日本計算工学会論文集
Online ISSN : 1347-8826
ISSN-L : 1344-9443
汎用 FEM ソフトウェアをプラットフォームとする固体酸化物形燃料電池の非定常電気化学-力学連成解析システムの開発
佐藤 維美村松 眞由寺田 賢二郎渡辺 智八代 圭司川田 達也横川 晴美
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2017 年 2017 巻 p. 20170004

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抄録

固体酸化物形燃料電池 (Solid Oxide Fuel Cell : SOFC) は発電効率が高い燃料電池である. しかし, 発電は空気と燃料の水素を供給し800~1000℃の高温で行われるため, 運転中のSOFC構成部材は, 高温による熱膨張と, 酸素ポテンシャルに起因する還元膨張によって機械的劣化を起こす. セルメーカ各社ではそれぞれ独自の形状のSOFCセルを開発しているが, その耐久性を担保するために, 電池内の現象を把握し, 機械的劣化を考慮した設計の必要性が高まっている.
Teradaらは, SOFCの非定常電気化学モデルを提案するとともに, 数値シミュレーションによる電気化学解析を行うことで酸素ポテンシャル分布を予測した. この際, セル構成材料内部の酸素ポテンシャルの経時変化から算出した還元ひずみと, 温度の経時変化よる熱ひずみを構造解析に用いており, SOFCの機械的劣化予測のためのプログラムを開発してきた. しかしながら, このプログラムは汎用性に乏しく, セルメーカ各社が独自形状のSOFCセルに適応させることが困難であった. また, 材料特性として実装されている材料以外の材料には対応できないという問題点も有している. さらに, 得られた数値解析結果と実験データとの定量的な比較には至っていない.
そこで本研究では, 汎用FEMソフトの利用を前提として, Teradaらが開発を進めてきた非定常電気化学シミュレーションに基づいて, SOFCの機械的劣化解析プログラムを汎用化およびロバスト化し, SOFCを提供している多くのメーカーが比較的容易に利用可能になる解析システムを構築した. さらにボタン型セルの動作環境を想定した実験と, 本研究で構築したシステムを使用した解析の結果を比較することによって, 本システムの検証を行った.

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© 2017 The Japan Society For Computational Engineering and Science
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