日本水処理生物学会誌
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水道水源ダムのかび臭発生とその原因生物の特定
佐藤 千恵河内 幸夫奈須野 あすか今里 真人大慶 一路赤上 陽一軍司 秀博内海 真生
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2008 年 44 巻 4 号 p. 209-215

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抄録
近年、全国各地の水道水源において依然、富栄養化が進行しており、これまで良好な水源環境を維持してきた水道事業体でも、かび臭被害が頻発するようになった。かび臭の原因は主に藍藻類や放線菌類が産生する2-メチルイソボルネオール(2-MIB)やジェオスミン(geosmin)であることが明らかになっている。茨城県水戸市の楮川ダムでは2002年、2004年の夏季に藍藻類Phormidium sp.由来であると考えられる高濃度の2-MIBが発生した。本研究では、楮川ダムを対象にかび臭発生とかび臭産生原因生物の増殖との関係を明らかにすることを目的とした。楮川ダムは中栄養でリン制限の湖沼であること、水温躍層は年間を通して形成されなかったが夏季において底泥近傍で溶存酸素が減少することが明らかとなった。また、2006年夏季にジェオスミンが5ng/l、秋季に10ng/lを超える濃度で、2007~2008年にかけては低濃度ではあるが継続的な発生が確認された。かび臭産生に関係があるとされる藍藻類の発生時期はかび臭物質発生時期と一致しなかったことから、藍藻類が原因生物である可能性は低いと考えられた。一方、楮川ダム底泥サンプル中の放線菌を培養したところ、放線菌は楮川ダム底泥中に常在し、その集落数は底泥深度と季節によって変動を示すことが明らかになった。さらに、単離した放線菌集落においてジェオスミンを産生するものが多かったことから、2006~2008年にかけて湖水で発生したジェオスミンは放線菌に由来する可能性が高いと判断された。
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© 2008 日本水処理生物学会
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