抄録
近年開発された分子・細胞標的医薬のインパクトは多方面に及んでいるが,ヒト免疫病およびヒト免疫系の理解の深化における貢献についての認識が高まっている.我々の研究室では,NKT細胞を標的とする糖脂質医薬OCH(Miyamoto et al. Nature 2001)の多発性硬化症に対する医師主導臨床治験(First in Human試験)およびトシリズマブの視神経脊髄炎に対する臨床研究において,被験者血液リンパ球を用いて免疫系バイオマーカーの解析を進めている.研究によって得られる情報量はきわめて膨大であり,動物実験では想像できなかったような結果が得られつつある.
ヒト自己免疫疾患に対するNKT細胞標的医薬の開発は,当該医薬品のbioavailabilityが低い点や,ヒトではマウスに比較してNKT細胞が少ないということが懸念材料とされて来た.しかし健常者15名に対するOCH単回投与試験および患者対象投与の結果,GM-CSF産生T細胞の有意な減少や自己反応性T細胞のTh2偏倚などが確認された.ヒトNKT細胞を刺激する少量のリガンド物質がヒト免疫系を大きく偏倚させるという結果は予想を超えるものであり,First-in-Human試験の意味があらためて確認されることになった.免疫難病に対する現在の治療薬の効果は限定的であるが,患者試料解析を薬剤開発早期から取り入れ,病態に即したPrecision Medicineの開発を目指す我々のアプローチについて紹介したい.