日本臨床免疫学会会誌
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専門スタディーフォーラム
専門スタディーフォーラム2-3 B細胞・抗体 多発性硬化症病態におけるプラズマブラスト
中村 雅一荒木 学山村 隆
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2015 年 38 巻 4 号 p. 267

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抄録

  多発性硬化症(Multiple sclerosis: MS)は,中枢神経系における再発性,あるいは慢性炎症を特徴とする自己免疫病態群である.その病態の相違は,治療薬におけるレスポンダーとノンレスポンダーを生み出す原因と考えられるが,第1選択薬インターフェロンβ(IFN-β)においてでさえ20-50%もの症例がノンレスポンダーであることから,MS診療では個別化治療の確立が真に望まれる.IFN-βの属する1型IFNは,自己反応性プラズマブラスト(Plasmablast: PB)の分化促進を介して自己抗体介在性病態を悪化させ得る.そこで,MSにおけるIFN-β治療反応性とPBとの関連を検討したところ,末梢血PB増加例(PB-high MS)は同薬ノンレスポンダーであることがわかった.これらのPBはin vitroで顕著なIL-6依存性生存を示す一方,外因性IFN-βは全身性にIL-6を誘導する.従って,IFN-β投与下では,IL-6作用により自己反応性PBが増加し,これらのPBによる自己抗体介在性病態の悪化が同薬抵抗性として観察されると推測された.この難治性MS亜群に抗IL-6受容体抗体tocilizumabを投与したところ,逆説的に末梢血PBは増加するも臨床的改善を認めた.本講演では,IL-6のPB分化に与える影響について考察しつつ,MSの病態理解,及び治療選択におけるPB解析の意義について概説する.

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© 2015 日本臨床免疫学会
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