日本臨床免疫学会会誌
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27 巻, 3 号
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特集 : 膠原病の難治性病態
総説
  • 廣畑 俊成
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 27 巻 3 号 p. 109-117
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    膠原病および膠原病類縁疾患においてはしばしば中枢神経病変の合併が見られる. 全身性エリテマトーデス (SLE) における中枢神経病変 (いわゆるCNSループス) においては, 中枢神経内での免疫異常が重要な役割を果たすことが明らかにされている. すなわち, 中枢神経内での免疫グロブリン産生の指標であるCSF Ig indexや髄液中のIL-6やIFN-αは, CNSループスの患者において上昇している. 一方, CNSループスの病態形成には, 血清中抗リボソームP抗体および髄液中の抗神経細胞抗体という自己抗体のトロピズムが重要であると考えられている. ベーチェット病の中枢神経病変 (神経ベーチェット病) は大きく急性型と慢性 (進行) 型に分けられる. 急性型の神経ベーチェット病は, 脳幹・基底核周辺部・小脳を好発部位として比較的急性に発症し, 発熱・頭痛などの髄膜炎様症状を伴うことも多い. 慢性進行型の神経ベーチェット病では, 痴呆様の精神神経症状がみられ, 治療抵抗性で徐々に進行し, ついには人格の荒廃をきたしてしまう. こうした例ではHLA-B51の陽性率が極めて高く, また持続的に髄液中のIL-6が異常高値を示すのが特徴である. 慢性進行型の神経ベーチェット病に対しては, 最近メトトレキサートの少量パルス療法が有効であることが示されている. ANCA関連血管炎における中枢神経病変としては, 最近肥厚性硬膜炎が注目されている.
  • 桑名 正隆
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 27 巻 3 号 p. 118-126
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    膠原病では様々な呼吸器病変がみられ, その中には従来の治療法で十分な効果が得られない難治性病態が含まれる. 代表的な難治性病態として皮膚筋炎に伴う急性・亜急性間質性肺炎, 強皮症に伴う肺線維症, 肺胞出血が挙げられる. 皮膚筋炎に伴う急性・亜急性間質性肺炎は組織学的にびまん性肺胞障害diffuse alveolar damage (DAD) を呈し, 治療反応性が悪い. 主に筋症状が乏しい抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体陰性例にみられ, 早期からの強力な免疫抑制療法の有効性が期待されている. 強皮症の約1/3の症例では線維化病態の強い非特異性間質性肺炎non-specific interstitial pneumonia (NSIP) を呈し, 緩徐に進行し, 呼吸不全に陥る. 肺胞炎を有する例ではシクロフォスファミドの有効性が示されている. 肺胞出血は時に致死的となる重篤な病態で, 全身性エリテマトーデスと顕微鏡的多発血管炎, ウェゲナー肉芽腫症を含む抗好中球細胞質抗体関連血管炎に伴ってみられ, 早期診断と集中管理が必要である. 今後, これら難治性病態のさらなる病態解明と有効な治療法の確立が望まれる.
  • 遠藤 平仁, 田中 住明, 坂井 美保
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 27 巻 3 号 p. 127-136
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
  • —ループス腎炎, ANCA関連血管炎を中心として—
    吉田 雅治
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 27 巻 3 号 p. 137-144
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    抗好中球細胞質抗体 (anti neutrophil cytoplasmic antibody : ANCA) は, 近年見い出された腎・肺を中心とする毛細血管および小型血管炎を示す症例で高率に見出されるIgG型のヒト好中球細胞質に対する自己抗体である. C (PR-3) ANCAとP (MPO) ANCAに大別され, Wegener肉芽腫症でC (PR-3) ANCA, 顕微鏡的多発血管炎, 腎血管炎でP (MPO) ANCAが高率に見出され, ANCA関連血管炎, 腎炎と呼称される. ANCA, 抗DNA抗体を中心に疾患特異的自己抗体の測定をふまえた腎血管炎の鑑別診断は, 厚生労働省の難病の診断基準の手引きを参照にして行う. 腎血管炎に共通した治療は早期に診断し疾患活動性の高い時期にステロイド治療, 免疫抑制薬を中心とした強力な免疫抑制療法を病型・病期に応じて適切に行い, 慢性期には臓器機能保護をめざした抗凝固, 抗血小板療法を行うことである. ANCA関連血管炎は活動性と相関してCRP値, ANCA力価が変動する例が多く, 免疫抑制療法を施行する際の指標として有用であり, 腎血管炎に共通した強力な免疫抑制療法施行時の感染症の併発対策に充分注意が必要である.
  • 高橋 裕樹, 小原 美琴子, 今井 浩三
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 27 巻 3 号 p. 145-155
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    膠原病には多彩な消化管病変の合併がみられることが知られており, これらは1) 膠原病自体による消化管障害, 2) 治療ため使用している薬剤の副作用, 3) ステロイド剤 (CS) などによる免疫抑制状態を誘因とする消化管感染症, に大別できる. 1) には全身性エリテマトーデス (SLE) でのループス腸炎や蛋白漏出性胃腸症, 強皮症での逆流性食道炎や慢性偽性腸閉塞症, 腸管嚢腫様気腫症, 関節リウマチでのアミロイドーシス, 悪性関節リウマチや顕微鏡的多発動脈炎での腸潰瘍・出血, ベーチェット病での回盲部潰瘍などがある. 特にSLEに合併する大腸潰瘍はCSに抵抗する難治性消化管病変のひとつである. SLEに合併した大腸病変22例 (本邦) の解析では, SLEの罹病期間は9.9年と長期例に多く, 部位は直腸・S状結腸で77%を占めた. 半数で穿孔・穿通を生じ, 11例中6例が死亡するなど予後不良である. 2) としては非ステロイド消炎鎮痛剤 (NSAID) による消化性潰瘍に加え, NSAIDやCSによる腸病変がある. 特にCS使用例では腸管穿孔が発症しやすく, 細心の注意が必要である. 3) としてはカンジダ性食道炎やサイトメガロウィルス腸炎があり, 特に後者では出血・穿孔をきたすこともあり, 早期の診断が必要である.
  • 高林 克日己, 花岡 英紀
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 27 巻 3 号 p. 156-163
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    膠原病診療における日和見感染は治療上重要な位置を占める. 特にステロイド大量投与例では肺結核, カリニ肺炎, 肺真菌症などの肺疾患が多く見られる. これらに対する予防投与としてのINH, ST合剤投与は効果的であるが, 副作用を考慮して投与すべき症例, 期間を考える必要がある. われわれはプレドニゾロン換算60 mg/日以上で治療を開始された患者を対象に30 mg/日まで予防投与し, 一例も発症をみていない. また最近使用が始まったInfliximabでも合併症として肺結核が注目されているが, 本邦で予測値よりも低くとどまっているのは症例選択のバイアスなどによるのかもしれない.
症例報告
  • 横田 和浩, 平野 資晴, 秋葉 春彦, 阿達 大介, 竹石 美智雄, 秋山 雄次, 三村 俊英
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 27 巻 3 号 p. 164-170
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は62歳男性. 主訴は発熱と胸灼け. 1995年に慢性C型肝炎と診断. 1997年より反復性口内炎, 陰部潰瘍が出現. 1999年に皮膚硬化, 両手指腫脹が出現. 皮膚生検を行い強皮症と診断され, 中等量ステロイド治療 (初期量PSL 30 mg/day, 維持量 10 mg/day) を開始された. 2000年3月に当科受診, 結節性紅斑・口腔内アフタ・陰部潰瘍よりベーチェット病不全型と診断. この頃より軽度の汎血球減少が出現した. 同年11月に発熱, 食道・胃潰瘍が出現. 腸管ベーチェット病と考えられ, PSLの増量となった (PSL 30 mg/dayを3日間投与, 以後漸減され, 維持量 7.5 mg/day). 2002年5月に発熱と胸灼けが出現, 当科に入院. 食道に4ヶ所の潰瘍病変と1ヶ所の盲端瘻孔が認められ, 腸管ベーチェット病の再燃と考えられた. ステロイド剤を増量したが (PSL 30 mg/day), 症状の改善はみられず, 重症肺炎を合併し, 死亡した. 本症例ではベーチェット病に強皮症, 食道潰瘍, 慢性C型肝炎, 汎血球減少を合併した. 極めて稀な病態を合併しているが, 病因などを検討する上で示唆に富む症例と考え報告した.
症例報告
  • 田中 浩紀, 阿部 敬, 西村 進, 酒井 基, 木村 裕一, 沖 真理子, 野島 正寛, 田賀 理子, 松本 晋一郎, 高橋 裕樹, 今井 ...
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 27 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 女性. 平成11年近医にて関節リウマチと診断され, エトドラク, アクタリット, ミゾリビン, プレドニゾロンを併用し加療されていた. 平成13年5月25日より発熱, 嘔気を自覚し近医を受診. ジクロフェナクナトリウム, クリンダマイシンにより加療されたが症状の改善を認めず, 5月31日鼻出血, 黒色便が出現し, 高尿酸血症, 腎機能障害, 血小板減少を指摘されたため同日当科紹介入院となった. プレドニゾロン以外の内服薬は中止とし, 翌6月1日血液透析を施行した. 発熱, 嘔気等の臨床症状は数日で改善し, 炎症反応は抗生剤を使用せずに陰性化した. 6月11日には腎機能障害, 高尿酸血症は正常化し, 血小板数は血小板輸血を施行した後正常値となり, 7月2日退院となった. なお, シェーグレン症候群の存在も診断された. 自験例は一過性の腎機能障害によるミゾリビン排泄遅延のため副作用である高尿酸血症が出現し, 腎機能障害をさらに増悪させた可能性が考えられた. ミゾリビンを使用する場合, 潜在する腎機能障害に注意する必要があるばかりではなく, 一過性の腎機能障害出現時においても薬剤の中止, 血液透析施行等の早急な対応が必要となることがある.
  • 野島 正寛, 阿部 敬, 五十嵐 伸一, 本間 栄志, 沖 真理子, 及川 央人, 松本 晋一郎, 西村 進, 松永 隆裕, 矢和田 敦, ...
    原稿種別: その他
    専門分野: その他
    2004 年 27 巻 3 号 p. 177-180
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性. 1991年心窩部痛, タール便を主訴に当科受診. まもなく反復性のアフタ性口内炎や結節性紅斑, 関節痛などが出現したためベーチェット病 (不完全型) と診断, ステロイド, NASIDの投与を受けていた. 翌1992年, 1月ころより胃前庭部の難治性潰瘍が出現, 4月には腸管穿孔を来たすなどし, 消化器症状が顕著なものとなった. その後胃病変は増悪, 軽快を繰り返し, 1994年に胃mucosal bridgeを形成. 潰瘍の悪化とH. pylori陽性を確認したため除菌療法を施行, 潰瘍は治癒した. 抗潰瘍薬の投与を継続し, 長期間に渡り経過観察を行っているが, 胃mucosal bridgeは現在まで残存している. これまでベーチェット病に発生した胃mucosal bridgeの報告はなく, まれと考えられた.
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