抄録
【目的】T細胞の抑制性受容体であるprogrammed cell death-1(PD-1)分子が,CD4+T細胞の分化制御機構に与える影響を明らかにする.【方法】Th1細胞のマスター転写因子T-betをT細胞での過剰発現したT-betトランスジェニックマウス(T-bet Tg)とPD-1欠損マウス(PD-1KO)を交配してPD-1欠損T-bet Tgマウス(P/T)を作成し,P/Tマウスにおいて以下を検討した.1)成長状態および生存評価,2)各臓器の病理,3)FACSによる脾臓CD4+T細胞のサイトカイン産生及び転写因子発現,4)in vitroでのFoxp3+制御性T(Treg)細胞の分化誘導,5)RAG2欠損マウスへの脾細胞移入時の病態解析,を施行した.【結果】P/Tマウスにおいて,1)成長異常が認められ,生後10週程度で死亡,2)肝臓,膵臓,腸管で炎症性細胞浸潤,3)CD4+T細胞からのIFN-γ産生の増加及びFoxp3発現の著しい減少,4)CD4+T細胞からのFoxp3+Treg細胞への分化異常,5)P/Tマウスの脾細胞移入によるP/Tマウスと類似した炎症性細胞浸潤病変およびTh1細胞の増加およびFoxp3+Treg細胞の減少,が認められた.【結論】P/Tマウスの全身性炎症および早期死亡は,Th1細胞の増加とFoxp3+Treg細胞の著しい減少に起因している可能性が示唆された.