2015 年 38 巻 4 号 p. 262
自己免疫寛容の維持において重要な役割を果たす細胞サブセットとして,制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)が知られている.坂口らによるCD4陽性CD25陽性Tregの同定および,その分化・抑制能に関するマスター制御因子としてのFoxp3遺伝子の発見はTreg研究にブレークスルーをもたらし,Tregを介した自己反応性T細胞や抗原提示細胞などの制御機構に関する研究が盛んに行われている.近年では,抗体産生制御能を有するTregサブセットとして,CD4陽性CD25陽性CXCR5陽性濾胞性Treg(TFR),CD4陽性CD25陰性LAG3陽性Treg(LAG3+ Treg),CD4陽性CD25陽性CD69陰性Tregなどが報告され,液性免疫制御におけるTregサブセットの重要性が注目されてきている.本来B細胞は抗体を産生することで生体にとって有害な細菌やウイルスなどを排除するが,自己構成成分に対する抗体(自己抗体)産生は,リウマチ性疾患を代表とするいわゆる難治性自己免疫疾患の発症に直結する.これら自己反応性B細胞の制御機構解明は,自己抗体産生機序を介した自己免疫疾患の新規治療法開発の礎となる.本講演では,LAG3+ Tregを介したB細胞抑制機構に関する当研究室における最新の知見も含め,Tregによる液性制御機構につき概説する.