に弱いコンクリートの破壊力学挙動を等方性の損傷モデルで再現できることを検証し, 鉄筋コンクリートにおける鉄筋の塑性変形とコンクリートのひび割れ挙動を適切に再現できることを示す. 第4節では, RCはりの4点曲げ試験を対象に, メッシュ分割に対するシミュレーション結果の客観性と, 実験結果の再現性について検証する. まず, 数値実験により, 提案手法による破壊シミュレーションは, メッシュ分割にほとんど依存しないことを示す. さらに, 実験結果との比較により, 鉄筋コンクリートに発生する典型的なひび割れパターンを再現できるとともに, 実験結果を定量的に再現できることを示す. 第5節では, 本研究の総括を行い, 課題と今後の予定について述べる.
  • Pin WEN, Kosho KAMIJO, Daichi KURITA, Naoki TAKANO
    2016 年 2016 巻 p. 20160005
    発行日: 2016/02/22
    公開日: 2016/02/22
    ジャーナル フリー
    The aim of this study is that with consideration of geometrical fluctuation, robust design is made to assure performance of material more reliable to fabrication process. Firstly a target microstructure is defined as the optimum solution for coated particulate material. Then a slightly fluctuated computational models are generated in which some random variables are defined. Multiscale analysis is done to obtain homogenized Young’s modulus, shear modulus and an index with respect to strength. Probabilistic sensitivity for those quantities of interest against design variables is analyzed by means of response surface method. For response surface, this paper studies a case where the scattering of sampling points is clustered. The characteristics of cluster sampling points determine the response surface strategy as quadratic polynomial and least square regression method. Finally the numerical result of a specific robust design for coated particulate composite material reveals that when the mean radius of particle is bigger and mean coating thickness is smaller, the less sensitive index is. It will provide a reliable guidance and save cost in the development of wide range of composite materials.
  • 河合 浩志, 荻野 正雄, 塩谷 隆二, 山田 知典, 吉村 忍
    2016 年 2016 巻 p. 20160006
    発行日: 2016/02/23
    公開日: 2016/02/23
    ジャーナル フリー
    PCクラスタやスーパーコンピュータ上における数値シミュレーションの総合性能を改善するためには, 並列効率だけではなく計算ノード単体性能も以前より重要な指標となってきている. 特に, 近年のマルチコアアーキテクチャを有効活用することが重要である. 本論文は, 領域分割法に基づく有限要素解析コードの最適実装について述べ, さらに性能予測モデルを提案するものである. 特に, 部分領域ごとのローカルシュアコンプリメント行列の陽的構築を行うLSCアプローチについて示す. また, 開発した性能予測モデルと京コンピュータやPCクラスタにおける数値実験結果を用いて, 提案アプローチが既存アプローチに比べて省メモリ性能だけでなく計算時間についても優位であることを示す.
  • 広瀬 孝三郎, 江戸 孝昭, 玉那覇 圭一, 松原 仁, 原 久夫
    2016 年 2016 巻 p. 20160007
    発行日: 2016/03/11
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
    The fracture morphologies of mud pastes show significantly complicated patterns in nature. The mud pastes have initially fluid-like properties, but gradually change from “fluid” to porous “solid” in their drying process. However, although it has been considered that this phenomena may be induced by the differences between shrinkage ratios of soil skeletons, the mechanical details remain unknown. In this work, we attempt to develop a novel numerical model based on three dimensional finite element method for crack propagation phenomena in bentonite pastes. In order to validate the proposed method, Hausdorff’s fractal dimension of the numerical cracking patterns was compared with those of the experiments. As a result, the numerical results showed reasonable cracking patterns, and the fractal dimension of the patterns by numerical simulation was almost consistent with the experimental results.
  • 岩津 玲磨
    2016 年 2016 巻 p. 20160008
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    Conventional integration methods do not guarantee preservation of sound frequencies when they are applied to the sound ray equations treating the acoustic scattering by an isolated vortex. On the other hand, symplectic integration algorithms (SIAs) are known to preserve conservative quantities for long time integration. Even if it is so, results of our numerical experiments indicate that in the scattering problems, the frequency error increases substantially when the ray computed by SIA passes through the vortex core region. In order to decrease this error, a variable-time-stepping method (VTM) is introduced to the SIAs whose variation strategy is based on the estimation of vorticity of the background fluid flow. A total of nine SIAs are compared and the VTM is combined with the SIA which performs best among the SIAs considered. Proposed method, i.e., symplectic integration algorithm with variable-time-stepping method (SIA-VTM) is capable of preserving sound frequency at higher accuracy than the conventional integration methods for the scattering problems: numerical error of sound frequencies computed by SIA-VTM is approximately two-orders of magnitude smaller than the corresponding value computed by the SIA without VTM at the cost of only a slight increase in the CPU time. The scattered sound rays are computed for several model vortices.
  • 馬渡 正道, 土屋 健介
    2016 年 2016 巻 p. 20160009
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/03/15
    ジャーナル フリー
    There is an increasing need to automate handwork by highly-skilled workers in industry. However, human’s motion contains time and spatial perturbations, and it makes the automation difficult. In author’s previous study(19), the handwork was precisely expressed in dynamical system, and a mathematical model was established to analyze the time and spatial perturbation of an individual. In this report, the mathematical method is expanded by Lattice theory to deal with interpersonal spatial perturbation between individuals. The mathematical model is then applied to brush stroke motions of Japanese calligraphy to verify its effectiveness. As a result, a methodology is established to quantitatively evaluate proficiency levels of highly-skilled handwork based on intrapersonal and interpersonal spatial perturbation, and to provide guidelines for workers learning the handwork.
  • 松原 成志朗, 寺田 賢二郎, 藤井 文夫
    2016 年 2016 巻 p. 20160010
    発行日: 2016/03/23
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
    A method of isogeometric analysis (IGA) based on NURBS basis functions is applied to homogenization problems for periodic heterogeneous media and composite plates with in-plane periodicity. Since the treatment of the combination of different materials in IGA models is not trivial especially for periodicity constraints and has not been reported in the literature, the first priority is to clearly specify points at issue in the numerical modeling, or equivalently mesh generation, for IG homogenization analysis (IGHA). The most awkward, but important issue is how to generate patches for NURBS representation of the geometry of a rectangular parallelepiped unit cell to realize appropriate deformations in consideration of the convex-hull property of IGA. The issue arises from the introduction of multiple control points located at angular points in the heterogeneous unit cell, which must satisfy multiple point constraint (MPC) conditions associated with periodic boundary conditions (PBCs). Although some countermeasures may be conceivable, we suggest the use of multiple patches along with double MPC that impose PBCs and the continuity conditions between different patches simultaneously. Several numerical examples of numerical material and plate tests are presented to demonstrate the validity of the proposed method of IG unit cell modeling for IGHA.
  • 新宅 勇一, 寺田 賢二郎
    2016 年 2016 巻 p. 20160011
    発行日: 2016/03/23
    公開日: 2016/03/23
    ジャーナル フリー
    A cohesive-force embedded damage model is proposed in this study to realize both crack nucleation and propagation. As in the existing smeared crack model and rotating crack model, the crack opening is introduced at each material point, but is treated as an internal variable to be determined implicitly. To work with the proposed damage model in crack propagation analyses, the Nested Tangent Secant Method (NTSM) is proposed as a proper alternative to the method with approximate tangent moduli. After verifying that the proposed model provides equivalent performance to the traditional cohesive zone models for cracking behavior under uniform tensile loading, we demonstrate its superiority over them in simulating crack nucleation and propagation in a plate with hole and in a beam-like structure subjected to bending. Here, the superiority of the NTSM over the Explicit Secant Method (ESM) is also discussed. Also, we studied the characteristics of the exiting cohesive zone models that do not have the crack opening as an internal variable and pointed out their limitation in history-dependent problems by taking the mixed-mode condition crack propagation analysis as an example.
  • 松永 拓也, 柴田 和也, 室谷 浩平, 越塚 誠一
    2016 年 2016 巻 p. 20160012
    発行日: 2016/05/11
    公開日: 2016/05/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 粒子法を用いた非圧縮性流れの数値シミュレーションにおける圧力ポアソン方程式の解法として適するAMG法を用いた線形ソルバーについて検討を行った. 粒子法では, 格子法の場合と比較して, 係数行列が多くの非ゼロ要素をもち, なおかつ, 時間の進行と共に大きく変化することが特徴として挙げられるが, これに即する手法としてPA-AMG法ならびにK-cycleマルチグリッド法をBiCGSTAB法に対する前処理として適用することを考え, 数値実験に基づく性能検証を実施した.
    基礎検証として2次元ポアソン方程式にMPS粒子間相互作用モデルを用いて離散化した線形方程式を対象に解析を行った. なお, 擬似乱数を用いることにより粒子分布のばらつきを模擬した. 検証の結果, 対象とする問題サイズに依らずおよそ一定のcoarsening ratio (3.9から4.0) を有する安定なコースグリッド生成が実現された. また, 求解にかかる計算時間について前処理なしBiCGSTAB法と比較したところ, 問題サイズnに対して, 前処理なしの場合ではnの1.5乗に, PA-AMG前処理付きの場合ではnの1乗に比例する傾向を示した. また, n > 10^4では前処理なしBiCGSTAB法より高速であり, n > 10^6では10倍以上の速度が得られた.
    実問題に対する有用性を検証するため, MPS法を用いた2次元ダムブレイク問題の非圧縮流れの解析を行った. MPS法の計算において現れる圧力ポアソン方程式の解法として前処理なしBiCGSTAB法とPA-AMG前処理付きBiCGSTAB法を適用し, シミュレーションに要する全体の計算時間の比較を行った. その結果, 検証を行った粒子数範囲 (7000~130万) では総じてPA-AMG前処理付きBiCGSTAB法を用いた場合の方が高速であり, 最大で約16倍の高速化が得られた. 更に, 全体の計算時間に対する圧力ポアソン方程式解法が占める割合は粒子数が大きな問題に対してもおよそ一定に保たれる結果となった.
    以上の結果より, PA-AMG法を前処理としたBiCGSTAB法は, 流体シミュレーションにおいて, 粒子分布の不均一化や複雑な境界形状変化に対する堅牢性を有し, 安定して高い計算速度を実現できることから, 粒子法の圧力ポアソン方程式に適する一解法であると結論付けることができた.
  • 渡辺 勢也, 青木 尊之, 都築 怜理
    2016 年 2016 巻 p. 20160013
    発行日: 2016/05/27
    公開日: 2016/05/27
    ジャーナル フリー
    For granular particle simulations based on Discrete Element Method (DEM), we have a severe problem of its long computational time consuming. Using GPU (Graphics Processing Unit) is one of options to accelerate the computation with the high performance of floating-point operation. Since the amount of on-board high-speed memory on GPU cards is limited to several GB, we have to choose algorithms to save the memory usage. Four kinds of speed-up techniques have been proposed: a highly efficient method for neighbor-particle searching, sorting the particle order on their positions, an efficient memory usage for the tangential spring, and fusion of GPU kernel function to reduce the memory access. A benchmark test of the 3-dimentional dam-breaking problem is examined to evaluate their performances and their memory usages for four techniques, respectively. The computational performance of the code which all the four techniques are applied to is improved 14.86 times higher than the original one, and only 6% increase of the memory usage is required. It is shown that the four speed-up techniques are quite available for GPU computing to achieve higher performance and less memory usage for DEM computation. We have also demonstrated a large-scale dam-breaking test using 15,728,640 particles on a NVIDIA Tesla K20X and the simulation has completed within 5.5 hours.
  • 中村 恭志, 安嶋 大稀
    2016 年 2016 巻 p. 20160014
    発行日: 2016/06/28
    公開日: 2016/06/28
    ジャーナル フリー
    移流方程式の数値解析手法であるCIP-Soroban法に向けた新しい空間補間手法を提案した. CIP-Soroban法は, 非構造動的適合格子であるSoroban格子と高精度空間補間法であるConstrained Interpolation Profile/Cubic Interpolated Profile (CIP) 法を組合わせた差分解法であり, 近年様々な分野において適用が進められている. Soroban格子では格子平面と格子軸を用いて格子点を階層的に配置する. その結果, 高次元空間の補間はx,y,z方向それぞれへ1次元CIP補間を繰返す簡潔なアルゴリズムで実現できる. しかし, CIP法は空間3次精度補間を空間微分を用いて行うため, 上記のx,y,z各方向への補間計算では, 1次元CIP補間を行う方向に垂直な方向への微分 (直交方向微分) を計算する手法が別途必要とされる. 従来の直交方向微分の計算は, 空間1次精度の線形補間で行う方法 (Type-M補間) と, 高階微分を用いて直交方向微分にCIP補間を適用する方法 (Type-C補間) の二つが使用されてきた. しかし, Type-C補間はType-M補間に比べ計算誤差が小さい反面, 高階微分を格子点に記憶する必要があり, 必要とする計算機メモリー量が増加する. 3次元空間の解法ではType-C補間のメモリー量はType-M補間の2倍に達するため, 従来高次元空間の解法には計算誤差の大きいType-M補間がしばしば利用されてきた. 本論文では, 近年Fukumitsuらにより提案された新たな補間手法であるType-F補間に着目し, これを非構造格子であるSoroban格子へ適用することで, Type-M補間と同じ消費メモリー量でType-Mよりも計算誤差の少ない新たな補間手法を提案した. まず, 2次元空間を取り上げ, 直交格子を対象に提案されている従来のType-F補間をSoroban格子に適用する方法を提案した. 提案手法ではSoroban格子の隣接する格子軸上に一時的な参照点を設け, それらから作られる仮想的な直交領域にType-F補間を適用する. それにより, 提案手法では高階微分の記憶が不要となり, 消費メモリー量をType-M補間と同量に抑えることができる. さらに, 提案手法では直交方向微分をType-M補間よりも高い空間3次精度で計算することが可能となる. 提案手法を2次元移流方程式の解法に適用し, 計算誤差と計算負荷についてType-M補間, 及びType-C補間と比較を行った. まず, 動的な格子再配置を用いない静的なSoroban格子を用いた計算を行い, 提案手法による解法が空間3次精度を持つこと, 計算誤差はType-Cに比べ大きいもののType-M補間よりも小さいこと, 解法に必要とされる実行時間がType-C補間よりも短縮されることを確認した. さらに, 格子の動的適合を伴う計算を行い, 動的適合を伴う解法でも提案手法が上記特徴を持つことを確認した. 本論文の最後では, 提案手法の3次元Soroban格子への拡張方法を提案した. 3次元Soroban格子においても格子平面上に一時的な参照格子点を設けることで, 2次元Soroban格子の場合と同様に直交方向微分の計算が可能であることを示し, Type-Fに基づく高階微分を用いない3次元Soroban格子の補間法を提案した. 提案手法では高階微分を用いないため, 3次元の解法では従来のType-C補間に比べ消費メモリー量は半分となる. 3次元移流方程式の計算を行った結果, 提案手法によりType-M補間より計算誤差が少ない解法が可能となること, また, 実行時間はType-C補間に比べ半分程度に短縮され, 高速な解法が可能であることを確認した.
  • 志野 亮作, 玉井 佑, 越塚 誠一, 真木 晶, 石川 健
    2016 年 2016 巻 p. 20160015
    発行日: 2016/06/30
    公開日: 2016/06/30
    ジャーナル フリー
    強度等の機械物性を向上させるためにプラスチックを炭素繊維やガラス繊維で強化した材料である繊維強化プラスチック (Fiber Reinforced Plastics : FRP) の中でも、熱可塑性プラスチックに炭素繊維を含浸し製造される炭素繊維強化熱可塑性プラスチック (Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics : CFRTP) は、成型加工性や機械特性に優れており注目されている。FRPの機械特性は、繊維の分布や配向に依存するため、信頼性の高いFRP製品を製造するためには,要求される機械特性を持つように繊維分布を制御しなければならない。本研究では、高濃度かつ長繊維のプリプレグを成形材料としたプレス成形における流動現象を解析対象としたLSMPS法を用いた異方性高粘度解析手法を提案した。また、提案手法を用いてプリプレグを模擬した体系について粘性比を変化させて解析を行い、手法の妥当性について議論した。
  • 菅谷 明誉, 曽我部 博之
    2016 年 2016 巻 p. 20160016
    発行日: 2016/07/21
    公開日: 2016/07/21
    ジャーナル フリー
    建築構造物における最適化手法は, 設計変数が比較的少ない最適化問題, 例えば平面構造物の断面設計や創造的なデザイン探索などに適用されることがほとんどである. 一方, 一般的な建築物の構造形式である立体トラス構造や立体ラーメン構造に最適化手法を適用する場合, 構造物を構成する柱やはりなどの部材の共有化を図っても, 設計変数の個数は数百になることが予想される. 建築構造最適化問題における解の探索手法については, 近年, 遺伝的アルゴリズムなどのヒューリスティックな最適化手法が数多く利用されているが, 本研究では粒子群最適化 (PSO : Particle Swarm Optimization) を用いて構造最適化を行なった.
    PSOは鳥や魚などの集団行動から発想を得て創られた群知能のひとつで, アルゴリズムが非常に単純であることや目的関数の勾配情報が不要であることなどから, 近年では様々な工学分野で応用されている. しかし, 設計変数が非常に多くなる高次元の最適化問題や目的関数が多峰性となる最適化問題においては, その探索性能の低下が指摘されている.
    本研究では, これらの問題点を解決するためにPSOのアルゴリズムを僅かに修正したPSOを提案し, 5つのベンチマーク問題に適用することによって, その探索性能が飛躍的に向上することを示した. さらに, 建築構造物を構成する柱, はりなどの部材は, 既製品を用いることが一般的であることから, 修正したPSOに離散設計変数に対応するための処理や設計変数の設計可能領域を段階的に小さくする処理を加えて, 立体トラス構造や立体ラーメン構造の最適化問題に適用し, その有効性について報告する.
  • 井町 美智也, 田中 智行
    2016 年 2016 巻 p. 20160017
    発行日: 2016/08/09
    公開日: 2016/08/09
    ジャーナル フリー
    近年, 新しく注目されているメッシュフリー法である Peridynamics (PD) を用いて動的応力拡大係数の算出を行なった結果を示す. 動的応力拡大係数の評価には領域積分形式のJ 積分を用いた. また, 今回用いている Ordinary state-based PD ではひずみを陽に定義しないため, J 積分評価を行なうためのひずみの微分量は変位から Moving Least Squares (MLS) 近似を用いて行なった. また, 物体の体積評価にはボロノイ分割を用いた. 本報告では, 動的応力拡大係数の評価およびPDの解析精度について検討した結果について報告する.
  • 真鍋 圭司
    2016 年 2016 巻 p. 20160018
    発行日: 2016/08/10
    公開日: 2016/08/10
    ジャーナル フリー
    非圧縮の超弾性体をGLS (Galerkin/Least-Squares) 有限要素法によって解析した. 非圧縮性変形を有限要素法で取り扱う場合, 用いる要素や変数の補間に工夫が必要である. 微小変形理論に基づく線形ひずみによる弾性体や塑性体においては, penalty法により非圧縮条件を導入し, 変位に選択低減積分を用いる方法や, Lagrange未定乗数法によって変位と圧力を未知数とする混合法を用い, 変位より低次の補間関数を圧力用いる方法が用いられる.
    変形が大きな場合の, 非圧縮超弾性体の有限要素法についても同様な手法が用いられるが, ひずみが変位の非線形関数となることが微小変形と異なる. これまで選択低減積分や, 混合型要素について詳細な要素特性の基礎的検討がなされ, 非圧縮の超弾性体の有限要素解析法はほぼ確立されている. これらの手法は, 変位と圧力に異なる補間関数を使うことが基本となっている.
    ところで, 流体力学の分野でも非圧縮性流の解析手法は重要である. 数値流体力学の分野においての有限要素法では近年, GLSを導入した手法が多く用いられている. これは, 支配方程式そのものの最小自乗形式を, 弱形式の微分方程式に導入するものである. この手法の特徴は, 速度と圧力に関して同じ補間関数を用いることができることである. そのため, 1次要素による解析が可能になる. 1次要素の三角形要素や四面体要素では, 自動分割法が確立されている. 非圧縮固体解析においても1次要素を使用することができれば, 要素分割において便利である.
    本研究では1次要素を, 非圧縮の固体解析への使用を可能とすることを目的として, 流体解析の分野で成功を収めているGLS法を, 固体解析の分野に応用する. 固体の変形が微小な場合, ひずみが変位に関して線形となるから, 式の形は流体問題と同じである.
    本報告では変形が数十%程度の大きさをターゲットとし, ひずみが幾何学的に非線形な問題を取り上げ, 超弾性体のGLS解析を行った. まず, total-Lagrange法によって定式化を行い, 有限ひずみの解析にLagrange未定乗数法によって非圧縮性条件を導入した汎関数を考える. そして, 第1Piola-Kirchhoff応力で表した釣り合い方程式の最小自乗形式を安定化項として導入する. これの変分をGLS項として用いる. 非圧縮条件は, 低減不変量をひずみエネルギー関数に用いることによって体積変形を分離し, 有限変形問題に導入する. 尚, 本定式化で得られた非線形方程式はNewton-Raphson法により解を求めるが, その線形化の際に必要な微係数は, 数値微分によって求めた.
    計算に使用する要素は1次要素であり, 二次元計算では三節点三角形要素, 三次元計算では四節点四面体要素を用いた. さらに, アイソパラメトリック要素では, 二次元計算では四節点四角形要素, 三次元計算では八節点六面体要素を用い, それらの要素で変位と圧力に同じ形状関数を用いた. アイソパラメトリック要素の場合は, 変位, 圧力に関してfull integrationによって計算する.
    以上でGLS項を導入した有限要素法による解析例を示して考察する. 計算の2次元問題として, 長方形のブロックの圧縮解析を行った. 粗い要素分割では, 初期高さの50%程度の圧縮が可能であった. また全計算を通じて, 各要素の合計の体積変化はゼロであり非圧縮性は満たされていた. しかし, ある部分の体積は増え, ある部分は減少するという状態が現われ, 特に工具の角部の要素の体積変化が大きく, その部分が異常に変形していた.
    細かい要素分割を使用すると, 局所変形が一部に集中した場合には1つの要素が極端に大きく変形するため, 初期高さの40数%程度の圧縮が限界であった. 四角形要素による解析では, 変形が小さな領域では三角形要素の結果と大きな差はなかった. しかし四角形要素は凹型に変形すると解析不能になる. 従って大きな変形のシミュレーションにおいては, 四角形要素より三角形要素の方が適していると言える.
    安定化パラメータの影響を調べたが, 安定化パラメータを大きくすると圧力分布がなめらかになることが示された. 局所的体積変化が少ない領域においては, 安定化パラメータの変化は, 要素変形形状や圧縮力, 相当応力分布に対して, ほとんど影響がなかった. 従って, GLS解析を固体に応用する場合, 局所的体積変化が少ない範囲で使用すべきであると言える.
    三次元解析においては細長い棒をねじる問題を取り扱った. 360度のねじり問題も, 微小変形を繰りかえすことにより, total-Lagrange法により解析できた. さらにねじった後, 圧縮変形させる計算も行ったが, ねじられたまま長手方向に均一的に変形した. 一方, この細長い棒の計算モデルに初期不整を与えた場合は曲げ座屈し, ねじりモーメントが解放されてゆく様子がシミュレーションできた.
    以上のように, GLS法による1次要素により, 今回示した超弾性体のような非線形ひずみ問題に対しても, 40%程度の圧縮変形問題や, 360度の回転, 座屈を含む大きな変形が解析可能であることが明らかになった. またGLS法による解析結果は、これまで示されている混合補間などによる参照解とよい対応が認められ, 本手法の有効性が確認された.
  • 陳 曦, 川村 恭己, 岡田 哲男
    2016 年 2016 巻 p. 20160019
    発行日: 2016/08/31
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー
    本研究では, 多項式カオス展開法による近似応答曲面を用いて, 非正規分布に従う形状不確定性を考慮した確率有限要素法の研究開発を行う. 本提案手法を用いることによりモンテカルロ法のような多数回の解析が不要となり, 主要な剛性方程式をただ1回解くことにより節点の変位, ひずみ, 応力応答の不確定性を推定することが可能となる. 具体的に以下の問題を解決する. 第1に, 非正規分布に従う形状不確定性に対する構造応答の不確定性を評価するための2次元確率有限要素法の定式化を行う. また第2に, 任意の非正規分布の形状不確定性を有する問題の取り扱いを可能とするために, 確率変数に関する近似次数を任意に変更可能な確率有限要素法アルゴリズムの開発を行う. 第3に, 提案した定式化・アルゴリズムを用いて作成した確率有限要素法プログラムを用いることにより, 円孔サイズに不確定性を有する平板の問題と, 溶接止端部のサイズに不確定性を有する問題の解析を行うことにより, 本手法の有効性と適用性を検討する.
  • 奥村 大, 春日井 彰志
    2016 年 2016 巻 p. 20160020
    発行日: 2016/10/12
    公開日: 2016/10/12
    ジャーナル フリー
    本研究では, ポーラスゲル膜に生じる膨潤誘起パターン変態の有限要素解析を行う. 高分子ゲルのための不均質場理論は市販の有限要素解析ソフトのユーザー材料サブルーチンに実装されて用いられる. 膨潤過程は外部溶媒の化学ポテンシャルを増加させることによって再現される. 座屈点と座屈モードを調べるために, 座屈固有値解析を行うが, この解析では化学ポテンシャルを用いることができないため, 代替的な増分負荷パターンを用いることを考える. この方法は, 正方配列に円孔を有するゲル膜のパターン変態を解析することによって検証される. 解析では, 基準状態での化学ポテンシャルの値に関わらず, ダイアモンドプレートパターンがうまく予想されることがわかる. 一方, 基準状態が座屈点から離れるにしたがって, 座屈応力は過小評価され, とりわけ本研究では, 最大40%, 過小評価されることがわかる. さらに, 大きな周期単位の解析によって, ダイアモンドプレートパターンが最も支配的な座屈モードであることもわかる.
  • 杉山 裕文, 松井 和己, 山田 貴博
    2016 年 2016 巻 p. 20160021
    発行日: 2016/10/13
    公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究では, 体積ロッキングを回避した有限被覆法によるき裂進展解析手法を提案する. 構造物内に存在するまたは新たに発生するき裂を評価するために数値シミュレーションが用いられている. 数値シミュレーションによりき裂の発生や進展を評価するためにはき裂先端近傍における破壊力学パラメータの算出が重要である. き裂進展解析に用いられる代表的な解析手法として拡張有限要素法(X-FEM)がある. X-FEMは, 一般化有限要素法に分類される手法のひとつであり有限要素法(FEM)に対して解の特性を反映するエンリッチ関数を内挿し要素内の変位場を拡張させることによりメッシュとは独立に不連続な変位場を表現できる. これによりき裂先端近傍の特異応力場を精度良く評価できるので, J積分や応力拡大係数を用いたき裂進展解析が行われている.
    一方で, X-FEMと同じ一般化有限要素法に分類される解析手法に有限要素法(FCM)がある. FCMでは, 被覆と呼ばれる節点を代表点とする近似単位を定義する. ここで, 被覆を定義するために新たに近似関数を追加する必要はなく, 従来のFEMで用いられる要素をそのまま適用できる. また, X-FEMと同様にメッシュとは独立に不連続な変位場を扱えるので不連続面進展解析への適用が行われている.
    き裂進展解析で対象とする構造物は様々であり破壊形態も異なる. 破壊形態は主に脆性破壊, 延性破壊や疲労破壊に分類できる. 脆性破壊や疲労破壊は塑性変形を伴わない破壊形態であるのに対して, 延性破壊は大きな塑性変形を伴い破壊にいたる. 脆性破壊や疲労破壊の数値シミュレーションでは, 弾性解析を用いた研究が数多く報告されている. 一方, 延性破壊シミュレーションは大変形解析と弾塑性解析が必要となることより, X-FEMやFCMを用いた報告例は少ない. また, 塑性が卓越した領域の解析では非圧縮性により体積ロッキングが発生することが知られている. 体積ロッキングを回避しなければ適切な変形を評価できず応力評価にも影響する. X-FEMでは適当なエンリッチ関数を選択する必要があるが, 線形問題に比べ非線形問題では内挿する関数の選択が難しい. 対して, FCMではFEMで用いられる要素をそのまま使用できるので, 適切な要素を選択することで体積ロッキングを回避できる.
    そこで, 本研究では延性破壊不連続面進展解析へFCM適用することを目指し, 体積ロッキングを回避したFCMを開発する. これまでのFCMでは4辺形要素や3角形要素が用いられてきたが, 3次元解析への拡張を考慮し要素形状は3角形要素とする. 体積ロッキングの回避方法としてFCMに高次の近似関数を用いた研究が報告されているが完全には回避できていない. また, 3角形2次要素では不連続面が発生した後に要素形状の決定が不安定になる.
    本論文ではP1-iso-P2/P0要素に注目する. P1-iso-P2/P0要素は圧力および体積ひずみが要素内で一定と仮定した要素であり, FEMで体積ロッキングへの有効性が確認されている. FCMはFEMで用いられている要素を特別な作業を必要とせず使用できるので, 非圧縮性による体積ロッキングを回避するためにP1-iso-P2/P0要素を用いたFCMを開発する. 不連続変形の発生条件は先行研究で石井らが用いた「ある点における物理被覆の最大主応力が引張強度に達したときに, 最大主応力方向と垂直に不連続面が発生する」とする. また, 発生位置についても石井らと同様の不連続変形を含む辺を主応力の比によって辺を内分する方法を用いる.
    数値解析例を通して, まず, 非圧縮条件下で体積ロッキングが回避できたことを異なるポアソン比の誤差収束速度を比較することで確認した. また, 応力分布をCST要素と比較することで微圧縮条件下で応力の表現能力が向上したことを示した. 次に, き裂進展解析を行いき裂進展経路における応力振動の影響が取り除かれたことを受けより自然なき裂進展が表現できた. 以上より, 本手法が非圧縮性に起因する体積ロッキングに有効であることを示した.
  • 三橋 祐太, 橋本 学, 奥田 洋司
    2016 年 2016 巻 p. 20160022
    発行日: 2016/10/31
    公開日: 2016/10/31
    ジャーナル フリー
    In this study, we propose an extended Goodman’s joint element formulation and a graph theory based mesh generation method for geotechnical analysis. Although the geometric shape of conventional Goodman’s joint element is assumed to be rectangular, the extended Goodman’s joint element has arbitrary triangular or quadrilateral shape and it is possible to model faults or joints intersecting in a soil. Additionally, the proposed mesh generation method generates tetrahedral solid elements for a soil with intersecting faults or joints modeled by extended Goodman’s joint elements.
  • 山田 知典, 野口 紘一, 淀 薫, 和田 義孝, 藤井 秀樹, 吉村 忍
    2016 年 2016 巻 p. 20160023
    発行日: 2016/11/08
    公開日: 2016/11/08
    ジャーナル フリー
    計算機技術の進展に伴い, 超大規模なシミュレーションが可能となってきた. 近年では超大規模シミュレーションから得られる結果データの可視化がシミュレーションプロセス全体の大きなボトルネックとなっている. これは超大規模シミュレーションが「京」等のスーパーコンピュータ (計算サーバー環境) で実行されるのに対して、可視化はクライアント端末でインタラクティブに行われ、その処理能力に大きなギャップが生まれているためである. この大規模なデータ転送を回避するため, 本研究ではサーバーサイドで結果のスクリーニングを行い, ROI (Region of Interest) を特定する技術を提案する. 具体的には, サーバーサイドにおいて実行される大規模シミュレーションにより得られる計算結果データから, 複雑構造物を構成する各部品の変形・応力等の構造健全性評価に係わる物理量の特徴を抽出し, その時空間データの類似性や独立性に係わる分析とROIの特定をクライアント環境において実行するための検討を行った. 提案手法の有効性を示すため, 沸騰水型原子力発電施設の燃料集合体を模した角柱群の地震応答シミュレーションを行い, 個々の角柱の揺れの不均一性を小規模なデータ転送によって俯瞰的に把握可能であることを示した.
  • 西 紳之介, 寺田 賢二郎, 加藤 準治, 西脇 眞二, 泉井 一浩
    2016 年 2016 巻 p. 20160024
    発行日: 2016/11/15
    公開日: 2016/11/15
    ジャーナル フリー
    本研究では, 面内に周期的な非均質性を有する複合板を対象とし, 大変位・大回転を伴うマクロ構造の変形を制御するようなミクロ構(面内ユニットセル)のトポロジーを決定するマルチスケール最適化計算手法の開発を目的とする. 本手法では, 複合板のマルチスケール解析を採用して, 面内ユニットセルについては3次元連続体としてモデル化してソリッド要素を用い, マクロ構造については厚板曲げ理論を用いたフラットシェル要素を用いる. マクロ板構造については, 材料は微小変形であるが, 大変位・大回転問題を伴う問題にも対応できるように共回転理論を採用する. 最適化計算については, 分離型のマルチスケール最適化計算手法を用い, 温度変化が与えられたときにマクロ構造の節点変位を指定した方向に最大化するような最適化問題を設定する. また, 本最適化計算では感度解析に基づく最適化アルゴリズムを採用する. この際, 感度については計算コストの面から解析的感度の導出を行う. 最後に本提案手法を用いて得られた数値解析例を提示し, 本手法の有用性を示す.
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