日本臨床免疫学会会誌
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総説
DNA損傷応答関連遺伝子の異常と悪性腫瘍・自己免疫疾患との関連について
兪 史幹大西 伸幸加藤 菜穂子依田 成玄南 康博
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2006 年 29 巻 3 号 p. 136-147

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抄録
  生体を構成する細胞の遺伝情報の恒常性維持は,多彩かつ精緻に制御された諸生命活動に必須の細胞機能であり,その破綻は遺伝情報における変異の蓄積ならびにアポトーシス誘導機構の異常をもたらし,癌をはじめとする諸疾患の誘因となると考えられている.遺伝情報の維持において,DNA損傷応答機構,とりわけ細胞周期チェックポイント機構は重要な役割を担っている.放射線,紫外線,各種の化学物質あるいは代謝の過程で生じる活性酸素などによりDNA損傷を受けると,細胞はチェックポイント機構を作動させ速やかに細胞周期を停止し,その間にDNA損傷修復を行うか,あるいはDNA損傷の程度が著しい場合にはアポトーシスを誘導することにより異常な遺伝情報が生体に蓄積するのを防ぐ.本稿では,まずDNA損傷応答機構,特にチェックポイント機構について概説するとともに,チェックポイント機構に関わる分子群(遺伝子群)の異常と造血器腫瘍をはじめとする悪性腫瘍との関連について,我々の研究成果もまじえて紹介する.さらに,チェックポイント機構の異常と慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患との関連についても言及したい.
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© 2006 日本臨床免疫学会
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