子育て支援の葛藤の解決の手がかりを得るために,葛藤頻度,葛藤類型,葛藤内容の3点からその特徴と課題を明らかにした.その結果,約7割が葛藤を感じており,「子ども優先型」が最も多いこと,保護者とのかかわりそれ自体よりも子どもの保育をめぐってより頻繁に葛藤が生じることが明らかとなった.保育士自身がとらえる子育て支援の葛藤には,子どもと保護者に対する思いの拮抗だけでなく,いずれかに対する優先度の偏り,職務に対する困難さ等,質的に多様なものであることが把握された.また,ここには倫理的ジレンマが含まれている可能性も推察された.その背景には,保育士の個人的価値観や保護者との関係悪化への懸念,専門職としての役割意識の脆弱さ等が関与していると思われた.子育て支援の葛藤の解決のプロセスに個人的価値観と専門的価値観の判別を位置づけることや,倫理的判断の基盤としての専門職倫理の明確化が必要であると考えられた.