2015 年 38 巻 4 号 p. 263
免疫システムには過剰反応による組織傷害を防ぐためのブレーキ役として数々の免疫制御機構が存在し,その欠損/低下が自己免疫疾患の発症要因のひとつとして注目されてきた.Foxp3+制御性T細胞(Treg)は末梢トレランス維持に不可欠だが,近年その多様性と可塑性が明らかにされた.Foxp3+ T細胞には胸腺由来のTreg(nTreg),エフェクターT細胞から末梢で分化したadaptive Treg,免疫制御活性のない活性化T細胞などが含まれる.原発性免疫性血小板減少症(ITP)など臓器特異的自己免疫疾患では末梢血中のFoxp3+ Tregの減少または免疫制御能低下を認め,治療後の寛解期にこれら異常は是正される.さらに,Foxp3+ Tregを欠損させたマウスでは自己免疫性胃炎,唾液腺炎などに加えてITPを自然発症する.本モデルではadaptive Tregの誘導により自己免疫病態の改善が示されている.一方,全身性エリテマトーデス(SLE)など全身性自己免疫疾患の病態におけるFoxp3+ Tregの役割はいまだ明確でない.最近私たちはSLE活動期の末梢血で増加しているTregとTh17両者の特徴を兼ね備えたユニークなnTregサブセットを同定し,SLEの病態形成に関わる可能性を示した.Tregの多様性とそれを規定する調節機構のさらなる追究が自己免疫疾患の病態解明や新たな治療法の開発に有用である.