日本臨床免疫学会会誌
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W3-2  炎症性サイトカインは骨吸収能を有する破骨細胞様細胞を誘導する
横田 和浩佐藤 浩二郎三由 文彦荒木 靖人秋山 雄次三村 俊英
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2013 年 36 巻 5 号 p. 338

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抄録
 関節リウマチ(RA)は罹患関節滑膜において,破骨細胞が炎症性サイトカインにより活性化することで関節破壊を惹起している.特にTNFα,IL-6はRAの病態に中心的な役割を演じていると報告されている.そこで両サイトカインを組み合わせて,破骨細胞分化への影響を調べた.マウス破骨細胞前駆細胞を用いてTNFα+IL-6で刺激した結果,RANKL非依存的に酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)染色陽性である多核の破骨細胞様細胞が誘導された.また,RANKL誘導性破骨細胞と同様に破骨細胞様細胞は骨吸収能を有していた.この細胞の分化過程で,転写因子c-FosおよびNFATc1の誘導が認められ,その分化はNFAT阻害剤,JAK阻害剤で阻害され,抗IL-1β抗体で阻害されなかった.興味深いことにマクロファージ特異的Stat3欠損マウスと対照マウスの比較では,TNFα+IL-6で誘導された破骨細胞様細胞数に差は認めなかった.一方,MEK/ERK阻害剤はRANKL誘導性破骨細胞と比較し,破骨細胞様細胞の分化を抑制した.このことはJAK-MEK/ERKシグナルによる破骨細胞様細胞の分化制御を示唆している.さらにマウス頭部皮下へのTNFα+IL-6の投与において,頭蓋骨にTRAP染色陽性細胞数の増加と骨吸収の促進が確認された.これらの結果から,炎症性サイトカインのTNFαとIL-6により破骨細胞様細胞が誘導され,RA関節滑膜での炎症性骨破壊に関与している可能性が示唆された.
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© 2013 日本臨床免疫学会
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