抄録
【背景】我々は緩解期においても生体内に長期生存する腸炎惹起性メモリーCD4+T細胞が炎症性腸疾患難治性の要因であり,真の治療標的であることを報告してきた.メモリーT細胞には複数の分画があり,近年,幹細胞様の性質を有するMemory Stem Cell (TSCM)が同定されている.【目的,方法】炎症性腸疾患モデルマウスにおける既存のメモリーT細胞分画の役割を明確にすると共に“腸炎惹起性memory stem cell”の存在を検証した.【結果】CD4+CD45RBhighT細胞移入腸炎マウスでは脾臓,リンパ節において数%のCentral memory (TCM)と多数のEffector memory (TEM)を認め,TSCMの分画は認めなかった.このためTEM/TCMを分取し,腸炎誘導能を検証したところ,同等な腸炎を発症した.以上からこの腸炎モデルマウスでは,TEMは長期生存能を有する分画を含むと考えた.次に,我々はメモリーT細胞維持因子のIL-7に着目し,in vitroで,TEM細胞から生存能の高い細胞集団の同定を試みた.腸炎マウス大腸炎粘膜のCD4+T細胞をIL-7単独添加で培養したところ,4週間培養可能であった.培養後の細胞は,Bcl-2,CD25,腸管へのhoming markerを高発現し,in vitroにおけるサイトカイン産生能はTCMに類似していた.IL-7単独で4週培養した細胞と8週培養した細胞では後者の方が,腸炎誘導能が強かった.【結語】IL-7単独添加による新規培養法を樹立し,生存能/腸炎誘導能の高い新たなメモリーサブセットを同定した.