2015 年 38 巻 4 号 p. 266
自己免疫疾患や炎症反応においてB細胞は病態を悪化させる因子として広く知られている.しかし,近年,自己免疫性炎症反応を抑制するIL-10産生B細胞(制御性B細胞)が示され,関節リウマチや多発性硬化症,糖尿病等の疾患モデルマウスにおいて病態を抑制することが明らかになってきた.さらに,様々なヒト疾患との関連性から,本研究分野の進展が期待されているが,生体内における“IL-10産生制御性B細胞の実体”という根本的課題は未解決であった.我々はこの疑問にアプローチするために,IL-10レポーターマウスを利用し,多発性硬化症のマウスモデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis: EAE)において,in vivoにおけるIL-10産生B細胞の同定を試みた.その結果,所属リンパ節に誘導されるプラズマブラストがIL-10を産生することが判明した.実際,プラズマブラストを欠損させた遺伝子改変マウスではEAEが増悪化することも認められた.IL-10の産生にはIRF4という分子が必須であり,疾患病態の抑制効果は脾臓ではなく,所属リンパ節で発揮されることも明らかになった.さらに,ヒトB系列細胞においてもプラズマブラストがIL-10を分泌することが確認された.これらの知見をもとに,IL-10産生制御性B細胞の性状と分化,活性化機序について紹介する.