日本臨床免疫学会会誌
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学会特別企画
学会特別企画 分子標的治療薬のアニュアルエビデンスレビュー2 産科抗リン脂質抗体症候群
杉浦 真弓
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2015 年 38 巻 4 号 p. 276

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抄録

  抗リン脂質抗体症候群は不育症の約5%を占め,唯一治療法が確立されている原因である.真の対応抗原は多岐にわたるため,多くの測定系が存在するが,産科的に有用な測定法は標準化されていない.産科的有用性とは,陽性例では治療によって出産率が改善,もしくは陽性例は陰性例より出産率が低下することで証明される.私たちは560名の原因不明不育症患者を対象として,11種類の委託検査の産科的有用性を当院での従来法β2glycoprotein I依存性抗cardiolipin抗体,Lupus anticoagulant(LA)希釈ラッセル蛇毒法,LA-aPTT法と比較しながら検証した.リン脂質中和法は健常人99および98 percentileを基準とした場合,陽性群では治療によって有意に出産率は改善した.aPS/PT IgGは無治療群では陽性の場合に出産率は有意に低下することが明らかになった.国際学会の診断基準に含まれるCL IgG/Mはいずれも産科的有用性は認められなかった.全国調査では61.5%の施設が抗体の持続性を調べていないこと,2種類のLA測定を実施している施設はたったの9.4%であることがわかり,国際学会診断基準が遵守されていない現状も明らかになった.産科抗リン脂質抗体症候群の課題について概説させていただく.

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