抄録
現在,抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体をはじめとする,免疫制御抗体を用いたがん治療が注目を集めている.既に,欧米の大手製薬会社が,複数の免疫制御抗体の臨床試験を行っており,化学療法抵抗性の癌を対象とした早期試験において,高い抗腫瘍効果を示唆するデータが得られている.一方,免疫制御抗体の多くは自己免疫反応を誘導し,皮膚炎,下痢,肝機能障害,さらには内分泌障害等の深刻な有害事象を引き起こす.これらの試験では,GCPに基づいた臨床評価と共に,客観的な手法を用いた免疫評価が行われ,科学的にも質の高い試験と評価されている.これらの臨床的,科学的背景のもと,免疫制御抗体の一部はすでに承認或いは承認間近となっている.
がんに対する免疫療法開発において,Proof of Conceptの確立や治療効果・有害事象のバイオマーカー探索のために,客観的な免疫評価法を確立し使用することは必須である.欧米では,その重要性にはやくから着目し,アカデミア,産業界,規制当局が一緒になって免疫評価法の標準化を行ってきた.Cancer Immunotherapy Consortium(CIC)やThe Association for Cancer Immunotherapyが中心となり,FACS解析,ELISPOT解析に加え免疫染色の評価方法の標準化を行い,その成果を免疫治療開発に応用している.免疫制御抗体の臨床開発が成功した背景の一つに,それらの点があげられる.
振り返って,わが国では,免疫評価法の標準化の議論は今まで行われてこなかった.今後,わが国発の免疫療法の臨床開発を進める上で,国際的に標準と認められた免疫解析法の確立は必須である.