日本臨床免疫学会会誌
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シンポジウム
シンポジウム2-3 新規動物モデルを用いた二次進行型多発性硬化症の病態解明の試み
大木 伸司レイバニー ベン山村 隆
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2015 年 38 巻 4 号 p. 241

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抄録

  二次進行型多発性硬化症(SPMS)は慢性進行性の中枢神経障害を主徴とする難治性のMS病態である.長期的には,日本の再発寛解型MS (RRMS)患者の約2割,欧米では半数以上がSPMSに移行するものと推定されている.SPMS研究に有用な動物モデルがいまだ確立していないこともあり,基礎研究,医薬品開発ともに手つかずの状態にあるのが現状である.RRMS患者の網羅的遺伝子発現解析から同定したオーファン核内受容体NR4A2は,病原性Th17細胞の機能を制御し,実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の初期病態に密接に関わる.一方,NR4A2欠損(NR4A2cKO)マウスのEAEでは確かに初期病態が減弱したが,遅れてatypicalな後期病態が出現した.後期病態時にTh17細胞とは異なるCD4+ T細胞がCNSに浸潤し,特定のマーカー遺伝子を発現していた.後期病態と連関したこの細胞群は強い病態誘導能を持ち,上記マーカー遺伝子を標的としたsiRNAのin vivo投与により,後期病態は有意に改善した.RR-MS患者末梢血の同マーカー遺伝子陽性CD4+ T細胞頻度は健常人と同程度であったが,SP-MS患者の末梢血では有意な増加を認めた.RRMSに相当する病態を除いたNR4A2cKOマウスのEAE関わるこのCD4+ T細胞群は,SP-MS患者末梢血でも有意に増加しており,SP-MSの新しい治療標的となる可能性が示された.またNR4A2cKOマウスのEAEは,SP-MSの病態解明と治療法開発に有用な病態モデルを提供することが期待される.

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