抄録
【目的】原因不明の不育症には免疫の関与が推定され,ステロイドや免疫グロブリン,抗サイトカイン療法が有効とする報告もあるが,エビデンスは確立していない.我々はマウスモデルを用いて,アレルギーや自己免疫性疾患に対し有効性が報告されている寄生虫由来免疫調節物質ならびに不育症患者に処方されることの多い漢方薬の効果と作用機序を検討した.
【方法】施設内動物実験委員会の承認を得て,犬糸状虫由来のリコンビナントタンパク(rDiAg)を6週齢のCBA/Jメスマウスに投与した.漢方薬の検討では,0.5%当帰芍薬散または0.7%柴苓湯加飼料,対照群には無添加飼料を自由摂取させた.DBA/2Jオスマウスと交配し妊娠7日もしくは14日に解剖し免疫学的解析を行った.
【成績】PBS群の流産率42.9%に対して,rDiAg投与群では11.1%と改善した.また,対照飼料群43.4%に対して当芍群は52.3%,柴苓湯群は14.6%と後者のみ有意に治療効果がみられた.rDiAg投与群では母獣血清中のIL-4, IL-23, TNF-αが有意に低下したが,漢方薬投与群においては一定の傾向を認めなかった.
【結論】安全性,メカニズムなどさらに検討が必要であるが,rDiAgが原因不明の不育症における新たな治療法となる可能性がある.また,今回の実験系では柴苓湯が有効であったが,メカニズムについては異なった機序を介する可能性がある.