抄録
症例は33歳女性.日光過敏,蛋白尿,汎血球減少,抗核抗体,dsDNA抗体陽性よりSLEと診断された.prednisolone 50 mg/日にて治療を開始後,貧血以外の所見は改善した.ハプトグロビン値は回復し溶血は改善したが,網状赤血球は低値,骨髄では赤芽球系は低形成であり,Pure red cell aplasia (PRCA)の合併と診断された.SLEとPRCAはともに免疫学的異常を背景に発症するが,合併は比較的稀である.PRCA患者血清中には造血阻害因子の存在が報告されている他,細胞性因子の関与も報告されている.今回,本症例にて,患者赤芽球系コロニー形成細胞(erythroid colony forming cell: ECFC)および末梢血T細胞を用いて発症機序の解析を行った.患者T細胞は,数依存性に患者赤芽球造血を抑制した.一方,患者血清にて健常者赤芽球造血は促進した.患者血清中には貧血に対応して赤芽球系細胞の増殖促進因子が含まれていたと考えられた.以上より,本症例でのPRCA発症に細胞性免疫の関与が示唆された.