日本臨床免疫学会会誌
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総説 特集:From bedside to Bench―臨床が基礎医学・生物学に与えたインパクト―
膠原病治療に於ける薬剤抵抗性の臨床と基礎
田中 良哉辻村 静代
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2006 年 29 巻 5 号 p. 319-324

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抄録
  全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチ(RA)に代表される膠原病の治療は,ステロイド薬,免疫抑制薬,抗リウマチ薬等の薬剤療法を中心とするが,薬剤抵抗性を示し,疾患制御を困難とする症例は決して少なくなく,臨床実地の重要な課題である.薬剤抵抗性は,長期間の薬剤投与により齎される薬剤耐性,疾患活動性が高いために薬剤に反応しない薬剤不応性に大別される.薬剤抵抗性の機序は多彩であるが,リンパ球をサイトカインで刺激すると多剤耐性遺伝子(MDR-1)の転写,MDR-1がコードする細胞膜P糖蛋白質の発現を誘導し,細胞外への薬剤排出を促進すること,RAやSLE患者の末梢血リンパ球ではP糖蛋白質が発現亢進し,薬剤抵抗性の主因となることを解明した.膠原病患者に於いてリンパ球のP糖蛋白質の発現が,薬剤抵抗性の臨床的指標として普及すれば,薬剤抵抗性の観点からのテーラーメイド医療の具現化を可能とする.即ち,薬剤不応性のRA症例に対してインフリキシマブ,薬剤不応性のSLEに対してリツキシマブなどの強化療法を反復することにより,MDR-1の転写を介するP糖蛋白質の発現を制御でき,また,薬剤耐性の症例にはシクロスポリンやタクロリムスなどのP糖蛋白質拮抗薬の追加併用療法により,薬剤の細胞外排出が制御できるはすである.これらの成果に見られるように,ベッドサイドとベンチ間の双方向のトランスレーションこそが病態解明や治療応用にブレークスルーを齎すものと確信する.
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© 2006 日本臨床免疫学会
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