日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディーフォーラム
専門スタディーフォーラム1-5 T細胞 腫瘍免疫と制御性T細胞
西川 博嘉
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2015 年 38 巻 4 号 p. 264

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抄録

  制御性T細胞(Tregs)は,がん抗原に対する免疫応答を負に制御している.CD4,CD25及びFoxP3に加えてCD45RAを組み合わせて厳密にヒトTregsを定義した.悪性黒色腫の腫瘍局所には免疫抑制活性の強い活性化Tregsが多数浸潤し,CCR4を選択的に強発現していた.抗CCR4抗体により活性化Tregsのみを除去することで,がん抗原特異的T細胞が活性化された.しかし,CCR4を強発現するTregsは全てのがん腫で認められないため,活性化Tregsに特異的な分子シグナルを検討した.活性化Tregsは,他のT細胞に比較してT細胞レセプターシグナルに関わるチロシンキナーゼに強く依存していた.このキナーゼ分子はチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)により阻害されるため,TKI治療により活性化Tregsが選択的に除去され,TKI製剤による新たながん免疫療法の可能性が示された.また,FoxP3陽性T細胞の役割が十分に解明されていない大腸癌を本定義にて解析した.大腸癌組織にはFoxP3陽性でありながら,免疫抑制活性を持たないnon-Tregsが多数存在し,FoxP3陽性T細胞の役割を解明する妨げとなっていた.免疫抑制活性を持つ本来のTregs浸潤は大腸癌でも予後不良因子であった.本講演ではTregsの腫瘍免疫への関わりと,活性化Tregsを標的とした新たながん免疫療法の可能性を議論したい.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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