2018 年 2018 巻 p. 20180011
多層フィルムに対する標準的なピール試験におけるピール荷重急落現象のメカニズムを有限要素解析を用いて解明する.
接着剤により貼り合わされた多層フィルムのピール試験ではピール荷重が速度依存性を持つことが知られており, 高速ピール速度域ではピール荷重が急落する現象が見られる.
本稿ではまずこの現象を数値的に再現するために有効な2次元有限要素解析のモデル化手法を提案する.
2層フィルムを例とし, 片方のフィルムを弾性体, もう片方のフィルムを弾塑性体, 両者を繋ぐ接着剤を粘弾性体としてモデル化する.
剥離界面は結合力要素を用いてモデル化することにより界面の損傷を考慮する.
時間発展スキームには後退オイラー法に基づく動的陰解法を採用し, 損傷や大変形を伴う非線形性の強い解析を安定化させる.
次に, 得られた有限要素解析結果を元にピール荷重急落現象の発生メカニズムを考察する.
考察は応力分布およびエネルギー消費の2つの観点から行う.
また, ピール荷重はフィルムの曲率半径と負の相関があることも併せて明らかにする.