抄録
全身性自己免疫疾患は特異自己抗体の産生が特徴である.これら自己抗体は臨床症状に先行して産生され,多くは特定の疾患,あるいは臨床症状と密接に関連し疾患の診断,治療,経過観察に有用なバイオマーカーである.自己抗体の産生および自己免疫疾患の発症は環境因子と遺伝因子の相互作用により起こると考えられている.環境因子は微生物,薬剤,環境汚染物質,気候,食物など多彩であり,動物モデルとして確立されているものもあるが,多くにおいてはその自己抗体産生,病態への関与の機序は明確でない.細胞内の数千の抗原の中から,限られたいくつかの分子がそれぞれの患者の自己抗体の標的として選ばれる機序は不明であるが,自己抗原の量的,あるいは質的異常が特異自己抗体産生の誘因となる可能性も示唆されている.化学物質,薬剤による特定の分子の修飾,紫外線などの環境因子による自己抗原発現量の変化と自己抗体産生との関連が実際に示されている例もあり,特異自己抗体の産生機序は今後さらなる研究が必要な領域である.