抄録
膠原病および膠原病類縁疾患においてはしばしば中枢神経病変の合併が見られる. 全身性エリテマトーデス (SLE) における中枢神経病変 (いわゆるCNSループス) においては, 中枢神経内での免疫異常が重要な役割を果たすことが明らかにされている. すなわち, 中枢神経内での免疫グロブリン産生の指標であるCSF Ig indexや髄液中のIL-6やIFN-αは, CNSループスの患者において上昇している. 一方, CNSループスの病態形成には, 血清中抗リボソームP抗体および髄液中の抗神経細胞抗体という自己抗体のトロピズムが重要であると考えられている. ベーチェット病の中枢神経病変 (神経ベーチェット病) は大きく急性型と慢性 (進行) 型に分けられる. 急性型の神経ベーチェット病は, 脳幹・基底核周辺部・小脳を好発部位として比較的急性に発症し, 発熱・頭痛などの髄膜炎様症状を伴うことも多い. 慢性進行型の神経ベーチェット病では, 痴呆様の精神神経症状がみられ, 治療抵抗性で徐々に進行し, ついには人格の荒廃をきたしてしまう. こうした例ではHLA-B51の陽性率が極めて高く, また持続的に髄液中のIL-6が異常高値を示すのが特徴である. 慢性進行型の神経ベーチェット病に対しては, 最近メトトレキサートの少量パルス療法が有効であることが示されている. ANCA関連血管炎における中枢神経病変としては, 最近肥厚性硬膜炎が注目されている.