抄録
自己免疫疾患では,より選択的で副作用が少なく長期間寛解を維持できる治療として,自己反応性T細胞を標的とした免疫寛容を導くTreg細胞や寛容型樹状細胞(tDCs)を用いた抗原特異的な治療が注目されている.また,がんと違って,自己免疫疾患などの慢性炎症に対しては,より高い安全性が求められるため,現時点では遺伝子操作による治療の適応はなく,生理活性物質や薬剤を用いて,安定性のあるtDCsの誘導が現実的である.tDCsの誘導には,IL-10,VitD3,Dex, rapamycinなどにより誘導されるが,いずれも一長一短があり,臨床的に有効かは十分解析されていない.そこで我々は,生理活性脂質,キナーゼ阻害剤などのライブラリーから,Cキナーゼ阻害剤(PKCI)がヒトtDCsを効率よく誘導することを見出した.ヒトPKCI-tDCsは炎症環境下で安定であり,CCR7の発現も比較的高く維持されており,IL-10,Foxp3の発現細胞を有意に誘導した.PKCIと他の誘導物質によって作成したtDCsを比較したところ,T細胞の抑制能,抑制性のサイトカインの産生,遊走能を満たす物質として,単独ではPKCIが最も有力であった.マウスPKCI-tDCsもヒトと同様の性質を持ち,GVHDマウスモデルマウスに投与したところ,GVHDは有意に抑制でき,生存期間の延長が確認できた.現在,自己免疫疾患患者から抗原特異的Treg細胞の誘導能について研究しており,臨床応用の可能性について報告する.