2012 年 35 巻 4 号 p. 335b
〈目的〉全身性エリテマトーデス(SLE)に合併した腎病変は未だに死因の主要因となっている.SLEのT細胞ではCalcium/calmodulin-dependent protein Kinase Type IV (CaMKIV)の発現が増加しており,T細胞機能の異常を引き起こすことが報告されている.そこで我々はSLEのモデルマウスであるMRL/lprマウスを用いて,CaMKIVの腎臓メサンギウム細胞の機能制御についての検討を行った.〈方法〉8週齢のMRL/lprマウスとそのコントロールマウスであるMRL/MPJ, MRL/lpr.Camkiv−/−マウスの腎臓からメサンギウム細胞を分離培養し,PDGF-BB刺激でのフローサイトメトリーとウェスタンブロット解析による細胞増殖とPCR法によるIL-6発現,Electrophoresis Mobility Shift Assay (EMSA)によるIL-6プロモーター活性についての検討を行った.〈結果〉MRL/lpr.Camkiv−/−マウスメサンギウム細胞の細胞周期はG0/G1期にシフトし増殖が抑制されていた.ウェスタンブロット解析では増殖に関与するCDK2およびcyclin-D1の発現が低下していた.またメサンギウム細胞由来のIL-6 mRNAレベルもCaMKIVの欠失により低下しており,IL-6プロモーターにおける転写因子activator protein-1(AP-1)の結合とAP-1の核内移行が抑制されていた.〈結論〉CaMKIVはループス腎炎における治療のターゲットとなり得ることが示唆された.