本研究の目的は,保育者の早期離職を防止する園内体制を検討することである.そこで離職率の低い3園の管理職,中堅保育者,新人保育者にグループインタビューを実施した.事例―コード・マトリックスによる質的分析の結果,園全体の職場風土と新人に対する教育体制が離職意識に影響を与えていた.職場風土では,『無理なく働ける』労働条件,立場が上の職員の『誰に対してもフラット』に接する態度,職員同士が『誰でも話せる』状態が働き続ける意識の維持に影響していた.教育体制では,すべての保育者の『一人一人に合った配置』,立場が上の職員の『共感・尊重・具体性』に富むコミュニケーションの姿勢,『縦・横・ななめの関係で支援』が働き続ける意識の維持に貢献していた.とりわけ,管理職が率先して『誰に対してもフラット』で気さくな態度を示すこと,中堅のみに負担が集中しないよう,重層的な支援体制を整えることが重要であることが示唆された.